レトロゲームは誰のもの?
FirstUPDATE2022.10.10
@Scribble #Scribble2022 #ゲーム @クレージーキャッツ 単ページ 権利関係 コナミアンティークス @MSX クレイジーキャッツメモリアル レトロゲーム機

「誰のものでもねーよ!」「そりゃゲーム会社のものに決まってるだろ」と言われたら何も返す言葉がないのですが、ちょっと、心に引っかかる文章がありまして。


アタシが愛読しているオロチさんの「ファミコンのネタ!!」からですが、いやね、正直反論はまったくないんですよ。というか、書いておられる通りだな、と素直に思う。
ただね、これ、ずっとアタシも思っていたことで、それこそスーパーファミコンの時代から「現行ハードにリメイク移植する」ってのって、本当にどこをターゲットにしているのかまったくわからなかったのです。

アタシが一番意味がわからなかった移植はプレイステーションとサターンで出た「コナミアンティークス MSXコレクション」です。
このソフトが発売されたのが1997年、ということなので、MSXなる共通規格のハードウェアが市場でそれなりに存在感を放っていた頃から10年ほど経った時期、ということになる。
アタシは熱狂的、ではなかったけどMSXユーザーだったし、とくにコナミのMSX作品はどれも優秀でアホみたいに遊んだ記憶がある。
そんなアタシでさえ「こんなの売れるわけないじゃん。コナミもとうとうトサカにきたか」と思ったもんです。

まずアタシが想像したのが「スタッフのひとりが<遊び>でプレステとサターン用のMSXエミュレータを作ったんで、埋め草的に出したんじゃないか」と。あと1990年代後半はまだゲーム業界も景気が良かったので、こうしたたいして売れないとわかってるある種のファンアイテムを出す余裕があったんだろうな、とね。
この想像が当たってるかどうかはともかく、はっきり言えば、これほど大向うにウケる要素が微塵もないってのは誰の目から見ても明白です。
MSXは今でこそTMS9918が作り出すローレゾリューションのグラフィックが<味>に思えるけど、1997年ではまだそこまで時代は成熟していない。ファミコンよりも劣る(あくまでグラフィックは、ですが)ゲームに新規ファンが付くとはとても思えなかった。

となると、このソフトを購入にまで至るのは「かつてMSXユーザーだった人だけ」に限定される。
もちろんMSXユーザーだったからといって全員が全員購入するわけでもないし、何よりアタシ自身、プレステは持っていたけど「もう一度やりたいかって言われたら微妙だなぁ」と思って購入しないまま市場から消えました。

先のオロチさんのエントリで「ファンの声が大きくてリメイクしたけど結局爆死した」みたいなことについて触れてましたが、何というか、かなりそもそもの話なんだけど、ゲーム会社ってそんなユーザーの声を重要視してるのかな、と思っている。
何故なら「新規IP」と「古いIPの掘り起こし」でそこまでリスクは変わらないと思っているからなんです。
なるほど、それこそ単純な開発費だけならば新規IPのが費用がかかるってのは理解出来るんです。しかし古いIPは古いIPで、相当な手間暇が必要なんですよ。

ここで、ま、ゲームではないのですがアタシが知ってる事例を紹介します。
かつて「クレイジーキャッツメモリアル」という、クレージーキャッツが出演したテレビ番組から、現存している映像を集めたレーザーディスクソフトが発売されていました。
そして2000年代半ばになってそのソフトの中に収録されていた、クレージーキャッツ10周年記念コンサートの映像だけを選り抜いてDVD化する計画があったのです。
しかしこの企画は頓挫した。権利関係があまりにも複雑で処理しきれなかったのです。
よくわからないのはここからです。
「クレージーキャッツ10周年記念コンサート中心の新編集DVD」はダメだったのに、レーザーディスクソフトの「クレイジーキャッツメモリアル」をまんまDVDで復刻する、というのは大丈夫だったのです。

正直書いてるアタシも何のことかさっぱりなんだけど、とにかく権利関係というのは本当に複雑で「○○でさえ無理なのに△△なんかダメに決まってんだろ」と思っていたら△△はあっさり世に出る、なんてケースは結構あるみたいなんですね。
たまたまアタシが知ってる事例が映像関係だったけど、ゲームだって同じのはずで、複雑きわまる権利関係の処理をするために、時には探偵紛いのことまでやらなきゃいけなかったりする。
開発費、なんて言うとどうしてもグラフィックだったり音楽だったりプログラミングだったり、というイメージで、後はせいぜい宣伝費くらいしか浮かばないかもしれないけど、少なくともリメイクなどの古いIPの活用はそれ以外のことが大きすぎる、わけで。

だからね、古いIPがリメイクされる場合って「権利関係で何の問題もない」場合プラス「元作品の販売本数と発売から経った期間から割り出した売上見込み」がすべてで、ユーザーの声でなんかリメイクするしないなんて決めてないと思うんですよ。
これもゲームに限らず「古いIPのコンセプトやイメージだけを受け継いだ<精神的続編>」みたいな新規IPがあるけど、結果的にはイチから作り直した方が開発費も安く済むし新規ユーザーを獲得出来る確率も上がるはずだから、そりゃあゲーム会社としてはそっちの方がいいに決まってる。
古いゲームのリメイクなんか出しても、待ち望んでいたファンから絶賛されることはまずないし、むしろ「あそこが違う、ここが違う」と文句ばっかり言われる。

だからね、レトロゲームマニアがカネを落とすかどうかはともかく「不満を抱きやすい層」であるのは間違ってないと思うんですよ。
レトロゲームマニアが実際どれくらいリメイク作品を購入しているか、それはデータがあるわけではないのでよくわからない。しかしSNSを見ると「レトロゲームマニアは文句ばっかり言う」というイメージになるのも、やむを得ない。
アタシはクレージーキャッツマニアだし、もし新たなクレージーキャッツ関連のものが出たら仮にどんなものであろうと、少なくともSNSでは文句は言わない。
でもそれはあくまでアタシひとりであって、クレージーキャッツマニア全員の口を塞げるわけじゃないもん。そりゃあ、文句ばっかりの人なんていくらでもいるからね。

結局、何が言いたいのかというと、ゲームにしろクレージーキャッツ関連物にしろ、誰のものか、と言われるなら、ファンのためのもの、ユーザーのためのもの、なんてことはあり得ない。
もちろん、それらは権利を持っている者(企業)のものです。つまり権利者の匙加減で全部が決まる。
ユーザーの意見?マニアの意見?まったく関係ない。商売になると思えば商品化するだろうし、中には商売抜きで商品化してくれる男気あふれる権利者もいるだろうけど、そんなものは期待してはいけないわけで。







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