本当は便利な敬語、いやK語
FirstUPDATE2018.9.21
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 何だこのエントリタイトルはって感じですが、最初はもう「K語」だけでいいと思ったんだけどさ。ま、さすがに短すぎるのでこうしたのですが、何だかインチキ本みたいなタイトルになっちゃったね。まァいいけどさ。
 
 いやね、アタシはかねがね「敬語」って言葉自体に物凄く違和感があるんですよ。
 そうだよね、一般に敬語と言われてるのって実はほとんど丁寧語だよね、みたいな話じゃなくてね。そーゆー揚げ足取りじゃない。
 ま、敬語でも丁寧語でもいいんだけど、とくに敬語って言葉がいただけないと思うのは、別に相手を敬っているから「ですます」で喋ってるわけじゃないんですよ。もちろん敬っている方とお話しさせてもらう時にも「ですます」で喋るけど、実際はそういうことはかなり稀なわけです。
 例えば初対面の人。しかも存在そのものをその場で初めて認識したような人の場合も、まァ普通の常識があれば敬語で話します。もちろん子供やなんかの場合は除いてね。
 何しろその人にたいする情報は、二言三言の挨拶と見た目、んでこれを言うとすんげぇイヤなヤツみたいになるけど「社章」くらいしかない。
 そんな状態では敬う人間かどうかの判断とかつくわけがないんです。
 
 やっぱね、敬うって相当のことなんですよ。何かひとつでも「はぇーっ、スゲエわ」と感服するようなことがないと、易々と他人を敬えないものです。
 この場合、相手が自分より目上か目下かはほとんど関係がありません。
 年上でも敬おうと思わない人はいっぱいいるし、年下でも敬うに値する人とかいくらでもいるしさ。
 もちろん一目見ただけで「あ、この人はすごいかもしれない=敬ってもいいかも」なんて人は、実に珍しいことではありますが、いることはいます。
 
 えと、2018年だったかな。のはじめにね、アタシはとある人のイベントの手伝いをしました。
 といってもたいしたことじゃない。イベント自体はかなりの規模だったけど、アタシが手伝った人のスペースはそこまで馬鹿デカくはない。
 搬入搬出設営といったことはもちろんですが、受付もやった。オッサンの受付ってのもどうかと思うけどさ。
 ちなみにそのイベント会場は五反田、ということはもちろん東京ですが、その五反田からバスで10分ほどのところにあるTOCビルで行われました。
 話が逸れるから手短にやるけど、このTOCビルは実にいい。建立が1970年だから微妙には違うんだけど、まるで「1960年代の東宝映画の世界」に迷い込んだような気になれるのです。
 とくに屋上が実に素晴らしい。いやが上にも「江分利満氏の優雅な生活」のオープニングを想起してしまう。というか無意識に「おおひばり」が頭の中で鳴り響く。いやバレーボール禁止って書いてあったけどさ。(現注・TOCビルは2023年3月末で商業施設をすべて閉店し、建て替えられる予定)
 
 イベントの話に戻りますが、かなり大々的なイベントだったので、著名人も数多く訪れていました。
 その中のひとりにロンドンブーツ1号2号の田村淳がいた。で、何のことかアタシに喋りかけてきたのです。ま、イベントっつーか展示物についての説明を求められただけだけど。
 正直ロンブー淳は間違いなく「好ましからざる芸人(タレント)」だったのですが、この件があって認識が変わった。っても「実際会ったから」とかじゃなくて、その質問ってのがね、ものすごく鋭い質問だったんですよ。
 ああ、この人、アタマ良いな、と素直に思えた。もうそれだけで敬う対象になりますからね。
 
 もうひとり、コシノジュンコは強烈だった。
 コシノジュンコはロンブー淳とは違い、直接喋ったわけじゃないけど、何と言ってもあのイデタチですよ。
 アタシはね「カーネーション」という朝ドラを見ていたから、コシノジュンコのことは一応ちゃんと認識してるつもりだった。でもこの人はファッションデザイナーでしょ?アタシはデザイナーはデザイナーでもグラフィックの方だから、その凄さはよくわからないし、敬う要素なんてなかったわけです。
 でもね、アタシからすれば、あのトシで、あの格好で闊歩してるってだけで、もう敬いの対象ですよ。あんな格好、若くてもちょっとやそっとじゃ出来ないよ。
 でもコシノジュンコなんて例外中の例外。あんな人が世の中に溢れてたら怖いわ。
 
 さて、話は変わるようですが、昔ダウンタウン浜田が「友達を作るコツ」として「なるべくタメ口で喋ること」みたいな話をしていました。(話だったか本で読んだのかは忘れたけど)
 たしかに、これはわかりやすい。とくに年下にたいしてはタメ口で喋った方が絶対に距離が縮まる時間は短いってのは本当によくわかる。
 わかるのはわかる。でもね、なかなか難しいんですよ。実際にやるとなると。
 もう、見るからに、文句なしに自分より若いってわかる場合は、初対面からいきなりタメ口でイケるかもしれないけど、アタシくらいの年齢になると、タメくらいかな、と思っていたら実は10歳以上下だったり、微妙に年上だった、なんてケースが多発するのです。
 だから、いろんな危険性を回避するためにも最初は敬語で話す。ま、安全策です。
 そのうち仲良くなってきて、相手の年齢も把握して、となっても、じゃあどのタイミングで敬語をタメ口に切り替えるかが実に難しい。
 実際、アタシの一番の友人はアタシより3つほど下になるんだけど、とうとう切り替えのタイミングが見つからず、知り合って20年以上経つのに、いまだにお互い「半敬語」で喋ってますからね。
 
 ま、それはいいとして、何故タメ口なのか、の答えとして「距離を縮めたいから」というのは理屈としては正しい。
 では、です。距離を縮めたいからタメ口、と考えるなら、距離を取りたいから敬語、とも言えるんじゃないか。
 結局ね、敬語ってのは上品で社会的な口調かもしれないけど、果てしなく他人行儀なんですよ。距離を置きたい、他人でありたい、と思う気持ちが敬語という言葉遣いに表れていると言ってもいい。
 
「社会的常識を持ち合わせた人間と思われたい」
「あまり親しくしたくない、他人でありたい」
「上部だけの話でこの場を治めて早く立ち去りたい」
「自分の本心をなるべく隠したい」
「相手の年齢や立場の確認がめんどくさい」

 
 敬語を使うのは、ほぼ上記のケースだけです。本当に敬う気持ちから、なんてのは例外でしかないと思う。
 
 だからといって今更「敬語」という言葉を止めろ、とも思わない。だって面倒じゃん。
 とはいえ丁寧語ってのもね。別に丁寧に喋ってるわけではないし、そもそも「ですますで話す=面倒だから」って方が強いんだし、少なくとも丁寧ではない。なるべく上部だけで掻い摘んで話すんだから、内容的にも丁寧なんて言えないわけで。
 いわば敬語は相手との壁を作るための言葉遣いなんです。壁を作るって言ったら感じが悪いけど、壁がある時用の言葉遣い、と言った方がいいか。
 初対面の人、仕事の話しかしない人(商談相手やクライアントなど)、挨拶する程度の近所の人、店員さん、その他その他。これらの人に壁はあって当たり前です。こんな人たちに「そういえばこないだこんなことがあって」みたいな話をするわけがない。鶴瓶じゃないんだから。さすがに鶴瓶でもそこまでしないけど。
 
 アタシが敬語ならぬ「K語」なんて言い始めたのは、K語のKは「壁」の「K」なんです。あなたと私の間には歴然たる壁がありますよ、と。だからこういう言葉遣いになるのですよ、というね、いわばサインなんです。
 考えてみれば、本当に敬っている人にたいして壁があるなんて当たり前の話で、尊敬の気持ちがある、つまり畏れ多くて一定の距離までしか踏み込めない。つまり敬っている場合も歴然たる壁があるわけで。
 「敬」なんて字を使うからおかしくなる。敬なんて鳥谷だけで十分。いや鳥谷は十分すぎるくらい敬うべき選手だったけど。過去形なのに他意はないけど。
 
 今に限らず昔っからですが、敬語をやたら毛嫌いする若者は多い。何で敬ってもない人間にたいして敬語を使わなきゃいけないんだ?みたいな。
 んで、何で敬語が必要なの?と聞かれた時に上手く説明出来ないなんてことも多い。その方がちゃんとした人と見られるからトクだ、みたいな、ふわぁっとした言い方で誤魔化すしかないのが実情だと思う。
 問題なのは、敬語と呼ばれる言葉遣いではなく、「敬語」という言葉自体にあると思う。
 もし「敬語」ならぬ「K語」なら、そこまで違和感はないはずだし、むしろ「もしかしたらものすごい便利な言葉遣いなのかも」と思うかもしれない。
 
 そうなんです。あんまり堅苦しく考えないで、敬語ならぬK語だと思えば、便利この上ない言葉遣いなんです。タメ口とK語を上手く使い分ければ、対人関係の仕分けが出来る。その程度の気楽な感じでいいんですよ。
 ってこのエントリ自体はかなり堅苦しいんだけどね。

しかし何だって一部の人はそこまで、敬語に嫌悪感をもよおすんでしょうかね。
つか根本的な話だけど、タメ口とかフランクな口調ってそこまで良いもんじゃないよ。あれはあれで結構めんどくさい。というかさ「両方ある利便性」の有難味をもっと噛みしめるべきだわ。
あと、一応補足を入れたけど、TOCビルが閉館っつーか取り壊しになるのは寂しいなぁ。個人的にはああいうのこそ歴史的建造物だと思うんですがね。




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