いい女系
FirstUPDATE2018.8.12
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前にバブルネタをやる女芸人の平野ノラのことを書いたのですが、その時も平野ノラ自体は別にバブル顔じゃない、みたいなことを書いた記憶があります。

バブル、と言って外せないのが、たぶんこの頃だったと思うんですよ。いわゆる「いい女」という概念が生まれたのがね。
実はそれまで「いい女」というのはなかった。あんまりカッコいい女という概念すらなく、もちろん仕事をバリバリこなす女性はいたのですが、それは男性から見ればまるで女性としての魅力のない、同性から見ても憧れるような存在ではない、そんな感じでしかありませんでした。

それが、おそらく嚆矢になったのは小林麻美(アイドル時代じゃなくて「雨音はショパンの調べ」の頃)あたりからでしょうが、バブル期になると本格的に変わった。
仕事もデキる上にファッショナブルでカッコいい。しかも色気もある。そんな女性が台頭し持て囃されだしたのがちょうどこの頃でした。
そんな女性を総括して「いい女」なんて言いだした。それまでも「いい女」という言葉自体はあったけど(世良公則の「燃えろいい女」という歌がヒットしたのは1979年)、その時点までの「いい女」とはあくまで男性目線で、下卑な言葉を使えば「ヤリたい女=いい女」でしかなかったのです。

しかし、当たり前ですが、誰でも「いい女」になれたかと言うと、違う。いくらボディコンに身を包んでワンレンにしても、急に仕事がデキるようになるわけじゃないし、何より「いい女」と呼ばれるようになるにはそれなりの容姿が必要なわけです。
いい女になりたい、だから必死でそこに寄せてるんだけど、いい女とはとても言えないような女性がバブル期には本当にいっぱいいたんです。

今は「意識が高い」のと「意識高い系」は違うと言われているけど、それで言うなら当時は「いい女系(けど本当にいい女なわけじゃない)」がいっぱいいたというか。
いい女系の人は仕草や化粧とかはホンモノのいい女をかなり研究しており、一見いい女っぽい。遠目で見てると、さもそこにいい女がいるように思える。
けどホンモノに比べると圧倒的に容姿が劣るし、喋ると知性のなさが浮かび上がるっつーね。

まさにバブル期が始まった頃の1985年に、泉麻人が面白い文章を書いています。
「ケバい女の魅力」というタイトルで、ケバいほどヤリたい、むしろケバくない美人よりもケバいブスの方が時にはヤリたくなる、と。
泉麻人は「あげ底の贈答品」という実に上手い表現で、必死でいい女に見せようとする女性の方が可愛いとしているのですが、素人なんだからむしろそうした努力が見えた方がプラスなんじゃないかと。

ま、半分とは言わないけど何割かは嫌味も入ってるんだろうけど、こうした観点は面白い。
実のところアタシも「あげ底の贈答品」感のある、無理矢理いい女ぶった人は嫌いではない。泉麻人が言うところの「女性としての本質はドーチャラコーチャラ!」なんていう人よりも、必死で女性としてのランクを上げようとしているいい女系の方が好きです。

そんなことを考えてた時にね、テレビを見てたら横澤夏子が出てた。んで、あれ?この人って、よくよく考えたら、平野ノラよりもよほどバブルっぽいぞ、とね。
横澤夏子はどこをどう切り取っても美人ではない。ま、もっとはっきり言えばブスの範疇に入ると思うし、間違ってもいい女ではない。
だけれども、いい女<系>だよね?と言われれば、間違いなくいい女系です。それもバブル期の頃のいい女系。

若い人には信じられないかもしれないけど、横澤夏子みたいな女性が、当時はこれでもかってほど、いたんです。んで長い髪をやたらとかきあげ「ワタシってさぁ、◯◯っぽい人なんだよね・・・」なんて呟く。
「お前さぁ、いや気持ちはわかるけど、その顔じやなぁ・・・」なんて思ってるんだけど、酔ってくると本当にいい女に見えてくる。いやそれでも、容姿が良く見えてくるわけでもないんだけど、何となく、コイツとヤリたいなぁ、なんて気分になってくるわけですな。

普段はブス扱いだけど、酔うとヤリたくなる、というのを売りにしているのは相席スタートの山﨑ケイですが、彼女は残念ながらバブル顔じゃないし、酔ってなくてもヤリたくなるヤツもいっぱいいると思う。つまり美人ではないけど、メチャクチャブスでもない、という微妙なラインの顔立ちです。

その点横澤夏子は「かなり酔って初めて」といった顔立ちだし、何より典型的なバブル顔。さすがにボディコンでこそないけど、ワンレン風の髪型もバブル期を連想させる。
平野ノラが馬鹿デカいケータイやトリッキーな言葉遣いがあってはじめてバブルを感じさせるのにたいし、横澤夏子は何もしなくても、というか小道具とか何も使わず普通に喋ってるだけで、気づく人は気づく。
ああ、この人は、バブル期のいい女系だ、と。

そうは言ってもアタシとて、横澤夏子とヤリたいかというと、ヤリたくはない。でもそれはアタシが酔ってないからです。
「男側がバブル期の女性の感じを肌感覚で知ってる」「テレビ越しではなく実際に目の前にいる」「男がだいぶ酔ってる」といった条件は必須ですが、これらすべてが満たされた状態で横澤夏子がいたとするなら、これはヤリたくなるかもしれない。

それはもちろんバブル期の時の感覚とは違って、ある意味ノスタルジーの気持ちが混ざって、なのは確実だけどね。







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