ポートピア81とポートピアランド
FirstUPDATE2021.8.7
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 神戸にポートアイランドなる巨大な人工島ができた時は心底ビックリした、といいたいところなんですが、あいにくアタシは小学生だったので、それがどれほど凄いものなのかわかるわけがなかったわけで。

 正直「山を切り拓く」ことと「その土砂で埋め立ての人口島を作る」ことのどちらが神戸市の主目的だったかはわからないのですが、とにかくこのふたつが達成出来れば人が住める場所が一気に倍ちかくになるわけで、ただでさえ山と海に挟まれて土地が狭い神戸市としては悲願とも言えることだったとは思うんです。
 ま、んなことは大人になったからわかることでね、今考えりゃ、そんなカネがかかることをよくやったわ、と。ま、もちろん15年後に震災が起こるってわかってたら絶対こんな計画中止になってるだろうけど。

 さて、そのポートアイランドで1981年にポートピア81てな博覧会が開かれるのですが、ポートピア81にはたぶん都合5回は行ったと思う。家族とは一度だけ。後はひとりで行った。といってもたいして何をしたって記憶もないわけで。
 ものすごく記憶にあるのは、どのパビリオンかわからないけど、とにかく世界のカップヌードルを売ってるコーナーがあって、もちろん見たことがない味ばっかりで、かなりの種類をね、行く度に買ってたのです。
 しかしいったい、どのパビリオンだったんだろ。検索しても日清のパビリオンなんてないしさ。

 もうひとつ憶えているのは、たばこと塩のパビリオンに行った時、巨大な、まあ巨大ってほどでもないけど直径5cmくらいの岩塩を、誰もいないのをいいことに拝借して帰ってきたことです。完全に犯罪です。
 それはいいんだけど、問題は帰り、つまりポートライナーなる三宮とポートアイランドをつなぐ公共交通機関に乗る時です。
 何しろカネがなかったからね、で、まだ中学に入ってひと月とかふた月とかしか経ってない頃だったから、まァ、子供料金でもバレないだろ、と子供料金の切符で乗ろうとしたんだけど、見事にバレた。
 何故に?これ、今考えても何でそんなことしたのかわからないんだけど、上は普通の私服だったのにズボンを学生服のズボンを履いていたのです。

 案の定、駅員に呼び止められた。君、中学生やろ?と。中学生は大人の切符やで、と。
 でもあいにく、アタシは大人料金と子供料金の差額さえ持ってなかった。ポケットに入ってるだろ、と言われてもないものはない。
 見せてみろ、と言われた瞬間、はたと気がついた。そう、ポケットの中には先ほどクスねた岩塩の塊が入ってる!こんなのバレたら子供料金で乗車しようとしたどころの騒ぎじゃなくなる。
 もうね、必死で阻止してね、一回家に帰ってから払いに来ますからってことで何とか許してもらった。いやぁ、あんな冷や汗が出たこともないわ。

 で、その巨大な岩塩をどうしてたかというと、ずっとポケットに忍ばせておいてね、舐めるわけです。塩分が欲しい時に。もしアタシが高血圧になったら完全にこの時の報いです。なんですが、あいにくアタシはむしろ低血圧なんですわ。

 いや、正直ポートピア81は意外とどうでもいい。それより当時ポートピア81に隣接されていたポートピアランドについて語りたいのです。
 1960年代後半に神戸で生まれたアタシの中ではね、遊園地といえば宝塚ファミリーランドなんですよ。だから、ポートピアランドなんてあまりにも規模が小さい、遊園地と名乗ることすらおこがましいとすら思うのですが、それでもひとつの出来事のおかげで極めて思い入れの深い場所となっているのです。

 たぶん春休みの前の日曜日だったと思う。つまり先ほどの岩塩事件の数ヶ月前のことです。
 暇だったアタシはもうすぐ始まるポートピア81の下見に出かけました。関係者でもないクセに下見って何なんだって話ですが、なんか面白そうと思ったんですよ。
 ま、行ったはいいものの関係者じゃないので中には入れない。当たり前です。
 んでふと会場の横を見ると、なんかそこも工事をしている。ああ、そういやここに遊園地を作るとか行ってたな、と思い出したのですが、ま、そこも当然中には入れない。

 じゃあしょうがない。帰るしかない。

 ところがどこをどう間違えたか、ポートライナーの駅に戻る道がわからなくなってしまった。あんな見通しのいい場所なのに。
 んでウロウロしてたら、いつの間にかポートピアランドの敷地内に入ってしまったのです。
 まだ至るところ工事中で、でもいくつかの施設は試運転をしてる様子だった。
 なんか意外だったのは、すでに客がいるんです。まだ開業前ですよ。どうも関係者家族の見学会だったみたいなんですね。
 これなら敷地内をウロついてても怪しまれることはない、とさっきまでのビクビクはどこへやら、大手を振って「下見」を始めたわけです。
 ちょうどジェットコースターの近くにきた時、係員に声をかけられた。

 え?ウソ?もしかして関係者でもなんでもないのがバレた?

 再び焦りだしたアタシに、その係員は意外なことを言ってきたのです。

「次で最後やで。乗るん?乗らんの?」

 こうなったら乗るしかない。なんとアタシは開場前のポートピアランドのジェットコースターに乗ることになったのです。
 たぶん乗っていたのはアタシひとりだけだったはずです。後にも先にも他の人が誰も乗っていない、たったひとりでジェットコースターを乗ったことなどあるわけがない。だから記憶力が著しく悪いアタシでも憶えているんです。
 ジェットコースターは怖かったかといえば、そこはあんまり憶えてない。けど乗ってる間ずっと「自分は特別なことをしてる」という充実感が凄かった。

 実はそれ以降、ただの一度もポートピアランドに行ってない。つまりカネを払って入場したことがなかった。んでついに2006年に閉業してしまった。んで今はその跡地にIKEAが出来ています。
 2019年に神戸に舞い戻ってから、もう幾度となくここのIKEAには行ったけど、行く度にあの時の、誰も乗ってない、たったひとりのジェットコースター事件を思い出します。
 楽しかった記憶だけでいえばはるかに宝塚ファミリーランドの方が強いのです。実際、宝塚ファミリーランドがなくなると知った時は相当ショックを受けました。
 ポートピアランドは宝塚ファミリーランドのショックとは違います。

 だからといって、なくなっても何とも思わん、とは違うわけでね。子供の頃の記憶って、それも小学生でも中学生でもない、その境目ってのがまた、良い感じに冷凍保存されているような気もするわけで。

イメージではポートピアランドがあったのはもっと海のキワだったんだけど、跡地に出来たIKEAに行くと別にキワではないんですよね。
あれ、拡張工事で広がったからなのか?どうもその辺も調査しないと。




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