M-1グランプリとか最たる例だと思うのですが、何というか、基準点みたいなのって絶対にあって、その基準点からの増減で点数も変わるわけでね。
それこそM-1なら、昔は恐ろしく低い点数もありましたが、現在はだいたい85点が基準点になってると思う。だから80点台前半なら「やっちまった感」が出るわけです。
でもね、冷静に考えたら「84点」とか、ものすごく高い点数なんですよ。そりゃガリ勉秀才タイプは違うかもしれないけど、もし「<たった>84点しか取れなかったわ」とか言っちゃったら嫌味に聞こえるレベルです。
アタシは映画を観ても基本的には点数は付けない。一昨年の年末に観た「リスペクト」は珍しく「ギリギリ65点」と書いたけど、アタシの中ではね、65点が基準点なのです。
ま、5点刻みならって話ですが、これは大学の点数と一緒で、65点ならギリ合格、60点なら赤点、つまりギリアウト、みたいに考えてね、「リスペクト」で言えば「まァギリ合格」と思ったので65点にしたと。
ということを前提に「シン・仮面ライダー」の点数を付けたいのですが、これが本当に難しい。
昨日何度も何度も考えて、「シン・仮面ライダー」の論評を読んだり、感想を喋っておられるYouTube動画を見たりなんかもして、それでもいまだに答えが出ていない。
具体的に言えば「60点と75点くらいの間で揺れ動いている」という感じなのです。
もし60点なら赤点です。ま、「ちょっと」とか「どちらかといえば」という前置きがつくとはいえ「ダメ映画」ってことになるし、75点なら最近観た映画の中でも相当上位に入る。
正直、こういうケースは初めてで、それこそ75点から85点の間、みたいな揺れ動きは過去にもあったのですよ。でも基準点を前後する揺れ動きですからね。
確実に言えるのは、昨日もちょろっと書いたのですが「庵野秀明の<手癖>に飽きた」というのはあります。
ま、これはシン・シリーズ共通のものだからある程度はしょうがないんだろうけど、国家とか公安とかが出てきた時点で、ちょっとうんざりしてしまった。
いやね、「シン・ゴジラ」は当然として「シン・ウルトラマン」、いやこの場合は「ウルトラマン」とするべきなんだろうけど、ウルトラマンの世界観的に国家が出てきても不自然ではないんですよ。
ところが、原本の仮面ライダーの世界観と国家のミスマッチがすごい。さすがに「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」よりは抑えめにはしてたけどさ。
次に個人的に気になったのは、怪人もといオーグが戦闘中に喋りすぎることです。
いやね、数体出てくるオーグのうち、ひとりかふたりだけ喋りまくるってんならわかるんですよ。それも個性付けのひとつだし。
でも揃いも揃ってあれだけ喋られるとね、戦闘シーンを見せられているのか説明を聞かされているのかわからなくなる。
何だろ。説明過多ってよりは単純に説明がヘタクソなんですよ。というか庵野秀明の弱点ってダイアログの下手さだと思う。心情とか状況説明を簡潔にわかりやすくまとめることが出来ずに1から100まで全部喋らせるというか。
もうひとつはCGだなぁ。
どうしても納得出来なかったのは1号と2号の空中バトルで、いやいや、もうそれスマブラじゃん、と。
仮面ライダーってのはね、等身大のヒーローなんですよ。ウルトラマンのような巨大ヒーローとは違う。んで等身大である限り、CGではない人間と人間とのぶつかり合いがないと逆に迫力が出ないんです。
1971年に放送された「仮面ライダー」についてアタシは「なるべく特撮は使わずに現場でのアクションを大切にしていた」というようなことを書いたことがあります。
もちろんこれには事情がある。東宝ほど東映は特撮を十八番にしてなかったこと、そして大野剣友会のようなスペシャルなアクションをこなせる人たちが座組にいたからです。
だから言い方を変えれば「やむを得ず」だったのかもしれないけど、現場でのアクションをどう活かすか、そしてそれをどうカメラが捉えるかが仮面ライダーの魅力になっていたのです。
CGで言えば偽ライダーが出てくる終盤のバイクチェイスシーンも、あれだけグリグリ動かしてるのに迫力がまったくない。
↑は一時期ネットで話題になった「仮面ライダーV3」のワンシーンだけど、これなんかシーンとしては静的なんです。だけれども「人間が50メートル以上ある高い煙突に立ってる」という「フィクションからはみ出した現実」が異様な迫力につながっている。
それをCGにしちゃうと、シーンとしては派手にはなるけど、CGである限り「物体の軽さ」は変えようがないし、そのせいで迫力がなくなっちゃうんですよ。
あ、ゴメン。もういっこ。
ロードムービー的にするならちゃんと地図とか出して桜島まで連れていきゃ良かったのに。んで桜島でダブルライダーってことにしたらファンも喜んだのにね。
って、書いてたらどんどん出てくるな。てことで本当に最後にひとつ。
あんまりさ、コミュ障とか、そういう言葉を入れない方がいいと思うんだよな。何とも言えない「オッサンが若者に擦り寄ってる」感が出るっていうか。もちろん「コミュ障」なんて結構古い言葉なんだけど。
とまあ、ここまでなら否定的な感じなのですが、少なくともアタシは観てて長いな、とか、途中でアクビが出た、というようなことはなかった。
庵野にしては非常にスッキリした終わり方だったし、冒頭のカーチェイスなんか「クレージー大作戦」を思い出したしね。
あと柄本佑の一文字隼人がハマってたのは意外すぎた。庵野はこういう役者選びは本当に上手い。
柄本佑、本当にスマンかった。親父のことを「2号は2号でもパーマン2号だ」と言ったのは取り消す。
そんなわけで、良いところと悪いところが混在しすぎていて、もう、どう評価してわからないのですよ。
あ、最後に、もう笑いをこらえるのに必死だったのが緑川博士の名前がヒロシだったこと。どうも漢字は「弘」みたいだけど、このギャグ昔考えてコントにも入れてたくらいだし。つかこれ漫画版準拠なの?漫画版読んだのずいぶん昔だから忘れたわ。
どっちにしろ博士だからヒロシか。おめでてーな。まあ庵野は、仮面ライダーチップスでも食ってなさいってこった。