仲良きことは
FirstUPDATE2018.8.2
@Scribble #Scribble2018 #人間関係 #スポーツ 単ページ 大相撲 OB戦 笑福亭鶴瓶

中堅より上の芸人、具体的に言えばボキャブラ世代以降の芸人ですね、がよく「昔の芸人はもっとギスギスした感じだった。各人の間で強烈なライバル意識があったし、たとえコンビ間でも今よりはるかにギスギスしていた」みたいな話をします。

彼らが何が言いたいのかというと、要するに昔に比べて今は芸人同士が仲良くあることを求められている、と。
「アメトーーク」に代表される、雛壇芸人がワチャワチャとトークする番組は時代の要請なんですよね。ネット界隈にいる捻くれ者はともかく、大半の視聴者は「ギスギスした、緊張感の強い、だけれども笑える」ものよりも「たいして笑えなくてもいいから、のほほんとして楽しい」ものを欲しているという。

楽しい雰囲気を番組として成立させるには、芸人間に仲間意識が求められる。その雰囲気を強化するために「芸人同士で飲みに行った話」なんかを積極的に挟み込む。それは友達同士というよりは大学のサークルに近いもので、先輩後輩はあるが最低限の礼節だけで、けして強い上下関係を強いるわけではない。
そんな空気を世間が求めている以上、それに逆らうことはないと思うけどね。ま、いつまでそういう風潮が続くかはわからんけど。もうたいがい長いしさ。

今の時代ね、何か、どうも、必要以上に「仲の良さ」を求める時代のような気がするんですよ。
だから「仲が悪そう」な集団に向けられる眼差しが非常にキツい。もう詳しく書かないけど、日大アメフト部があれだけ注目されたのは結局「仲の良いのを許さない」ことを許さないって話なんだろうし。
表面上仲良くやるなんて簡単なんですよ。ものすごくわかりやすくいえば、そんなに会わなきゃいいわけでね。

旅行なんかだと顕著だけど、四六時中顔を突き合わせていると、どうしても相手の嫌なところに目が行きやすい。口に出さないまでも不快感が溜まっていく。そんな状態が何日も続けば表面上でさえ仲良くやるのが難しくなってしまいます。
そういや間寛平がアースマラソンにチャレンジした時、同行者との関係がギスギスなるのを防ぐために「喧嘩の時はオカマ口調でやろう」と提案したらしいですが、これは案外効果的な方法のような気がします。

アースマラソンのような長期の旅ともなれば、絶対に不平不満がつのりだす。それはもうしょうがない。でもそれをまともに相手にブツけると、その相手だって不平不満があるわけだから確実に喧嘩になる。下手したら旅の続行が不可能なレベルの大喧嘩に発展するやもしれない。
かといって不平不満を押し殺すと自分自身が苦しむことになる。だから口に出す方がストレスが溜まらない。
その折衷案が「オカマ口調」というね、いわばジョークにまぶして口にしようと。
ま、そうするためには、やはり体調が重要なんだけどね。寝不足だったり体調が悪ければ相手のジョークを受け止める余裕がなくなるし、自分もジョークとして言葉を発するのが難しくなるからさ。

何でこんなことを考えたかというと、日大アメフト部が元じゃないんですよ。それよりね。
昔、鶴瓶が「何で相撲も野球みたいにOB戦とかやらんのやろ」みたいなことを言ってて。あ、そういうことか、と。
今はそんなにやらなくなりましたが、かつては毎年のようにプロ野球のOB戦が開催されていました。
嚆矢となったのは1976年に行われた巨人vs阪神のOB戦のはずで、満員に膨れ上がった甲子園球場で、オール阪神巨人がプラカードを持って選手が入場した光景をはっきり憶えています。

今でこそ自チームに限らず他チームの選手同士の交流が盛んですが、昔はそうじゃなかった。今の目で見ればずいぶんギスギスした組織、それがプロ野球でした。
だけれどもOB戦が開催出来るほどではあった。そりゃあ顔も見たくないレベルの関係もあったんだろうけど、それでもグラウンド上では普通に笑いながらプレー出来る。その程度の仲の悪さでした。

先の鶴瓶の発言からずいぶん経ってからですが、2010年代になって遅まきながら大相撲もOB戦を開催するようになった。ただ毎年というわけでもなく、参加する力士(元力士か)も限られています。
アタシは大相撲は曲がり角に来ているというようなことを何度か書いたし、無改革で存続させるか廃止するかどちらかしかない、という極端なことまで書きました。
ただ確実に言えるのは、かわいがり云々、八百長云々は置いといたとしても、今の相撲協会の険悪ムードは確実に時代に背いている。
必要以上の仲の良さが求められる時代に、親方衆が反目しあう構図は如何にも今の人に理解されにくいのではないかと。

だからといって一朝一夕に仲良くすることは無理なんだけど、せめて表面上だけでも仲良さそうな<フリ>をするべきなんじゃないかね。
親方衆が仲良さそうに見える一番手っ取り早い方法は土俵で相撲をとることですよ。つまりはOB戦です。
OB戦を定期戦にする。四の五の言わずに体調不良以外全員参加させる。それしかない。
芸人がバラエティ番組で仲の良さをアピールする、プロ野球選手OBがグラウンド上で仲の良さをアピールする。そして相撲取りであったなら、土俵で仲の良さをアピールするしかないんです。

今の風潮がそうだからといって、そんなに仲の良さが大切なことなのか、これはまァ、正直言えばアタシ個人としては否定すべきことはあるんだけど、それは言いっこなしでね、そんな時代なんだからそうする。それはしょうがないんじゃないの?ねぇ。







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