ルックバック平成
FirstUPDATE2020.3.27
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 このエントリでは平成時代を総括っつーかいろいろ振り返ろうと思うのですが、何しろ平成は30年ちょっともある。んなもん、まともにやろうとしたら詳細な年表が必要になるし、変に網羅的になって絶対つまらないものになるに決まってる。
 だからちょっと作戦を立ててみました。

 いろいろ策を練ってる最中、そういや、みたいな感じで思い出してね、たしかYouTubeに平成初期に撮影されたドキュメンタリーというかスナップビデオみたいな映像がアップされたことがあったよな、と。
 しかもどうもこれ、違法コンテンツじゃないみたいでね、ならばこの際、この動画をサカナにしてね、アタシなりにウダウダ書くのが一番平成について書けるんじゃないかと思いついたのです。
 ちなみにこの動画のタイトルは「1992年の東京の日常風景」。ま、YouTubeには個人で撮影した当時の映像(おそらく8ミリビデオで撮影したと思われる)ものもいろいろアップされていますが、「1992年の東京の日常風景」がスゴイっつーかそれらの個人撮影の動画と一線を画すのは、何とハイビジョン撮影というところです。
 きわめて鮮明なハイビジョンでの撮影のため、昔の映像を鑑賞した時にどうしてもついて回るノスタルジーから切り離されて、純粋かつ客観的に今と平成初期の比較が出来る。
 だったらこれを題材にして書いてみようと。

 ただし、あくまでこの映像に切り取られているのは<1992年>の<東京>の姿です。つまり平成という時代のキーワードにされやすい「阪神大震災」も「地下鉄サリン事件」も「世紀末」も「インターネット」も「リーマンショック」も「東日本大震災」も「ケータイ」も「スマホ」も「SNS」も入っていないことになる。
 でも、んな社会現象にまでなったことはいくらでも調べることが出来る。それをこんな個人サイトで、たいした独自視点もないままあーだこーだ言っても面白いわけがありません。
 それよりもまだ昭和の残り香があった、そして平成という時代がどうなっていくかもわからなかった1992年=平成4年の、わずか12分ちょっとの映像から、今につながってることと、逆につながらなかったことを見出していくことは、少なくとも網羅的なことよりは面白いと思うんです。
 まァ能書きはこれくらいにして、とにかく映像をご覧ください。一時期かなり話題になったのでご視聴済みの方もおられると思いますが、ここは四の五の言わずにもう一度見ていただきたい。

1992年の東京の日常風景

 ここからはこの駄文を読んでくださっている方が上記の映像をご覧になったという前提で、もうちょっとだけ能書きをたれさせていただきます。
 映像のはじめに「Good-Night TOKYO」とあるので、おそらくこれがこの映像の正式タイトルでしょう。なのでここからは「Good-Night TOKYO」と表記させていただく。
 軽く検索した限り、この映像はソニーがハイビジョン受像機の販売促進を目的に製作したもののようで、販売価格は何と60万円!高っ!
 このハイビジョンソフトウェアのシリーズは全部で71本ありますが、最高額は「四季の丘」の180万円。いくら当時は希少だったハイビジョン映像とはいえ、57分の映像に180万円は高すぎるよ。

 てな映像本編とあまり関係ないことを書かせてもらいましたが、これも時代がよく出ている。もちろん一緒には出来ないけど、今は手元にあるスマホでさえハイビジョンどころか4K動画が撮影出来る時代ですからね。
 1992年はそうじゃなかった。<たかが>ハイビジョンレベルでも、撮影にも編集にも莫大な費用が必要だった。だからそれが販売価格に跳ね返った。当然今より断然景気が良かったのも反映されているんだけど。
 というか、ここまで書いてみて思ったんだけど、これ、本当に「違法コンテンツではない」のか?だって元は60万円だよ?(当該動画のウォーターマークから判断するに、2000年代半ばにep055チャンネル(無料ハイビジョンチャンネル。2007年に消滅)で放送したものと推測される)
 まァいい。多少のグレートーンには目を瞑って話を進めます。

 んで、実際問題どうでしたか?いや「Good-Night TOKYO」をご覧になってみて。アタシもこの駄文を書くために数年ぶりに見てみたんだけど、予想外に面白みを感じてしまいました。
 まず映像のカット割りというか構成というか編集について述べさせていただきますが、意外と時代の変化を感じないな、と。おそらく今、NHKとかで同じようなドキュメンタリーを作っても、あとBSやスカパーでやってる半通販番組の「音楽のある風景」のイメージ映像と比較しても、あんまり変わったような感じがしない。
 結局「<時代>というものを対象物にする」限り、ああいう感じにするしかないんだろうな。そこに流行とかが入り込む余地はないし、下手に技法的な流行を取り入れたら逆に<時代>が見えなくなるんだろうなと思う。
 もちろん「Good-Night TOKYO」が下手な小細工をせずに、過不足なくオーソドックスに作っているってのもある。この時代にはすでに確立されていた<時代>の映し方のルールにちゃんと則って作ってあるというかね。

 それでは細かく見ていきます。ちなみに()内はタイムスタンプです。

 フェードインから、おそらく東京の高層ビルから撮影したと思われる映像に「Good-Night TOKYO」というタイトルが被さるのですが、バックの映像(ソニー製作なので中央におそらく御殿山にあったソニー旧本社ビルが据えられている)が夜景から日中に向かって素早く時間が流れる。つまりこれは今流行りのタイムラプス映像です。
 この始まり方からしてまず1992年に作られてたとは思えないわけで、タイムラプス映像を多用するユーチューバーは多いけど、あくまで手軽になったってだけで技法としてはオーソドックスなものだったってのがわかります。

 タイトルのテロップはあきらかにCGで製作されたものですが、あまりCGっぽさを強調してないのはこの時代には珍しいと思う。
 タイトルだけCGを使うってのは(おそらく予算面的な理由で)たしかにこの時代の流行りなのですが、せっかくカネをかけたんだからと強調したいからかどうなのか、如何にもなギラギラしたCGなんですよ。昔のテレビ番組を例に出すのは難しいけど、1991年に公開された「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」のタイトルとかテラッテラのギラッギラなCGだもん。
 しかし「Good-Night TOKYO」はナチュラルな感じで作ってあるのは好感が持てる。というか「これは<残るもの>だから下手に技法的な時代感は入れない」という明確な意思が読み取れます。

 続いて流れるのは早朝の風景ですが、鉄オタならば新幹線が待機している車庫の映像(0:58)に目を惹かれるはずです。アタシはまったく詳しくないのでどれがどの型番かはわからないけど、それでも2008年に引退した0形(これはさすがにわかる)が映り込んでいるのがウレシイ。

 お次は魚市場のシーン(1:02)で、これは確実に築地ですね。アタシの中では魚市場と言えばこのイメージだけど、今もこういう感じのセリをやってるんだろうか。ま、ただ魚市場が築地から豊洲に移転した現在から見ると、当時を知っておられる方には希少な映像かもしれません。

 トラックが高速を走る映像、都バスが車庫から出て行く映像に続き車載カメラから撮影したシーン(1:36)が出てきますが、これも現今のユーチューバーが好んで使う映像ですね。
 ただし当時は、当たり前だけどアクションカムなんてものはなく、かなり大変な撮影だったのではないかと思われます。だから、かはわからないけど、実に短くしか使われていません。

 次に東京タワーが映るシーン(1:42)がありますが、これはこの時代だからっつーか1960~2000年代ならば東京のシンボルとして東京タワーを映し込むのは当然です。言うまでもなく今ならスカイツリーを映しているはずです。

 ここからは再び早朝の風景が続きます。
 この後の新聞配達のシーン(1:56)はたぶん今も同じのはずです。もうすでにバイクでの配達もあったけど自転車での配達も普通で、今も完全にバイクに切り替わったってわけでもない。さすがに有料の新聞を徒歩でってのは見かけなくなったけどさ。
 場所は、詳しくはわからないけど渋谷区のどこかですね。

 そしてラジオ体操(2:06)。いやぁ、まさかラジオ体操という<文化>が絶滅寸前になるとは思ってなかった。どうも近年問題になってる「騒音にたいしての過度な反応」で抗議からの流れらしいけど、ラジオ体操ってもんに誰も興味を示さなくなったのならともかく、一部の人間のせいで(あえて<せいで>と書く)早朝に子供が集まってラジオ体操をするって文化がなくなるのはどうなのよ。騒音たって夏休みの期間だけじゃん。馬鹿馬鹿しい。
 ま、それはともかく、子供たちの服装の垢抜けないことよ。バブル直後だからまだまだ景気は良かったはずなのに、何というか、想像以上に小汚い。もちろん早朝のラジオ体操の時間からパリッとした格好をする必要はないけどさ。

 んで飛行機の離陸(2:16)です。場所は間違いなく「国内線専用」だった頃の羽田空港。成田空港が出来て国内線専用になって、再び国際線ターミナルが出来て、成田は成田でLCC用のターミナルが出来たりしてね、今は何がなんだかよくわからん。

 続きましてJRになってそんなに間がない頃の駅風景(2:21)ですが、電車が総武線なのは確実として場所はどこだろう?
 しかしこの総武線の車両は懐かしい。つか単色の方がわかりやすいと思うんだけどねぇ。

 で、出ました。いきなり演出臭いシーンの登場です(2:24)。せっかくここまでドキュメンタリータッチで来ていたのに突然の演出モロバレはやはり違和感があります。
 たぶん「まだ変わりなく残る昭和的なひとコマ」を入れたかったんだろうから仕方ないっちゃ仕方ないけど、全体を通して見ると演出シーンだけ浮いてるのがもったいない。
 しかもあまり上手くいかなかったというか、せっかく演出してまで昭和の残存感を出したのに、平成が終わって令和になった今も、こうした木造の民家は普通に残ってるからね。結果、あんまり時代が出なくなっちゃってるのが惜しい。

 ここから通勤・通学風景が続きますが、渋谷のスクランブル歩道橋(2:42)が懐かしい。ってあんまり変わってはないけど、ここを見ると元・クレージーキャッツの石橋エータローの店があったことと、「ドリフターズですよ!全員突撃」(1969年、東宝)においてここで追っかけシーンがあったことを思い出します。ってぜんぜん1992年は関係ないか。

 んで突然の激動シーン(2:55)。ま、たんにカメラをズームインズームアウトしてるだけだけど。つまりは「ガチョーン!」と一緒。

 そして出ました。ある意味この映像のハイライトとも言えるコカ・コーラの自販機(3:26)。ただ自販機を映しただけなのに、これが非常に面白い。
 せっかくなので映ってる全部のドリンクを書いておきます。

コカ・コーラ(350ml)
コカ・コーラライト(350ml)
ダイエットコーク(350ml)
アクエリアス ネオ(350ml)
HI-Cスポーツドリンク(350ml)
ジョージア プレミアムブレンド(190ml)
HI-Cアップル(350ml)
アンバサ(350ml)
ベジータベータカロチン(不明、これのみ瓶)
紅茶花伝 ミルクティー(350ml)
ファンタグレープ(350ml)
紅茶花伝 レモンティー(350ml)
神葉 烏龍茶(350ml)
神葉 緑茶(350ml)
ジョージア コーヒーオリジナル(250ml)
ジョージア カフェラテプレミアム(190ml)
ジョージア テイスティコーヒー(190ml)
ジョージア ヨーロピアンブレンドコーヒー(250ml)
紅茶花伝 ダージリンティー(350ml)
神葉 麦茶(350ml)

 価格はすべて110円です。
 こうして見ればわかるように、ベジータベータカロチンが瓶なのを除いてすべて缶であり、今では完全に主流となったペットボトルタイプのものがありません。
 ただしこれでも昭和末期とは変わったところもあって、昭和の頃までプルトップはすべてプルタブ式というタブがパカッと外れるタイプだったんです。
 今は、というか平成に入った頃にはステイオンタイプというタブが取れないタイプになりましたが、これも「タブが飲料に浸かるってのは衛生的に」みたいな批判があったんだよね。
 って文章で説明するのは難しいんで画像を見てくださいませ。

 ここからは<今と違う>箇所を見つけるのが大変なシーンが続きます。ま、そりゃ服装とか髪型は違うけどさ。

 そんな中、これも今とそんなに違うわけじゃないけど、スーパーの開店前のシーン(4:04)はちょっと面白い。ただ何度も言うけど時代性はほとんどないし、どうもエンドクレジットを見る限り、スーパーではなく西武百貨店池袋店の地下の食料品売り場みたいですね。

 その後、これはこの時代、じゃなくてもいいけど、2000年代までに秋葉原に行ったことがある方なら一発でどこかがわかるはずです。(4:09)

 続いてのお医者さんのシーンは後ろのカレンダーに注目(4:15)。そう、今はなき大和銀行のカレンダーです。大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件の3年前。
 そういや平成はずいぶん銀行の統廃合があったなぁ。もう大手で昔の名前でやってるのなんてないんじゃないの?

 お、渋谷のスクランブル交差点じゃん(4:29)。ってあの巨大モニターもTSUTAYAもないけどこれもすぐにわかる。
 ああ、東海銀行もなくなったな。ついでに渋谷宝塚も。

 その次。給食が変わったかはね、何しろ何年も学校ってもんに行ってないからわからないけど、お次の親子丼で有名な人形町の玉ひで(4:52)は嬉しい!かつてアタシはここから徒歩3分ほどの場所に住んでたからね。って玉ひでには一回も行ったことないや。

 食事ならび昼休憩はつまらないし、はとバスもねぇ。ま、その後の靴磨き(5:44)は完全になくなったな。場所は新宿駅か?

 さあ、完璧に平成らしい映像が出てきました。そう、公衆電話っつーか電話ボックスが立ち並ぶ映像が(5:55)。場所はたぶん渋谷。もちろん電話ボックス自体は昭和からあったけど、これは当時最新のテレホンカード式公衆電話。よく見ると電話ボックス内にテレホンカードの自販機がありますね。これも平成ならでは。
 令和になった今、もうこんな光景は完全に消滅した。別に喜ばしくも悲しくもないけどさ。
 んで電話ボックスのアップ。なんと中からタバコを咥えたサラリーマンが!もうこれも絶対見れない光景でしょう。
 いやさ、喫煙云々は本当にうるさくなったね。もういいっちゃいいけど、やっぱ寂しいわ。

 で、これはデジパチってヤツですな(6:25)。パーラーキング?こんな機種、知らねえや。でも西陣ってパチンコメーカーは知ってる。昔パチンコ屋のチラシ作ってたから。
 ここからは、結果的にだけど、ぜんぜん時代性のないシーンが続く。夕日に時代性もヘッタクレもあるわけがないわけで。

 やっと、というか、作りかけの、これはたぶんレインボーブリッジですな、が花火とともに出てきます(9:41)。だから何だと言われても困るけど、レインボーブリッジと言えばお台場、お台場と言えばフジテレビなわけでして、平成の半ばくらいまで絶好調だったフジテレビがまさかあそこまで凋落するとはね。

 ついにお出ましになりました。バブルの残骸とも言えるディスコです(10:38)。時期的におそらくジュリアナかな?しかしここまで時代の象徴っぽいディスコを出さなかったのはすごい。夜のシーンまでとっておこうってことなんだろうけど、シーンも短いし。
 唯一この映像からサラリーマンがスーツ姿のまま踊ってたってのわかるくらいか。

 次の残業らしきシーン(10:49)。これも演出臭いけど、だってサラリーマンの後ろにあるのがMac(Macintoshと書いた方が気分が出る)ですよ。こんな普通のオフィスにMacがあるか?まだDOS/V夜明け前だけど、この頃はPC-9801シリーズ(互換機含む)全盛期でしょうが。
 あとはひたすらエンディングまで見どころなし。あ、あくまで<時代性が出てる>って意味での見どころね。


 如何でしたでしょうか。なるべく令和との比較、つまり今と比べて変わったところだけを抽出したつもりだけど、個人的には製作者が意図してない時代の表出が面白かった。
 その代表が大和銀行のカレンダーでしょう。だからね、取り上げなかったけど、兜町のシーンも山一証券をフィーチャーしてたらもっと面白かったと思う。あとは自動車電話を取り上げるとか、コンビニやレンタルビデオ屋なんかもね。
 でもそれは無理ですよ。未来なんて予測出来るわけがない。大和銀行のカレンダーなんて奇跡的な偶然なんだから。

 結局はたった25年後も予測出来ないってのがよーくわかった。んなもん、たぶん今、令和の次の時代見据えて今のドキュメンタリーを作っても同じだと思うし。
 そう考えたらレビュー系ユーチューバーの役割は大きい。きっと、彼らの動画こそ、令和初期の空気の詰め合わせとして最高のものになると思うよ。マジで。

さすがに「あとがき」まで読んでくださってる方はYouTubeの映像もご覧になられたと思いますが、こういうのは貴重だなぁ。と同時に「可能な限り高画質である方が良い」とも思う。やっぱ、これもハイビジョンで撮影してるからこそ価値があると思うわけで。




@Classic #ルックバック #ビデオデッキ #1990年代 #バブル 単ページ GoodNightTOKYO ソニー ハイビジョン 新幹線 1992年 自動販売機 大和銀行 公衆電話 たばこ ディスコ







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