夢のない超特急
FirstUPDATE2018.10.2
@Scribble #Scribble2018 #公共交通機関 #ネガティブ 単ページ リニアモーターカー 高度経済成長 衰退

何だか名前を聞くだけで腹がたつワードに「リニアモーターカー」があります。

研究が始まったのが1961年、正式に開発を表明したのが1969年らしいけど、1969年と言えばアタシが生まれた翌年です。アタシが今年で大台だから、つまりもう50年も研究と実験をやってるってことになるわけでして。(現注・このエントリの「50年」とかはあくまで2018年基準でです)
50年ですよ50年。半世紀ですよ半世紀。これだけ長い期間いろいろやって、やっとこさ2027年に東京←→名古屋間で運転が始まると。

ま、カネを出すのがJR東海なんだから、といってしまえばそれまでですが、名古屋止まりってアンタ正気かよ。別にアタシが関西出身とか関係なく、そこは大阪まで行くのが普通でしょうが。
それが大阪まで行くのが何と2045年だという。何じゃそれ。2045年と言えば、ま、生きていればですが、アタシは77歳になってるわけですよ。生まれる前から研究が始まって、老境になった頃にやっと開通ってのは、いくら何でも酷すぎる。
夢?こんなロングスパンの夢とかあるか。研究をはじめて100年近く経ってね、やっと日本全土にリニアモーターカーが張り巡らされたってのならわかるけど、一番中枢と言える東京←→大阪間を結んだだけですよ。まったく、馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。

それだけ時間がかかってるってことは、当然それだけのカネがかかってるってことなんですよ。
こういうのはね、いわば「筋の悪い技術」なんです。実現可能か不可能かで言えば可能なんだろうけど、あまりにも時間とカネがかかりすぎる。
アタシは素人だからそう思うんだろうけど、これだけカネと時間をかけたら、飛行機だってもっと早く空を飛んでたわ。いや、もしかしたらリニアモーターカーにかけたカネを全部つぎ込んでいたら、タケコプターが開発出来ていたかもしれない。

そこまで極端じゃなくても、東京←→名古屋←→大阪を直線で結ぶ線路を敷いて、さらに超広軌にして、今の新幹線の技術を改良するだけで、そりゃ東京←→大阪間を1時間は無理だとしても、今の2時間半から1時間半くらいには出来るんじゃないの?と思ってしまう。アタシは鉄オタではないので間違ってるかもしれないけど。
しかしさ、もしこんな「超新幹線」をやるとなっても、土地の買収とか難所のトンネル工事とか車両の開発とか含めても、どう考えても50年はかからないんじゃないかと。費用も安く済んだだろうし、費用ってのは当然乗車料金に反映されるだろうからね。

ただね、別の考えもあるんです。
リニアモーターカーの研究が始まったのは1961年、ということは高度経済成長期のはじめでもあったわけです。
何が言いたいのかというと、つまり日本がこの間経済大国だった、日本という国に余裕があった証明なんじゃないかと。
ムーアの法則じゃないけど、半導体なんか10年もあれば平気で10倍以上の効率を上げられるんです。それがリニアモーターカーの場合80年近くかかって、4時間(新幹線開業当時)から1時間だとたった4倍ですよ。これが東京←→大阪間が10分ってのなら理解出来るけど、そうじゃないわけですよね。

そんなものに、たかが1/4に短縮するためにこれだけ長期間にわたって莫大なカネを投入出来たなんて、経済的な余裕がなければ絶対不可能なんです。
こうした「筋の悪い、夢だけが取り柄、といってもあくまで技術者的にはって話でしかなく、一般人には夢というほどでもないものに莫大なカネをかける国」というのは、莫迦だな、と思う反面、そんなに悪い国じゃない気がする。それだけ経済的には潤っている証拠だもん。

そう考えればリニアモーターカーは異様にツイていた技術と言えるのかもしれません。
高度経済成長期に開発がはじまって、経済的に立ち行かなくなる寸前に開業の目処が立ったんだから。
もしリニアモーターカーの研究開発があと少しでも早くても、また遅くても、実用化にはこぎ着けられなかったと思う。もし今、リニアモーターカーに相当するようなカネも時間もかかる新技術があったとしても、あっという間に開発は凍結されるはずですからね。

だから、リニアモーターカーの開発者はこれだけは絶対にわかっておかなきゃいけない。
君らは有史でもあり得ないくらい運が良かったんだよ、と。逆に言えば運だけで開業にこぎ着けられるんだよと。
運でここまで来たものにたいして、アタシは夢なんか感じない。77歳以上になった頃にリニアモーターカーが開業したとしても、んで何かのはずみで乗ることになったとしても、感慨なんかあるわけがない。

いや、もしかしたら、こんなケースもあり得るのかも、とは思う。
日本の経済が今以上に、もう信じられないくらい悪くなって、本当の意味での貧困層に溢れ、他国のおこぼれをありがたくいただくだけの情けない国に成り下がっていたとしたら、違う意味での感慨はありそうだとは思う。

ああ、これを開発していた頃は日本という国は幸せだったんだな

というね。
それだけは避けなきゃいけないですよ。つかそこまで経済が悪化してたなら2045年開業も不可能だろうし。まさか貧困層が溢れた世の中で東京←→大阪間のリニアモーターカー開業!なんて華々しく謳うわけにもいかないだろうしさ。

だからってアタシが何か出来るわけではないんだけと、頼むよエラい人。







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