吉田拓郎(よしだたくろう)の「マークⅡ」(「イメージの詩」のB面)がリリースされたのは1970年らしいのですが。
もちろんこの楽曲の元ネタはトヨタが発売していた自家用自動車の「コロナマークⅡ」で、しかし吉田拓郎はさほど考えずにこのタイトルにしたらしい。
ということは当然これ以前にコロナマークⅡは発売されていたってことになるのですが、これが1968年。つまりまだ1960年代だったと。
何でそんなことにこだわるのかというと、1960年代の時点ですでに「マークXX」という表現が使われ出していた、そして、この<マーク>にあたる箇所は時代でどんどん変化していってると気づいたからです。
たぶん1968年の時点で<マーク>というのはかなり新しい表現だったはずで「クラウンとコロナ」の中間の層を狙った車種に新規名称を用いず、あえて浸透していた「コロナ」の「ワンクラス上の」という意味で「マークⅡ」としたのはトヨタの慧眼だったと思う。
その後、この<マーク>ナントカってのは、メーカーによって「ワンクラス上の」だったり「次期バージョン」のような意味で1970年代から1980年代前半まで広く使われていくことになります。
アタシは8ビットマイコンオタクだったので、やはり<マーク>なんて言われるとNECのパソコンを思い出す。
PC-8001mkⅡからはじまって、PC-8801mkⅡ、PC-6001mkⅡ、とかね、表記は「mk2」だけど読みは紛れもなく「マーク2」です。
あと日立も<マーク>が新型機の名称に採用されており、日立ベーシックマスターレベル3MarkⅡだったりしたし。
しかし、ここからが面白い。
1983年に発売されたベーシックマスターレベル3の新型機はマーク3、マーク4をすっ飛ばして「Mark5」になった。
そしてNECの機種もPC-8801mkⅡの後継機は「mkⅢ」ではなく「PC-8801mkⅡSR」となったのです。
PC-8801mkⅡSRの発売は1985年1月。ギリギリではあるけど1980年代後半ということになる。
推測だけど、この頃から、何となく「<マーク>ナントカは時代遅れ」みたいになったんじゃないかと。(余談ですが1986年発売のPC-8801シリーズからはついに「mkⅡ」が取れて「PC-8801FH/MH」という名称になった)
え?ああ、わかってますよ。アレですよね。
PC-8801mkⅡSRから9ヶ月後に発売された「セガ・マークⅢ」は流通用の型番が「SG-1000M3」、つまりSG-1000、SG-1000Ⅱの明確な後継機であり、本来っつーか一切捻りを加えなければ「SG-1000マークⅢ」ということなのでしょう。
優れたゲームメーカーであり、優れたゲームハードウェアメーカーだったセガがイマイチ煮え切らなかった理由はこんなところにもあると思う。つまり「もう時代遅れになりつつあった<マーク>を使ってしまった」というね。
1990年代に入ると<マーク>に取って変わっ、てはいないんだけど、少なくとも<マーク>よりはズレてない感じで使われ出したのが<バージョン>です。
そして2000年代に入ると「.0(コンマゼロ)」が流行った。もちろんこれの代表は「WEB2.0」です。ってまた最近になって「WEB3.0」なんて言い出してるんだけだけどさ。
結局、普遍的なナンバリングは<マーク>とも<バージョン>とも付かない、ただ数字だけが付加されたパターンで、それこそMSX2から始まり、PlayStation(PS)もだし、iPhoneなんかもそうです。あ、Windowsも現在はそうなってますよね。(たしかにコンマが付く場合はあるけど純然たるマイナーチェンジって意味だし)
シンプルイズベストじゃないけど、流行り廃りのある<マーク>や<バージョン>なんか排除して数字だけにするってのは間違ってない。もしくは歴代ナンバーではなく西暦を付ける、というのは「いつ発売されたものか」がわかりやすいし、こちらも普遍的と言えるはずです。
というわけで、もう、新しく、少なくとも製品に<マーク>に相当するようなものは付かないんじゃないかな。いや例えば<フェーズ>とか<ジェネレーション>とかでさえ、もう、何かすでにダサいよなぁ。