なんでもタダの時代
FirstUPDATE2018.8.22
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えと、正確にはいつだったかは忘れたのですが、とにかく1990年代の前半、ちょっとビックリすることがあって。

何気に街中を歩いてるとサンプルを配っていた。まァサンプル配布なんて珍しくないけど、その時配っていたのが何とカセットテープ。ペットショップボーイズによる「Go West」のカバーです。そのカセットテープを配布していたっつー。
何というか、ついにここまで来たか、と感嘆したのを憶えてます。
あれから20余年。サンプル配布は以前より減った気がするけど「とりあえず、基本は、タダ」なんて時代になった。
もちろん一番の原因はインターネットの普及なのですが、それだけじゃなくてね、どんな企業もホンネでは「基本タダ」にしたがってるんじゃないかと思うのです。

ケータイなんかまさにそうだと思う。MVNOを含めた各キャリア間でシェア争いが苛烈ですが、本当はどこも「基本料0円」にしたいんじゃないかね。つまり使った月だけ使用料が発生するっていうふうに。
これなら無数にSIMをバラまくことが出来る。SIMを所有しているユーザーが使ってようが使ってなかろうが「ウチはこれだけの契約者数がいます!」と謳える。とくにサービスを開始したばかりの弱小MVNOとかなら、あっという間にものすごい契約者数を得られるわけです。

当然使用されなければ収益にはならないけど、まァ実績にはなるわけで、少なくとも損はない。
しかしさすがにこれは国が許さない。nuroモバイルみたいに一部使用料を含めた上で0円にするなら別だけど、一回でも使ったら即座に有料というのは難しいし、ユーザーの理解も得られないのでしょうね。
持っておくだけなら一円もかからない、一回でも使ったら即座にカネがかかる、というシステム自体は大昔からありました。
置き薬なんてまさにそれで、使ったことがある人ならわかるだろうけど、あれ、結構高いんだよね。今ならディスカウントっぽいチェーンのドラックストアがいっぱいあるし、そこで買う方がよほど安い。

けどさ、当たり前だけど、クスリなんて突然必要になるわけです。いつかはわからないし、どの種類のクスリが必要かもその時になってみないとわからない。だから常備薬と称して一揃い買い揃えたりするんだけど、何しろクスリってのは食品同様消費期限がある。一度も使わないままゴミ箱にポイ、なんてことも平気であり得る。
そこまで考えるなら置き薬はそれなりに経済的で、もちろん封を開けてないってのが前提だけど、古くなったクスリは新しいクスリにタダで交換してくれるんだから、たしかに無駄は発生しません。
いったいどこのどいつが考え出したのか知らないけど、結構上手い発想ですよね。

タダでモノを配ろうってのなら、基本は置き薬的な発想になってしまうはずです。
つまり「いつ、何が必要になるか事前に読めない」「置いてても邪魔にならない」「使わなくても持っているだけで何となく安心感を与える」。
この3つは必須のような気がする。逆に言うならどれも当てはまらないものはタダで配っても意味がないっつーか、そこから需要は広がらない気がします。
少なくとも、いわゆるソシャゲなんかは「置いてても邪魔にならない」には当てはまると思う。そりゃあメモリを食い潰すとか言いだしたらそうなんだけど、物体として部屋を占領するわけじゃないからね。

そう考えるとSIMは微妙だね。たしかに邪魔にはならないけど、あまりにも持ってる意味が薄い。結局SIMを入れ替えたり、複数の端末で遊んでいるのなんてマニアだけだもん。これでは意味がない。
タダで配る相手は一般の人でなければダメなんです。一般の人相手に知名度を高めて、マニアから搾取する。これが正しい商売のやり方だから。
インターネットがマズいなと思うのは、マニアでさえカネを落とす方向に行ってないんですよ。というかこれはこないだも書いたけど、インターネットを通じてマニアから搾取する方法が確立されていない。

マニアはカネがかかってもあまり文句は言わないのです。しかし一般の人は予想を超えた金額になると途端に文句を言う。
ソシャゲなんか完全に一般の人を相手にしてるでしょ。あれでは課金その他で文句が出るに決まってる。もしマニア相手なら、それがどれほど高額でも、問題にはならないと思うんです。
アタシだってそうですよ。もう二度と手に入らないようなものが目の前にぶら下がっていたなら、いくらカネを積んでも惜しくない。当然手持ちのカネがないと参加は出来ないけど「いくらなんでも高すぎる」なんて文句を言おうとは思いません。単に「縁がなかった」としか思わないんですよね。

置き薬の話をもう一度すると、あれが必要になるのは非常時なんですよ。つまり平常の精神状態ではない。とにかく何でもいいから腹痛のクスリはないのか、という焦りを上手く商売にしている。
マニアってのは、自分が興味のある事象に出会っただけで平常の精神状態でなくなるのです。普段どれだけケチケチしていても、ニンジンには飛びつこうとする。昔はマニアのことを「何とかキチ◯イ」なんて言ったけど、見境いなくカネを落としてくれるのは「キチ◯イ」状態になった時なんです。

一般の人は見向きもしない、もしくは一般の人だけがカネを払おうとする、そしてマニアは可能な限りカネを落とさずにタダで使い続けようとする。今の基本タダはほとんどこんな感じです。これで先行きが明るいと思っていたらどうかしてる。
搾取するならマニアから。こんな当たり前のことをやらないでどうするんですか。ねぇ。







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