いやぁ、ネットでやたら目につくのが「打撃の弱い選手を上位に置くな。なるべく打順を詰めろ」って意見でして。
何でこういう意見が多いか、正直なところ、さっぱり理解出来ないんですよ。
例えば極端に今までの常識からかけ離れた采配だったとしても、指標的に、あとセイバーメトリクス的に正解なのであれば、まァ一定の理解は出来る。もちろん「やらないのは莫迦」だとはまったく思わないけど。
しかし、最近の統計では「打順が得点に及ぼす影響は年間で数点程度」と言われているし、そもそも得点期待値というものをアタシは信用していない。つかウソ臭い算出方法だとずっと思ってるんだけど、まァそれもいい。
とにかく、プロの監督もやらないし、指標もそこまでメリットを見い出せていない作戦っつーか打順の組み方を何故「これが正解」みたいに強弁出来るんだろ、と。
とくに、この手の人たちが嫌がる理由に「2番に弱打者を置く」というのがあります。
もちろんそれはわかるんだけど、好打者が揃ってないチームの場合は2番に無理矢理強打者を置くと5番を打てる選手すらいなくなる。
そういう場合でも「それでいい。5番以下は自動アウトでいいから、それでも2番に好打者を置け」と言い張られると、もう、何を言わんかや、という気持ちになるっつーかね。
プロ側からの意見で間違いなくよく聞くのは、投手がよく言う「下位打線が自動アウト(とまでは言わないけど)の方が助かる。仮に上位打線に強打者が揃っていてもピッチにメリハリがつけられて投げやすい」みたいな話です。
これはもう完全に投手心理の話なので、アタシのような素人には計り知れないところなんだけど「相手がやりづらいと思うことをやるのが野球」ってことを考えたら、少なくとも一部の投手には「打順を詰める=相手投手の心理的負担を軽くしている」ってことになるはずなんですよね。
とまあ、ここまでは、どちらかと言うと、いやどちらかと言わなくても、か。打順詰めろ否定派って感じで書いてきました。
実際、2番に強打者を置きたがる監督はいたけど、さすがに「5番よりも2番」という監督は見たことがない。いやもっと言えば「6番よりも2番」という監督さえも、アタシが見た範囲ではひとりもいなかったと思う。
しかし、もしかしたら「6番より2番」という監督が誕生するかもしれない、という話でしてね、それが阪神タイガースの監督に就任した岡田彰布です。
第一次岡田政権の時から「セイバーメトリクスに近い野球をやる」と言われていましたが、さすがに「6番よりも2番」というような打順の組み方はしてなかった。
それが、現場から離れている間に考え方が変わったのか、どうもね、そうなりそうな気配があるんですよ。
具体的には、まず岡田は「近本1番固定、大山とサトテルのポジションとクリーンナップ固定」を明言した。この時点で外国人がどうなるかまだ未定でしたが、大山の能力、サトテルの停滞を考えると(さらにソースがあやふやだけど「サトテルの後に大山がいる方がいい」と言ってた気がする)、1番近本、3番サトテル、4番大山、というアウトラインが見えていたのです。
そして秋季キャンプでWBC組が合流すると、中野のバッティングを高く評価していた。
ただこの時点では「左投手に弱いのに、1番から3番まで左打者を並べる」ことには否定的で、となるとアタシは「これは中野を6番くらいに置くつもりだな」と思っていたのです。
具体的に誰かはともかく、2番に右打者を置けばクリーンナップの組み方の幅が広がる。逆に言えば2番が左打者の場合は3番が右打者固定になってしまうわけで。
ところが秋季キャンプ終盤になって「中野は2番」を明言した。つまりこれは「3番右打者」という宣言でもあり、ま、新外国人としてノイジーの獲得の目処がたったということでしょう。
つまりね、中野が強打者かどうかはともかく、少なくとも阪神で言えば近本、大山、サトテルの次に位置する実力の持ち主です。
いわば「ナンバー4」の中野をどこにハメるか、さすがに5番はタイプではなさすぎるけど、それでも「クリーンナップの組み方」の自由度を下げてでも、あまり小技が上手くない中野の「2番」を明言したってのは、これは「6番より2番」という姿勢と見做しても良いのではないかと。
正直、これ以上の「2番打者打撃重要視」は現実的じゃない。いやシーズン通して実現可能なラインで言えば最高レベルの「2番打者打撃重要視」なんじゃないでしょうかね。
マジで「打順詰めろ」論者の人は来年の岡田阪神を注視して欲しい。それでいろんなことがわかるような。