どうも、大阪のオバチャン=値切ってナンボ、みたいに思われているかもしれませんが、さすがにもう大阪でも<値切る>という文化(?)はなくなりつつあるな、と。
昔はね、たしかになくはなかったんですよ。
でも「ところ構わず」って感じでもなく、また「オバチャン限定」でもなかった。ま、それなりの値段の買い物をする場合に限って、老若男女問わず誰でもやることだったと。
例えば普通の市場なんかの、八百屋とか魚屋でやるかと言えばあんまりやらない。「やりそう」と思われてるだけで、そういう薄利多売のものにかんしてはどのみちたいして値切れない。だから交渉のワリには合わないっつーかね。
たぶんその辺は大阪だろうが東京だろうがあまり変わりがないと思う。東京だって「値切り文句」がないだけで「店頭に立ってるのに買わない」という無言の交渉を行なっていたわけで、そういうのはアメ横にでも行けばよくわかります。
でも今は、それこそ昔で言うところの「ぽっきり価格」が当たり前になって、バッタ屋が発展したであろうディスカウントショップが幅を効かせる時代ですからね。もう値切るなんて不可能です。
値切るってのはね、基本的には個人商店でないと無理なんですよ。いや昔は「値切られること前提」で値段を決めてたところがあったから大手チェーン店でも可能だったけど、あれは「値切りを楽しんでもらう」という一種のサービスだったと思うわけで。
逆に言えば個人商店で、しかも定価なんかない商品を取り扱っている店ならば、大阪はおろか東京でも、日本のどこでも、いやもう海外でも値切りは成立します。
ロンドンに居住していた頃、カムデンタウンという街に巨大なマーケットがあってよく行ってたんだけど、とくに古着なんかは定価なんかないわけですよ。となると当然のように値切りが成立する。
コツとしては「実際以上に英語が喋れない<フリ>をする」ことです。
そんな<フリ>をしなくてももともとアタシは英語なんかろくすっぽ喋れないけど、言っても居住してたんだからヒアリングはそれなりに出来る。でも相手が何を言おうが自分の希望額だけを連呼する。もちろん喧嘩腰にじゃないよ。なるべく物腰を柔らかくしてね、でもひたすら「○○ポンド、プリーズ!」それだけ。最後は向こうが根負けしてくれますから。
まァね、言ってもアタシは「値切り華やかなりし頃」を知ってるし、マイコンやなんやを買うのに高校生の頃から値切り交渉をしてきたからそれなりに手慣れてはいるのですが、確実にアタシより上手い、一例だけで決めつけるのはアレなんだけど、はタイ人だと思う。
根拠?だから一例だけですよ。
ロンドンに居住していた頃は語学学校に行ってたのですが、そこでね、授業の一環として「マーケットで値切る」というロールプレイをやったのです。
何しろアタシが所属しているクラスですからね。いろんな人種の人がいたけど英語能力はお察しで、つまりはほとんど喋れない。
つまり店側を演じる側も買い手側、値切る側もろくろく英語が喋れないのにロールプレイするっていう狂気の沙汰な<ゲーム>をしたわけで。
そんなんだから当然のようにグダグダになる。
アタシなんかはマーケットでは絶対売ってないようなものを交渉して、つまりはボケて凌いだんだけど、ひとりね、メチャクチャ上手い子がいたんですよ。
その子はタイ人の女の子で、もう具体的な値切り文句は忘れちゃったけど、これがこの値段なのならこっちはこうでないとおかしいよね?みたいな感じで、大仰でもなんでもなく華麗に値切っていく。
授業終わりにティーチャーが「誰が一番上手かったか」と問うたのですが、全員、当たり前のようにそのタイ人の女の子を指差しましたからね。
タイと言えば今もってマーケットが盛んなイメージがあるし、おそらくその子は値切るという行為に異様に慣れてたんでしょう。
それにしても、母国語でもなんでもない、しかもお察しレベルの英語で、よくもあれだけ華麗に値切れるわ。しかもその子、普段は多弁って感じじゃない、むしろあんまり喋らない子だったのに。
あれは経験値の差か、それともDNAか。つまり大阪のオバチャンなんか世界的に見たら「まだまだ」な気がするのですがね。