アタシの「近過去オタク」は筋金入りでして、まァ今までは「昭和オタク」って書いてたんだけど、どうしても昭和と入ると「三丁目の夕日」的光景しか浮かばないと思うので、あえて「近過去」としたわけでして。ま、今回の話はまんま「三丁目の夕日」の時代の話なのですが。
さてみなさん、自分の初恋を憶えておられますでしょうか。ってな感じで少々艶っぽい話なぞをしたいと思います。
アタシの場合で言えば、たしか中学3年の時だったと思う。別段、そこまで可愛い娘ではなかったんだけど、とある光景を見てしまったばっかりに、ある娘に強く感情移入してしまったのです。
たしか図書室で起こったことだったと思う。アタシは最初からっつーか事の起こりから見てたわけではないので、本当はどちらに非があるのかはわからないのですが、とにかくアタシが見た時点ではその娘と数名の女子が対立していたのです。
しかし多勢に無勢、あきらかにその娘はその場の空気に押されていました。やがて目に涙が溜まってきてね、もうよほど悔しかったのでしょう。ひとりの女子の頬っぺたをパチーン！と叩いた。そして泣きながら図書室を後にした。
「あの娘、生真面目すぎるねん。そんな堅苦しいこと言われたらやってられへんわ！」
叩かれた女子が、誰にともなくそう呟いた。
たしかにその娘は若干融通が利かないところがあって、女子の中では浮いていました。同じクラスではなかったので、どの程度浮いていたのかは把握してないんだけど、何となく煙たがられてるってのは空気でわかった。
どっちが悪いわけでもない。しかし集団生活の中ではこういうタイプの人間は浮いてしまう。アタシも似たようなところがあったので、その娘に強い感情移入をしてしまったのですね。
とにかく、あの、絶対に自分は悪くないはずなのに、何で誰も理解してくれないんだ、その悔しそうな、涙を溜めた姿は強烈に印象に残った。そして以降、何となくその娘のことを意識し出したのです。
ま、それから何の進展もありませんでしたが。告白したわけでもないしね。
そもそもアタシは中学生になっても、可愛いと思う同級生などひとりもいなかった。先の初恋の娘だって、可愛いという理由で意識し出したわけじゃないし。
かといって、当時のアイドルにも何の興味もなかった。だってみんな可愛くもなければ美人だとも思わなかったんだからしょうがないでしょうが。
そこだけ切り取るなら、アタシが極度のオクテだったってことになるんだろうけど、同級生や現役アイドルに限定しなければ、可愛い、もしくは美人だと思う芸能人はいました。
しかしそれらはすべて昔の人です。ファッションや髪型や化粧の問題もあるんだろうけど、アタシが中学生だった1980年代前半の人にそそられるものがなかったわけで。
アタシが当時、ああこれは可愛いと思っていたのが若い頃の吉永小百合とかです。あと「風と共に去りぬ」は子供には難解過ぎたけど、ヴィヴィアン・リィも綺麗だと思ったな。「オズの魔法使」のジュディー・ガーランドも可愛いと思ったし。
ま、3人とも今はまるで好きな顔ではない。何故だかわからないけど、途中で好みがまったく変わってしまったんですよね。（現注・ジュディー・ガーランドは「ミッキー・ルーニーの＜相方＞」としては今も好きですが）
話は急に変わりますが、たしか初恋の前後だったと思う。アタシが学校の廊下を歩いていると、信じられないくらい、若い頃の吉永小百合そっくりの娘が歩いてきた。
若い頃って言ってもいろいろあるけど、ちょうど「まぼろし探偵」の頃の吉永小百合です。とにかく、恐ろしいほど似ている。今の（つまり1980年代前半の）吉永小百合とはまるで違うけど、「まぼろし探偵」の頃の吉永小百合そのもの、と言っていいほど似ていた。
♪ あッかい帽子に黒マァスクゥ
黄色いマフラーなァびかせェて～
1959年に放送された「まぼろし探偵」の主題歌ですが、こんなの当時の中学生は誰も知らないですよ。まだ生まれる前の番組だし。
けどこの頃からすでに「近過去オタク」だったアタシは知っていた。その手の懐かし系スペシャル番組は全部、食い入るように見ていたので、いつの間にか覚えてしまったのです。
「まぼろし探偵」が紹介される時は必ず「あの吉永小百合が出ていた！」「えーっ！？」ってのがセットだったので、「まぼろし探偵」に登場した当時の吉永小百合も何度も見ていたわけで。
アタシが「吉永小百合に瓜二つ」だと思った娘は、誰からも吉永小百合に似ていると言われている気配がないようでした。ま、「まぼろし探偵」の頃の吉永小百合なんて知らないんだから言われるわけがないよな。
しかしこれは初恋とは違います。好きだなんだという感情は一切湧いてこなかった。
可愛いとか美人とか、そんなことは吹っ飛んでしまって、見るたびに「似てるなぁ」としか思わなくなっていたのです。
ただ面白いのは、あれから35年ほど経った今、初恋の女性と、この若い頃の吉永小百合瓜二つの女性、どちらに会ってみたいかと言えば、吉永小百合瓜二つの女性の方なんですよね。
いやもう、今現在、その後の吉永小百合とどれだけ似ているのか見比べたい、完全にそれだけ。吉永小百合ばりの美人になったのか、途中で枝分かれした感じで残念な方向に行ったのか。これが知りたい。
初恋の女性の方は、正直に言えば会いたくはないね。思い出は美しいままで、と言うし。それでも初恋だったのには違いないんだから、幸せならいいな、とは思いますが。
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