何だか誤解されそうで怖いんだけど、このエントリは酒っつーかアルコールを否定するもんじゃありません。
いやね、正直なところ、アルコールが身体に与えるダメージとか周辺の人に迷惑をかける、なんてことはアタシはどうだっていいんです。というかアタシはアルコールはダメな方だけどタバコを吸うのでね。つまり「どちらも迷惑をかけちゃダメだし、迷惑をかけない範囲なら好きなようにすりゃいい」というスタンスですから。
さて、本当に酒が好きな人はアルコール依存症にならない、とよく言われています。
酒自体が好きなんだからマズくなるような飲み方はしたくない。つまり味わいながら飲む。んで味もわからなくなるような飲み方こそ酒にたいする冒涜ではないか、とまで思ってるかどうかはわかりませんが、少なくとも依存症になるような無茶な飲み方はしない、というのは説得力があります。
というか依存症の人は飲み方が違うもん。「味わう」なんて感じは一切なく、ただ体内に流し込んでるだけにしか見えないですから。
つまり、依存症になる人は「本当はそれほど酒が好きではない、弱い人」ということになるのかもしれない。
代表的なケースは横山やすしでしょう。
横山やすしの若い頃を知る人物たちの意見は「やすしは酒が好きではなかったし、そもそもあまり飲めなかった」ということで一致している。
では何で「やすし=酒」というイメージになったかというと、早い話がやすしがきわめてセンシティブな人間だったからです。
弱い自分自身を支えるために酒の力を借りた。元来酒に弱いのですぐに酔える。酔ったら自身に降りかかるプレッシャーや不安などから逃れることが出来る。
しかし、飲めば飲むほど酒に耐性が出来てしまった。普通は耐性が出来る前に肝臓などが悲鳴を上げるのですが、何のことかやすしは内臓が強かったのでしょう。それでどんどん量が増えた、と。
身内にも似たようなタイプの人間がふたりもいました。
どちらも本質的に酒が好きではなく、また非常にセンシティブだったってのも横山やすしと共通しています。
いや身内以外の依存症になった知り合い全員、同じ傾向にあり、少なくともアタシはただのひとりも「酒好きが嵩じてアルコール依存症になった」という人を知らない。
アタシも本質的にアルコールが弱い方ですが、本当の酒好きの人と飲むと楽しいんですよ。何というか、飲む幸せ、みたいなのがこちらにも伝わってくる。自分はたいして飲めないけど、そういう姿を見るだけで妙に楽しくなってしまうんです。
と同時に、いつも同じことを思ってしまう。ああ、酒好きの人が羨ましいな、と。
そんなアタシですが、一時期、かなり飲んでた頃がありました。2004年のことです。
ま、言ってもたいした量ではない。しかし「毎日チューハイロング缶2本」というのは下戸の飲む量ではありません。
もちろん楽しい酒とはまったく違う。ま、現実逃避のための飲酒というか。
飲んでて楽しい、なんて感覚はゼロで、酔わないと不安に押し潰されそうになる。そこから逃げるために飲んだ。
最初は通常缶1本だったのが、それでは酔えなくなり、気がつけばチューハイロング缶2本になっていた。もう依存症寸前です。
この後「あること」(何なのかは書かないけど)をきっかけに依存的飲み方から脱却出来たのですが、アタシはこの時、依存的な飲み方が如何に恐ろしいかを学んだ。
しかも、先述の通りこのちょっと後くらいに身内にアルコール依存症の人間が出てきたこともあって、これは本気で注意しなければマジでヤバいことになる、と悟った。
「本質的に酒が好きではなく、しかもセンシティブである」という条件にアタシは見事に当てはまる。だから危機感を感じたというか。
何度もしつこいですが、自死さえ覚悟した2018年、もちろんそれだけ精神的に追い込まれていたのですが、アタシはこの時酒に逃げていない。
我慢した、とは違う。というか依存症の人を数々見てきて、んで自分自身も入口まで立ったことはあったわけで、冗談抜きに、アルコール依存症になるくらいなら死んだ方が<はるかに>マシだ、と思っていた。
<まだ>マシ、じゃない。<はるかに>です。アルコール依存症になるくらいなら、死ぬなんてマジでなんてことない、と。
でもね、今考えたらこの時、酒に逃げなかったことで「ヤケッパチの開き直り精神」が生まれた。
何があろうが別にどおってことはない。他人さんから馬鹿にされようが、どれだけ恥をかこうが、殺されようが、そんなことはどうだっていい、というね、ある意味センシティブな人間にとって一番重要な要素である「恐怖心」のようなものが極端に薄らいだんです。
センシティブな人が飲むのは「恐怖心から逃れたい」という心理が大きいと思うけど、アタシはついに、ノンアルコール状態で恐怖心と敵対しなくなった。
アルコールが好きでない、かつ恐怖心が薄い人間が酒を飲むわけがない。もし今後、アタシが飲み始めたとしたら、それは味覚が変わって酒が本当に好きになった時だろうと思う。
いつか、本当の酒好きになれないかなぁ。何というか、老体に近くなって酒の味をおぼえたってのは何かいい。アタシで言えば「え!?ニッポン無責任野郎、まだ観てないの!?いいなぁ!新鮮な気持ちで観れるじゃん!!」ってのと同じというかね。