ひとコマデベロップ
FirstUPDATE2019.8.15
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 アタシがPhotoshopなる魔法のソフトを使えるようになったのは1990年代後半です。
 たしかに魔法のソフトには違いないんだけど、残念ながらそこまでPhotoshopに淫しているわけではない。個人的にはIllustratorの方が圧倒的に好きで、Photoshopはね、いまだにどこか「しかたなく使ってる」みたいな感覚があるんですよ。

 さてさて、今の時代、写真を不特定多数の人に見てもらいたければInstagramを使うのが常套だと思うし、もちろんTwitterやFacebookでも写真をアップ出来るけど、「写真<だけ>を見てもらう」となると余分な機能が多すぎる。それらのSNSは「写真<も>アップ出来る」って感じでしょう。
 アタシも一応Instagramのアカウントは持ってるし、たまにアップしたりもしますが、基本的には友人や一部気に入った人のを見る専用に近い。
 んで気づいたんだけど、Instagramの写真とTwitterの写真は完全に方向性が違うなァと。

 たぶん、写真、と聞いて何となくイメージ出来るのがアップされてるのはInstagramの方です。
 そもそも写真とは何ぞや、みたいな話をしたいわけじゃないし、んなもんアタシ如きが語れるわけもない。
 ただね、スナップ写真を除く商業的に使われる写真の大多数は「写真としての美しさ」が求められている。迫力だったり感動だったりも、結局「写真としての美しさ」がないと成立しないんです。
 つまりはどれだけ良いアングルから撮ろうが、最高の瞬間を切り取ろうが、ブレブレのボケボケの写真には一銭の価値もないということになる。
 Instagramには多種多様の写真がアップされてるけど、「写真としての美しさ」からははみ出していない。もちろん「インスタ風加工」なんて言葉があるように、Instagramで好まれる色調みたいなのはあるんだけど、あれだってスマホなんかで見た時にどれだけ美しく(っぽく)見えるかの方法としてああいうのがスタンダードになったんだろうしね。

 一方Twitterの写真、この場合<写真>というより<画像>と言った方が良い気がするけど、あんまり「写真としての美しさ」は関係ないものが多いような気がするんです。
 何というか「魅せる」というよりは「見せる」って感じと言えばいいのか、とにかく「対象物が何か」が重要な気がする。
 何で「写真としての美しさ」を必要としてないかと言えば、美しさがなくても成立する、つまり感動とか迫力と違うベクトルを志しているからなんじゃないかと。
 ものすごく回りくどい書き方をしてしまいましたが、Twitterの写真って「笑ってもらえればそれでいていい」みたいなのが多いんですよ。

 笑ってもらうための写真には美しさはほとんど求められていない。そりゃ中には「美しくなければ笑いが成立しない」なんてものも皆無じゃないけど、それよりも、笑いの対象となるものがどれだけはっきり写っているかが勝負なわけで、多少画像が荒くても色味がメチャクチャでも、評価とはまったく関係ないと言い切れる。つか写真としての良し悪しと笑える笑えないはほぼ無関係だと思う。
 この源流、厳密にはまったく源流ではないけど、写真を使って笑わせるハシリは「VOW」でしょう。いや赤瀬川原平の「超芸術トマソン」の方が先だけど、トマソンをさらに印刷物など対象物を大幅に拡大して「笑い全振り」にしたのがVOWって感じなので、やっぱりハシリってことで良いんじゃないかと。

 VOWの与えた影響は計り知れない。
 いやね、これは<笑い>ということで言えばきわめてオフビートな笑いで、ダウンタウンの松本人志に通じるような「目線をズラした笑い」に属すると思う。
 何気ない、一見そこまで奇異でないものでも、見方を変えれば笑いにつながる。もちろん中にはわかりやすいものもあったけど、それでも大衆的なものではなく、かといってマニアックでもなく、さりとて深夜ラジオ的な内輪受けの笑いでもない。まだダウンタウンがブレイク寸前という時期ってのを鑑みれば、相当類を見ない類いの笑いだったのです。

 というか、もうちょっとVOWの説明をちゃんとやっておきます。
 VOWとは「宝島」という雑誌の読者投稿コーナー(ヴォイス・オブ・ワンダーランド=宝島、の略)であり、当初は普通の読者投稿コーナーだったらしい。
 それがいつの間にか、街で見かけたヘンなモノ、の写真が中心になった。
 アタシが大学生当時の「宝島」はバンド雑誌で、ま、バンドったってロックバンドが中心なのでロックに興味がないアタシには本来関係のない雑誌なんだけど、とにかくVOWが面白すぎて毎月購入していました。
 つまりそれほどVOWにハマった。だから単行本も途中までは全部買ってた。ところがあいにく、何故か手元には「VOW 5」しかない。だから間違っても「傑作選」にはなりっこない。つかあくまで「こんな感じでした」ってサンプルであって「やぶにらのVOW大全」ではないのでこれでいいのです。
 あ、VOWの値打ちはコメントありきなのでなるべくコメントを含めた画像にしています。

遠いなぁ。どうせならもっと近寄って撮りゃいいのに。

こういうシンプルなのは実はVOWでは珍しい。

これは純粋に面白いね。良い惹句。

なんJなんかの画像スレでも定番の誤植だけど、誤植だけはいくら完全DTPの時代になってもなくならんね。と、境目世代のアタシが言ってみる。

古田2連発。こういう年俸間違い系誤植もなんJのド定番。

パチモン2つ。もうキャラクター物のパチモンも下火になったと思いきや、昨今は格子柄グッズが溢れてるもんね。しかも格子柄なんて規制しようがないし、集英社が裁判を起こしたみたいだけど退けられたし。当たり前だけど。

実はこれのツボは「全国コンクール入賞」ってところ。何のコンクール?

コメントでもあるように暗すぎる。そりゃこれはスキャンしたものだけど、実物の紙面でもよくわからんし、何よりこれを掲載するのはすごいわ。
先ほど『笑いの対象となるものがどれだけはっきり写っているかが勝負』って書いたけど、それすら超越してるんだもんな。

この手の教本を作ってるのはどういう人なんだろうか、ずっと気になってる。

これは単純に懐かしいから入れてんけどな。ここ、めっさ怖かってん。とくに電車が停車やなくて通過する時の風圧がごっついから死ぬほど怖いねん。あ、もう改装されてだいぶプラットフォームの幅、広なったでー。
うん、神戸ネタだから関西弁で書いたけど、ムズいわ。

 Me too!

誤植の一種だけど、これも暗いなぁ。当時だからスキャンじゃなくて印刷物をさらに写真に撮ったんだろうけど、もうちょい補正出来ないのかね。無理だね。


☆ オマケ

これはみうらじゅんが「VOW MEGA~MIX!!?」でやった「変読」ってコーナーから。
中でも一番好きなのが「地井武男」の「ジープ男」っての。たしか「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」だったかな、で、リリー・フランキーが地井武男が出てくるたびに、このお古いネタの「ジープ男」を連呼してたのが可笑しかった。


 話を戻します。
 こんな感じでね、VOWには山ほど写真が載ってるけど、Instagram的観点から美しいと思える写真は一枚もない。はっきり言えば写真としての評価はゼロの汚い写真しか載っていません。
 でもそれで何の問題もない。つまりはTwitterの写真は完全にVOWの延長線ではないかとね。

 さらに思考を巡らすと、もしかしたらこれはひとコマ漫画の延長線上なんじゃないかね、と。
 一瞬を切り取って笑いを誘発する、それは漫画がもっとも得意とすることであり、何なら一瞬じゃなくても時間を圧縮して「一瞬ということにして、ひとコマですべてを表現する」というのも漫画だからこそ可能なわけです。
 正直ひとコマ漫画の流れを探るのは難しい。いや無理と言っていい。古代の壁画だって、あまたある著名な絵画だって、芸術云々とかさらさら関係なく、本当は「笑ってもらえればそれでいい」みたいな感覚で描かれたのかもしれないし。

 しかしこれらは誰でも出来ることではありませんでした。やっぱり、最低限は絵が描けないと話にならない。さっき「対象物が何かが重要」と書いたけど、下手すぎる絵では肝心の対象物がわからなくなるわけで、それでは笑ってもらうどころか理解さえしてもらえない。
 写真の時代になってもそこまで変わったってこともなく、まずカメラが高い、フィルムが高い、現像代が高い。常にカメラを持ち歩いてるわけじゃないし、撮影から閲覧までに時間がかかる。つまりどう考えても<気軽>という言葉からは程遠かった。
 VOWなんてね、当時は「よくそんな珍奇なもんを見つけたな」ではなく「よくそのタイミングでカメラを持ってたな」とか「よくそんなくだらないもののためにフィルムのコマを使ったな」って感情の方が大きかったくらいで。

 それがケータイにカメラが付くようになって一気に変わった。写真を撮るというハードルが恐ろしく下がった。くだらないものでも遠慮なくシャッターを切れるようになった。
 もう絵が描ける必要はない。高価な機材(カメラ)も必要ない。ただ、日常的に当たり前に持ち歩いているケータイ(→スマホ)さえあれば「笑ってもらえればそれでいい」という表現が出来るようになったんだから。
 しかもVOWのような「対象物がはっきり写ってさえいれば写真としての美しさは必要ない」ものが被写体の場合、初期のカメラ付きケータイの画質でも十分ですからね。
 そう考えればっつーか、進化論みたいな観点で言えば、インスタ的な「写真の美しさありき」なものよりもTwitter的な「笑ってもらえればそれでいい写真」の方が発展の仕方として面白い。
 ひとコマでいろんなことを表現するのは、やっぱ相当面白いことだと思うんですよ。しかも<元>が自分で撮影したものでなくてもいいんだし、何なら加工してあってもいい。加工で笑えるようにしたものっていっぱいあるしさ。

 だからね、せっかくアタシもPhotoshopが使えるんだから、いっちょうご自慢の画像加工で・・・と思うんだけど、アタシはやらない。しんどいもん。

まとめサイトで画像スレのまとめがあると、いまだについつい見てしまいます。
っても重複というか、結局は同じ画像だらけなのは、それこそVOWのような投稿コーナーと違って「新しいモノを探し出して掲載を勝ち取る」みたいな競争心がないから、どうしても新しいモノが見つかりづらい側面があります。
画像スレまとめで好きなのは「ヨシの根周辺にいたシジミ」と「好きな食べ物 大野雄大(中日)」と「マスコットキャラクター「こくぴょん」だぴょん!」だけど(ここには貼らないけど、各ワードで検索したら該当画像が出てきます)、これらさえあまりにも何度も見たから、さすがに飽きた。
じゃあお前が探せよって話ですが、もうこればっかりは運だからねぇ。




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