いきなり引用から始まりますが
とんでもない。その時点でかなりの有名人です。おそらく監督の友人かなんかで特別出演みたいな感じだったんでしょうね。ちなみに僕の役名が「客H」で、その人は「客I」だったんで、僕の方が格上だと言いふらしてました(笑)(2013年1月20日更新「アタシがはじめて映画に出た日」/現注・当該エントリはScribbleでオミットしてますがココにリライトしたものを置いています)
これはアタシがピンク映画のエキストラとして出演した時のことを書いたエントリの一節です。
この時はボカして書いたけど、この映画で<客I>を演じた俳優は田口トモロヲだったんです。
田口トモロヲ?そう、あの「プロジェクトX」でナレーションをつとめた、あの田口トモロヲです。
これはWikipediaで知ったんだけど、この人元は漫画家だったらしい。しかしアタシが知ってるのは役者になってからで、塚本晋也監督の「鉄男」で一気に注目俳優に仲間入りしました。
ちなみに上記ピンク映画が作られたのは1990年代前半であり、「鉄男」は1989年。つまり田口トモロヲはすでにかなりの知名度があったわけでして。
アタシが最初に田口トモロヲを認識したのは「シャボン玉が消えた日」というスペシャルドラマでした。
タイトルからも何となくイメージ出来ると思いますが、これは伝説的バラエティ番組「シャボン玉ホリデー」の裏側を描いたドラマで、「シャボン玉ホリデー」の代表的な作家である青島幸男(演・萩原流行)とその弟子でやがて優秀なコント作家になる河野洋(演・永島敏行)の関係が縦軸になっていました。
クレージーキャッツの<リーダー>であるハナ肇を演じたのはコント赤信号の<リーダー>だった渡辺正行、谷啓役は小倉久寛(これは意外と良かった)、犬塚弘は嶋田久作が演じていましたが、これ、植木等役を所ジョージが演じる予定だったんです。事実ドラマの製作が発表された時は「所ジョージが植木等を演じる」と報じられていた。
ところが急に所ジョージが降板した。一説では台本を読んで断ったらしいけど、本当のところは知らない。
そこで代役に抜擢されたのが「鉄男」で注目株になっていた田口トモロヲだったんです。
これも知らなかったんだけど、Wikipediaによれば田口トモロヲは植木等を敬愛していたらしい。だから本人的には良かったかもしれないけど、アタシ的には、やっぱ所ジョージでやって欲しかったなぁと。
それはともかく、以降、田口トモロヲは<アングラ系役者>として地味に活動していましたが(そうはいっても別にアングラ劇団出身でもないし、アングラ志向みたいなのもなかったと思うけど)、「プロジェクトX」のナレーションを担当したことで檜舞台に現れた、みたいになった。
ま、それはいいんです。今回こう言った文章を書こうと思ったのは、田口トモロヲ監督作品にかなりぶっ飛んだからなんですよ。
田口トモロヲが監督をつとめたのは計3本。最新作こそ違いますが、一作目と二作目はいずれもみうらじゅん原作で、どちらも完全な青春映画になっています。
正直ね、今くらい真っ当な青春映画を作りづらい時代もないと思う。つか時代背景抜きに青春映画を真正面から観れる層が相当限られているはずです。
にもかかわらず、どちらも<正調>で描いているのがすごい。つまり小賢しい斜めからの視点を抜いているんですよ。
一作目の「アイデン&ティティ」はロック映画としての要素も強いんだけど、これほどキチンとした青春ロック映画は観たことがない。何度も言うようにアタシはロックには興味ないんだけど、この映画にはロックの良さが全部抽出されているような気がする。
以前アタシは「ロック的思想」ってエントリを書きました(現注・Scribbleではオミット)。まァたしかにあれだけ読めばまるでロックを馬鹿にしてるように思えるかもしれないけど、好みでないだけでロックはロックとして素晴らしい。つかこの映画を観てもらえればアタシが本当に言いたいことがわかるはずです。
二作目の「色即ぜねれいしょん」はさらに<正調>度合いを増しており、見事な<青春童貞映画>になっている。つか「色即ぜねれいしょん」を観れば田口トモロヲの監督としての力量が嫌でもわかります。
一番感心したのはキャンプファイヤーのシーンで主人公が空気を読めずにフリーセックスがどうたらと語り始めるところです。
こういう「登場人物の行動があまりにも青臭くて見てられない」シーンってのはね、青春映画には必須なのですが、しつこくやられると見てる側が恥ずかしくなりすぎて見るのを止めてしまうんですよ。
「色即ぜねれいしょん」でのこのシーンでも案の定主人公は笑い者になるのですが、「笑われる主人公」の描写の後でサッと切り替えている。つまり恥をかいた主人公の心情描写をしてないんです。
そんなしつこく描かなくてもわかるでしょ?というね、観客への信頼が見てて気持ちがいいんですよ。これが出来る監督って意外といないから。
漫画家からスタートして、ミュージシャン、役者、ナレーターといろんなことをこなしてきた田口トモロヲですが、もしかしたら資質が一番高いのは映画監督かもしれない。
良い意味で役者出身監督にありがちな力みがない。下手な作家性なんてもんにこだわってないところは本当に好感が持てます。作家性なんてくだらないことよりも、どうやったら面白い映画になるのかを俯瞰で見れる人とかなかなかいないんだから。
そういや、「ひよっこ」の時にアタシが褒めた峯田和伸の役者としての才能を発掘したのも田口トモロヲなんだよね。うーん、やっぱそっちの方が才能あるよなぁ。