屯鶴峯。ドンヅルボー、と読みます。文字でなら普通だけど、音で聞くと何ともユーモラスな響きですよね。
検索すれば屯鶴峯がどんなところなのかはわかると思いますが、まァ誰も検索してまで知ろうとはしないと勝手に推測して、ざっくりと説明しておきます。
とは書いたものの、面倒なのでWikipediaから引用する。
屯鶴峯(どんづるぼう)は、奈良県香芝市にある奇岩群・奇勝。どんづる峯とも称す。二上山の火山活動により火山岩屑が沈積し、その後の隆起によって凝灰岩が露出し、1500万年間の風化・浸食を経て奇岩群となった標高約150mの岩山。サヌカイトやザクロ石閃緑岩などの岩石が産出する。県天然記念物であり、金剛生駒紀泉国定公園の見所の一つである。第二次世界大戦中に造られた複雑な防空壕があることでも知られる。
この<屯鶴峯>という漢字が当て字かどうかはわからないけど、あまりにもイメージにピッタリの名前です。
真っ白い岩肌が続く山並みの名前として「ドンヅルボー」という<音>はしっくりきすぎていて、屯鶴峯の存在を知らずとも、そして先のWikipediaの説明を読まなくても、何となくそーゆー景色が頭に浮かぶんじゃないかね。
この奇勝にアタシは何度か行ったことがあります。すべて大学時代の話ですが、比較的大学から近い場所にあったもんで。
たしかに初見ではビックリする場所ではあるんだけど、そう何度も行って面白いもんじゃない。けど、何だか妙に楽しくて、誰かが「おい、屯鶴峯行こか?」と言い出したらわりと無条件に賛成していました。
その日も友人たちと、意味もなく屯鶴峯に向かい、意味もなくはしゃいでいた。何しろ岩肌が滑りやすいので油断してたら転ぶんだけど、そんな場所で危険も顧みず遊ぶのが楽しかったんです。
ま、普通ならここで「うっかりして転んで大怪我をした」みたいな話になるんだろうけど、ならない。アタシは怪我で入院したことは一度もないし。
しかし怪我とは別の、切羽詰まった事態に追い込まれてしまったっつー。
こういう場所で、怪我以外で切羽詰まるなんて、もう便意以外ない。しかも<大>の方です。
<小>なら気にせずに、そこら辺でしますよ。何なら尿が流れる様を楽しんでいたかもしれない。
しかし<大>となると話が違う。男ばっかりの友人たちの前でチ○コを放り出してジョンジョロリーンとやるのは何でもないけど、ブリブリッてのは、これは恥ずかしい。ま、いわゆる「ウ◯コ座り」ってヤツですが、こんなポーズ、死んでも見られたくない。
洋式トイレなら普通に椅子に座る格好ですが、和式はもちろん、野糞でもウ◯コ座りで用をたすことになるわけです。
男性の場合、ウ◯コ座りをするのは<大>の時のみですが、女性は<大>だろうが<小>だろうが、和式ならば(そして野糞ならば)常にう◯こ座りが求められる。求められるって。
てなことを書いてたら、くだらないことを思い出したので、しばらく余談を。
あれはアタシが某出版社に勤めている時でしたか、そこのオフィスは古くて狭い。トイレも男女共用のものがひとつあるだけ。しかも和式です。
アタシは用をたそうとトイレに入ろうとした。鍵はかかってなかったので普通にドアが開いた。すると、あろうことか女性の営業の人が「ウ◯コ座り」で用をたしていたのです。つまり鍵をかけ忘れていた、と。
ああ、エラいもんを見てしまった。その女性の見栄えはけして悪くなかったので嫌なものを見たってのはなかったけど、トクしたって気持ちもない。
その人の気持ちを思うとね、いくら自分のミスとはいえ、やっぱりそういう姿を見られたのはショックだったろうし、アタシとしても今後この人と接しづらくなるな、と。
するとトイレから出てきた女性が笑顔で近づいてきた。
「これがホントのお尻合い(お知り合い)ですね!」
この果てしなくくだらない駄洒落にアタシがどれだけ救われたか。
話を戻します。
いくら便意をもよおそうが、場所が場所です。周りは岩肌が広がるだけで、トイレなんてあるわけがない。あったとしても20分は歩かなきゃいけない。でもそんなに持つわけがない。
これが木が生い茂っていて、とかなら、アタシも木陰に隠れてしますよ。でもそんなものさえはるか彼方に見えるだけです。
こうなったらしょうがない。岩陰に隠れてするしかない。
岩陰なんて木陰に比べると見つけられやすいし、とにかく手早くコトを済ませなきゃいけないから、我慢するだけして、隠れるなり、サッとパンツを下ろして、ドバッとやった。
ところがね、拭くものがないんです。ポケットティッシュなんて持ってきてなかったから。
前に「タモリ倶楽部」で「どの葉っぱが一番尻触りがいいか」なんてことをやってましたが、岩肌むき出しの屯鶴峯に葉っぱなんてありゃしない。
まごまごしてる暇はない。こうなりゃ最後の手段だ。アレで拭くしかない。
アレ、とはもちろんパンツです。
しかしあのパンツはその後どうなったのか。今もボロボロになって屯鶴峯をさまよっているんだろうかねぇ。