ズバリ言わない
FirstUPDATE2021.12.1
@Scribble #Scribble2021 #芸能人 #テレビ 単ページ マツコ・デラックス 細木数子 占い 濁す

何だか、ズバリ言ってた人が亡くなったみたいだけど、アタシはこの人が抗議して天海祐希のドラマが封印された、なんてことがあったな、くらいの感想しかありません。それよりもですね。

そういや、えと、たしか「怒り新党」だったと思うけど(つか「かりそめ天国」だっけ、は一回も見たことがないのであり得ない)、マツコの行く末の話になって、有吉が「ズバリ言う人になるんじゃないの?」って茶化してたのを思い出した。
マツコって女装はしてるけど思考は完全に男性で、ズバリ言うかどうか以前に占いにまったく興味がないはずなんですよ。ま、何つーか、占い師をひとりの人間としか見てないというか、少なくとも占い師を上げ奉ることはしない。

というか、やっぱ、この人は毒舌でもホンネで話すタイプでもないんですよね。
はっきり言えば、むしろ極力「ズバリ言わない」。ズバリ言いそうなイメージはすごくあるんだけど、わりと濁しながら喋るタイプで、たまにズバリ言ってやろうとかという気もなく核心を突いてしまうことがあるので、余計に「ズバリ言うタイプ」に見えてしまうだけの話です。

もしかしたらこの辺は新宿二丁目出身ならではのスキルかもしれない。あの界隈の人たちって、どうしても下ネタバンバン、毒舌バンバンのイメージがあるけど、実は何も言ってない。言いそうなムードはそれこそバンバンあるんだけど、ほとんどがムードだけでたいしたことは言わないし、言わないことが生き残るスキルでもあると思うんですよ。
ま、良くも悪くも醒めてるというか、ハイテンションな裏でしっかり計算してるというか。

ズバリ言う人はそうじゃなかったもん。あの人はテレビに出る前の時点で稼ぎまくってたから、これも良くも悪くもだけど、本質的にはテレビに馴染んでなかったし、馴染もうともしてなかった。つまり「テレビショーに占い師という役割で出てる」感覚が薄かったと思う。ま、役割として占い師役をやってたってよりは、客相手の時と変わんなかったというか。
というかね、すぐに「バラエティ番組なんて全部台本」なんて言いたがる人がいるけど、バラエティ番組は台本というよりはロールプレイに近い。つまり「アドリブでも与えられた役割をコナせるならそれでオッケー、アドリブが無理なら役割を全うするために台本通りにやれ」ってことだと思う。

マツコは最初、それこそ「ズバリ言う」役割を与えられてたんだろうけど、ズバリ言いそうで言わなかった。ただその<かわし方>が鮮やかだったんで認められたんじゃないか。
そのうちスタッフもマツコの個性がわかってきて「言いそうで実は言わない」という安心感から素人との絡みが多くなったんだと思う。
マツコが珍しいのは「飢えへの恐怖心」と「虚無」が同居しているところで、飢えへの恐怖心は心配りに現れるし、虚無は言い換えれば<やけっぱち>とも言えるわけで、このふたつは日本人の心に突き刺さりやすいのです。

毒を吐いたり、相手を不快にしたり、それだけが人間のホンネじゃないもん。それを喜ぶ人はいるけど、そんなの短期間で飽きられる。
ま、マツコ本人は飽きられづらいようにと考えてたわけじゃないんだろうけど、この「言いそうで言わない」ってスタイルを編み出したのは間違いなくマツコです。
ま、そういう人をズバリ言ってた人と比べるのはおかしいんだけどねぇ。







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