あくまで持論でしかないのですが、まァ「芸能人」でも「テレビ番組」でも「シリーズ物の映画」でもいいんだけど、そういうのがね、<ファン向け>もしくは<見巧者向け>になった途端ダメになる、と思っているんです。
製作会社なりプロダクションはどうしてもファンや見巧者の意見を気にする。
となるとファンの声を過剰に吸い上げたり、有識者を集めて「忌憚のない意見を言ってくれ」なんて会を開いたりするんだけど、はっきり言えばどっちも果てしなく意味がない。もっと言えばそんなことをすればするほどダメになる未来しか見えないというか。
たしかに改善される箇所はあるとは思うんですよ。また現状まるでウケてないものにたいしてなら、まだ理解出来ないこともないっつーか、それなりの効果が期待出来るのかもしれません。
だけれどもすでに一定の支持を受けているものを下手に改善しようとしたら、商売として落ちる可能性の方が高いんじゃないの?と。
<しつこくこだわる>ようですが、昨年AbemaTVで配信された「72時間ホンネテレビ」がユニークだと思ったのは、あれ、一切元SMAPファン向けに作ってなかったんですよ。もし元SMAPファン向けならもっとつまらないものになっていたと思う。
たしかに最後のコンサートはファン向けと言えなくもないと思うんだけど、それでも全体を通して見ると、むしろファン層とは離れる男性向けに作ったんじゃないかと思えるほどでした。
堺正章とか森且行とのトーク以外は完全に「ぷっすま」のノリで、「ぷっすま」自体SMAPファン、草なぎファン向けではなく「ファンではない男性向け」の作りだったわけでね。
この「ファン層とあえて逆のところを狙う」ってのはSMAPが一貫してやってきたことで、だからこそSMAPは突出出来たんだと思うし、結果的に彼らの芸能人人生も長いものになった。
正直言えばSMAP以降のジャニーズグループのやり方はSMAPの真似であって、真似はしてるんだけど軸足はあくまでファンを向いている。そこがSMAPを超えられない要因だと思う。
アイドルだろうがなんだろうが、ファンの方向とか向かなくていいんですよ。かと言って背を向けろって話でもない。基本ファンとは真逆を向いてるんだけど、たまにチラッとだけファンを見る。いわば「目配せ」ってヤツです。
目配せさえちゃんとしていたらね、本当のファンならわかるんですよ。ファンなんてただでさえ深読みしたがるものなんだから、チラッとでもあからさまな目配せがあれば、それに気がつかないわけがないんです。
アタシは植木等をはじめとするクレージーキャッツのファンだけど、彼らの活動を追体験すればするほど「あんまりファンの方を向いてないなぁ」と思う。同時に特別ファンでない人にどうやったら「ゼニを使わせることが出来るか」にこだわって活動していたようにさえ思う。
その辺は本当に素晴らしい。だからあれだけの人気グループになれたんだと思うしね。
ただファンの方を向いてないのはいいんだけど、どうも「見巧者」の見解は常に意識していたような気もするんですよ。
ハナ肇が浅利慶太をブレーンに入れようとしたり、渡辺晋もまだ若いながら笑いに見識のある小林信彦をコンサルタントに招いたりしている。
つまり「評論家の評価も高く、商売としても儲かる」ことをやりたがったというか。
でもこれって何か意味があるのかと思う。よく質的向上とか言うけど、見巧者の意見なんてファンの意見とは別ベクトルで「閉じられた世界」に向かう一方なんですよ。
芸能の世界ってのはね、もちろん儲ければ儲けるほどエラいわけじゃないけど、識者に褒められたら褒められるだけエラいわけでもないんです。良い作品、優れた芸能人、という評価と商売とは何の関係もないといって差し支えない。
いやむしろ、そっちに目が行き出すと売れた理由まで消えることさえあると思う。
たしかに悪いところはなくなったし、他人から褒められるようにはなったけど、上昇期にあった良さも消えてしまった、みたいな。
そう考えた場合、芸能の世界において一番やっちゃいけないのは「閉じない」ってことなんです。もっと言えば完成形に近づけない。どのみち完成形なんてないんだし、未完成のままでいけるところまで行く。そこなんじゃないかね。
何でこんなことを書こうと思ったかというと、例の元SMAPの3人の映画が非常に閉じられた感じに思ったからなんです。
アタシはまだ観てないけど、映画そのものはけして閉じられた感じのものではなく、よく出来たエンターテイメントらしいけど、上映の仕方が閉じられた感じっつーか。
「72時間ホンネテレビ」が良かったのは配信元が有料のストリーミングサービスではなくログインの必要すらない、アクセスするだけで見られるAbemaTVだったってところなんです。これだけでもう開かれた感じがする。
アタシは前も書いたように、彼ら3人にはすごい期待しているんです。展開のやりようによっては必ず芸能界に風穴を開けてくれる存在になってくれると思っている。
だから絶対に閉じられた世界には行って欲しくない。ファンには目配せ程度にしておいて、ファン層とは真逆のターゲットを狙い続けて欲しい。もちろん評論家なんて相手にしちゃダメです。あくまで「単純に、こっちの方がウケるから」みたいなラインをキープして欲しいっつーか。