Tumblr時代、ずいぶん「○○ブームでやんす」という「その時自分の中で流行っていたもの」=マイブームについて書いてたのですがね。あ、マイブームも「ブームでやんす」も元ネタはみうらじゅんでやんす。
でも今回のはちょっと違う。
Tumblrの時は「リアルタイムでのマイブーム」って感じだったけど、これは「そういやそんなブームもあったなぁ」なんて感じでやろうかと。もちろん<マイ>ブームではなく<世間的な>ブーム、それも「ちょっと忘れられかけている」みたいなことを書いてみようとね。
んで映えある(←何が?)一回目のネタに選んだのは「もつ鍋」です。
って、もつ鍋なんて今もあるし、というか「博多の名物料理」ってくらいは誰でも知ってる。んで、実際に食べたことがある人も相当数いるはずです。
もつ鍋が<売り>の飲食店なんて博多じゃなくてもあちこちにあるし、少なくとも「物珍しい」ものでないことはたしかです。
しかしね、何しろ<ブーム>だからね、そんなレベルでなかった頃があったんですよ。
いろいろと検索してみると、もつ鍋が<博多で>一般的になったのは意外と最近で、1960年代後半らしい。つまりアタシが生誕した頃。ま、さすがに「最近の」ではないけど、郷土料理というほどは昔から慣れ親しまれたものではなかった、と。
やっぱり博多の鍋と言えば「鶏の水炊き」で、しかし数年博多(じゃないけど福岡県内)に住んでたアタシから言わせれば、あっちは鶏自体がウマいんです。だから「水炊き食うくらいなら焼き鳥を食いたい」と思うんですよね。
水炊きにしろ焼き鳥にしろもちろん高級料理じゃないけど、もつ鍋はもっとジャンキーなもので、何しろ元来「価値がない」と言われた牛豚の内臓を煮たものなんだから、ま、はっきり言えば下層の人たちの、と言ってもいいんじゃないか。ダメ?
牛豚の内臓は博多だけではなく、各地でひっそり食べられていた。とくに東京にその傾向があって、今でも居酒屋なんかに行くと「もつ煮」なんてメニューがある。
どうも「ホルモン=放るもん(捨てるもの)」という語源からか(ちなみにこの「放るもん」説は現在では誤りであると言われている)、もつ=関西のイメージがあるかもしれないけど、実は関西人は言うほどホルモン(もつ)を食べないんです。てか絶対に関東人の方が食う。
ってこれは「さかい親子」向けのネタだな。
ま、たぶんそうした下地があったせいだろうけど、もつ鍋は関東であっさり受け入れられた。
しかも「安価」であり「ヘルシー」であり「コラーゲンたっぷり」なんて<売り>があったらね、そりゃ女性だって飛びつく。
1992年頃から、とにかく東京の各地に、恐ろしい勢いでもつ鍋屋が出来ていった。もう渋谷のセンター街近辺だけで何軒あるんだってレベルで増殖していったのです。
しかも過当競争になったせいか、ただでさえ<安価>が売りのもつ鍋がさらに値段が下がった。記憶しているところで言えば、たしか一人前980円とかまでなってたと思う。
今この値段を聞いてもピンとこないかもしれないけど、バブルが弾けた直後、という時代を考えれば安すぎる。ファストフードレベルで<鍋>が食べられるんだから。
しかしこのブームは本当に一瞬だった。当時アタシは関西に居住していましたが、半年後に渋谷に行ってみると、あれだけあったもつ鍋屋が一軒残らずなくなっていたのには唖然としました。
ま、過当競争になりすぎてモツが不足していた、職人のレベルが低くなったので下処理がアマかった、などの理由が言われてるみたいだけど、それにしてもあれだけ一気になくなるかね。
こんなこと、大阪や神戸などの関西ではありえないことだった。だからね、一番最初に「東京ってすごいなぁ(というかエゲツないなぁ)」と感じたのは、このもつ鍋ブームの顛末だったような。