いやもう、美空ひばりの歌手人生は笠置シズ子のデッドコピーからはじまった、というのが定説となってますが、ま、個人的にはそれは違うとは思うのですがね。
正直言えば、まだ美空ひばりのことは調査が中途も中途で、何もエラそうに言えない。
ただ、やっぱり、気になるのは笠置シズ子側の最重要ブレーンだった服部良一の門下の原六朗が美空ひばり側のブレーンになった、というのはものすごく大きなターニングポイントだったように思うわけで。
んで、言うまでもなく、笠置シズ子x服部良一コンビをあきらかに念頭に置きながら、和物テイストを濃くしたのが、美空ひばりx原六朗による「お祭りマンボ」である、というのは間違いないような。
しかし、意外なことに原六朗は笠置シズ子にも曲を提供しています。しかも美空ひばりのブレーンになった後に。
それが「私の猛獣狩」と「めんどりブルース」なのですが、どちらも非常にユニークで、しかも尖っている。
もう一度言います。真偽はともかく、デビュー当初の美空ひばりは笠置シズ子のイミテーション扱いだった。それを乗り越えたのが「お祭りマンボ」以降で、その美空ひばり側の最大の立役者が、自分の師匠と名コンビだった笠置シズ子と組む、というのは、かなりのプレッシャーがあったはずなんですよ。
今回は「めんどりブルース」は置いといて「私の猛獣狩」にスポットを当てますが、普通なら師匠の作風を「こじんまり、ソツなく踏襲する」と思うのですが、事実サウンド的には踏襲してるところもあるんだけど、歌詞にかんしては、よくぞここまで振り切ったな!と感心するほどなのです。
もちろん服部x笠置ラインの楽曲には多分にコミックソング要素が含まれているのですが「私の猛獣狩」においては<笑い>ということにかんしてだけは完全に凌駕している。
ナンセンスから語感の可笑しさ、さらにはメタフィクションまで、とにかく<笑い>のタネになるものは全部ブチ込んでやれ!みたいな気概がすごい。
それにしても、あらためて歌詞を読むと、原六朗って人はギャグがわかってたんだなぁってことです。
「♪ 象ォにライオン キリンにシマウマ」ときて「ゴリラにゴジラに」で、オチが「チンパンジー」ですよ。普通ならゴジラを大オチにするのに、最後にチンパンジーを持ってくるなんざ、<笑い>がわかってないと絶対にやらない。
原六朗は師匠の服部良一と歩調を合わせるように、だんだん寡作になっていったけど、というか活動期間が短く、それがほぼ美空ひばりのブレーンだったせいで「美空ひばりあっての原六朗」みたいな扱いだけど、もっと多彩な音楽がやれた人だったな、と。
個人的には、東芝に移籍して、モダンなのがやりたい、コミックソングが作れるしギャグがわかってる、となったら、一回でいいから同じく東芝所属のクレージーキャッツと組んで欲しかった。
原六朗作詞作曲の楽曲を植木等が歌う。こんなこともあり得たのに。ま、これは夢のも!の!が!た!りィ~!ですが。