長男はキツいよ
FirstUPDATE2019.9.17
@Scribble #Scribble2019 #人間関係 #ネガティブ #アタクシ事 単ページ 長男 最後の晩餐 一家心中 カジサック

何度かYouTubeでカジサックのチャンネルを見てるって書いたけど、どうも、特定の種類の動画を見ると、何とも言えない気持ちになるんですよ。

カジサックチャンネルは梶原本人だけでなく家族も当たり前のように顔出しで出演しています。ここは今どき珍しい子沢山家族で4人の子供がいるけど、上は小学生高学年から下は3歳児まで(しかも嫁のお腹の中にもうひとりいるらしいし)、別に嫌がる感じでもなく普通に出ているのはある意味すごい。
いや、それはいいんです。でもアタシは家族が出てる動画を見るとね、ものすごく微妙な感情が芽生えるんですよ。

っつっても、アタシはこのトシまで独身で子供もいないのに!なんてつまらないことではない。そうじゃなくて自分の子供の頃を思い出すんですね。
カジサック家の一番上の子は男の子です。つまり長男。ちなみにアタシも長男。問題はここでね。
この長男の細かい動きを見てると、本当に身が締め付けられそうになる。周りを徹底的に見渡して、極力自分を抑えて、発言する時には他の兄弟よりも<しっかりしたこと>を言わなきゃいけない。

これは動画を撮ってるとかどうとか関係ないんですよ。長男である限りは常に、どんな時でも、長男としての役割を果たさなきゃいけない。
それがね、同じ長男のアタシには手に取るようにわかる。言いたいことがあるだろうな、みたいな感じで喋り始めても、他の兄弟が喋り始めたら途中で止めるし、誰も喋らなければとくに喋ることがなくても喋らなきゃいけない。

つまり兄弟でいる時は常時無理をしてるんです。自分自身を出しちゃいけないことと同じと言い切ってもいい。
なのに周りからは「年長パワーで好き勝手やってる」なんて思われる。
冗談じゃない。そう思う輩は是非カジサックチャンネルを見て欲しい。いや動画の面白さ云々関係なく、とにかく長男の言動だけに注力して見て欲しい。他の兄弟に比べてどれほどのプレッシャーがあるのか嫌でもわかります。

思えばアタシも年長パワーで押し切った記憶がほとんどない。ま、都合の悪いことを忘れている可能性はあるけど、アタシの中で「家族全員で行動する」イコール「自分を押し殺す」ことだった記憶しかありません。
家族全員アンド家族のみで旅行したことはたった2回しかありません。一度目が白浜、二度目が信楽です。アタシは神戸の人間なのでどちらも近場っちゃ近場です。今みたいに「海外ででもなければ旅行って感じがしない」のと比べたら旅行とは言えないレベルなのかもしれない。

なのにアタシは家族旅行の前にはものすごく緊張していた。もちろん楽しみが高じてじゃない。旅行なんだから常に家族で一組の行動をしなきゃいけない、つまりそれは「この旅行中はずっと、自分を押し殺さなきゃいけない」ってことだから。
もともとアタシは記憶力が悪いけど、だからこれらの家族旅行で「楽しかった」記憶が一切ないんです。にもかかわらず「ひたすら我慢していた」のは何故かよく憶えている。

小学生高学年の頃には両親の夫婦仲は冷え切っていたのですが、これは両親の離婚直前に近い時期だったから小学6年の時じゃなかったかと思う。
何故かその日、家族で外食に行くことになった。もうその頃は父親はめったに家に帰ってこなくなり、たまに夜遅く帰ってきても夜中に母親と怒鳴り合うのが常態化していました。
なのにその日は妙に上機嫌で、家族全員で近くの中華料理屋に行くことになったんです。

正直アタシは気味が悪かった。というのも父親だけが不自然に上機嫌で、母親の表情が異様に硬かったんです。それを見て、これは何かあるに違いない、と。
アタシは何故かその時「一家心中」というワードが頭に浮かんだ。たぶんそーゆー事件があってニュースでやってたんだろうね。
まさか、そんな。でも、何でまた、家族<だけ>で外食なんだ、と。当時はまだそんな言葉というか慣用句は知らなかったけど、これはまさしく「最後の晩餐」ではないか!

中華料理屋に着きました。気味が悪いほど上機嫌だったはずの父親はビールを飲むばかりで何も喋らない。母親は相変わらず表情を硬くしている。妹や弟も母親の様子を察したのか妙におとなしい。
不穏当というか、とにかく異様に重い空気が流れた。しかし、そこでまた<長男である>というアタシの本質が顔を出すんです。

長男なんだから、この場を何とかしなきゃいけない。アタシは必死だった。そりゃあ今考えたら一家心中なんてあり得ないんだけど、何とか<長男として>それだけは食い止めなきゃいけない。
アタシは必死に冗談を言い続けた。まったく、面白くもおかしくもない低レベルな冗談だったと思う。でもほんの少しでも、この空気を和まそうと、それこそ冗談ではなく死にものぐるいだったんです。

ま、当然、今もアタシはピンピンしているわけで、つまりアタシの邪推はただの杞憂だったってことなのですが、ああ良かったとは言い切れない。だってアタシの長男としての自覚からくる、無意味かもしれないけど必死の抵抗は、その後もずっとついて回ったものだから。
長男には「今の本当の感情」なんて必要ないんです。マジで。んなことよりも「今、求められていること」を、死にものぐるいでも遂行することの方がはるかに大事なんだってこの時わかったんだから。

まァね、そんなことを考えながら今現在生きてるわけじゃないけど、たぶんこんなことは一人っ子には死ぬまで理解出来ないと思うし、兄弟がいっぱいいた方が寂しくなくていい、という考えにも同調出来ない。
ものすごくトシが離れていたらいいかもしれないけど、たかが2歳や3歳違う程度の兄弟なんか、結局は「自分を押し殺すための存在」にしかならないと思う。
だからといって、一人っ子ってのも考えものだな、と思う。ま、これは悪口になりそうなんで書かないけど、仮に長男じゃなくても兄弟がいる人の方が<我慢>に慣れてると思うしさ。

我慢することが良いのかどうかではなくね、そうやって生きてきたんだから絶対急に一人っ子のように考えて行動する、なんて不可能なんですよね。







Copyright © 2003 yabunira. All rights reserved.