デザインとイロの最適解
FirstUPDATE2018.6.1
@8bitマイコン 単ページ グラフィック性能 横並び レトロゲーム機

 昔、似たようなことを書きましたが1980年代の前半、ビジネス向け、もしくは入門用機を除く8ビットマイコンのグラフィック性能が<640x200ドットx8色>に固定されていた時代がありました。
もうどのメーカーの製品も見事に横並びで、唯一ソニーのSMC-70やSMC-777が異彩を放っている、そんな状況がたしかにあったんです。

当時、ゲームが作りやすいグラフィック性能、というのはかなり求められていたことだと思うんだけど、おそらくは技術的な限界とコスト的な限界で横並びにするしかなかったのでしょう。
これ、たぶんアタシが詳しくないからそんなことを夢想したんだろうけど、当時から何で複数のテキストプレーン(重ね合わせ可)を搭載して、各プレーンがハードウェアスクロール出来る、それにフルカラーPCGとパレット機能があれば、アーケードそっくりのゲームが作れたと思うんですよね。

当時のマイコンのグラフィック性能が貧弱だったのはRAMが高かったからですが(ま、それだけじゃないけど)、ならばVRAMがあまり必要ではないテキストプレーンなら8画面分とか16画面分とか用意してもたいしてVRAMは必要ではないし、高速且つカラフルなグラフィックが実現出来たと思う。
もちろんそれだけだったらアドベンチャーゲームのような画面いっぱいに一枚絵を表示するゲームは難しいんだけど(当然ファミコンやMZ-1500のようにPCGを敷き詰めれば不可能ではないけど)、だったら一枚だけグラフィックプレーン(それこそ640x200ドットx8色で十分)を用意すれば済む話だし。
ま、どこもやらなかったっのは、技術的にまったく無理な理由があったんだろうな。つか技術的なことがまるでわかってないアタシだからこんなことを思いつくだけなんだろうし。

マイコン確立期はグラフィック性能こそ横並びでしたが、性能以外の部分では各メーカーの思想みたいなものが色濃く反映されていました。
マイコンなる未知のシロモノをどうやって一般の家庭に普及させるか、何とか、この頃から数えて約5年前に一気に家庭に流入していったビデオデッキみたいな感じで「持っているのが当たり前」レベルまで出来ないか、その試行錯誤が見て取れるのが面白い。
マイコンを一般家庭に普及させるためには、本当は「性能の向上」と「ビデオデッキと変わらない手頃な価格」の両立しかないんですよ。しかしそれらは一朝一夕には果たせない。半導体の値段も高いし、かといって少々値段を上げたところで「本当に実用的に使える」性能は実現出来ないわけで。

そこである種の割り切りが必要になります。
どのみち、極端に言えば売価を100万円にしたところで「本当に実用的」とは言えないのだから、性能は簡単なゲームが出来る程度なんだけど、とにかく安価な製品が作れないものか。
そこに登場したのがMSXです。マイコン界の雄であるアスキーとマイクロソフトが提唱し、各家電メーカー(はっきり言えば市場をまったく奪えなかったメーカー)が乗った。
何が出来る?となっても、ま、ゲームです、一応レベルではありますがってな性能ですが、その代わり安価でソフトウェア(つかゲーム)もそれなりに充実している。これなら、少なくとも一般の方がお買い求めいただいてもご損とまでは言えませんよ、みたいなものとして売り出したっつー。

ただしMSXは共通規格ですので特色を出すのが難しい。完全横並びの性能で、半導体の値段がある以上極端に安価にも出来ない。つまり価格競争も出来ないわけで、となると「如何にビデオデッキ並みの、一般家庭に置いても違和感のないデザインにするか」に力を注ぐしかない。
あるメーカーはビデオデッキと並べて置いても違和感のないシックなデザインを採用し、あるメーカーはあえて玩具っぽい色遣いを採用する、といった塩梅で、各メーカーが考えるマイコンの家庭内での「あり方」が如実に表れていたのです。
というか、信じられないかもしれないけど、MSX登場までマイコンのボディカラーに「黒」はほとんど採用されていないのですよ。
オフィスに馴染むようなベージュや、近未来っぽさを浮き出させるシルバーが大半を占めており、FM-7でイエロー、PC-6001がオレンジをアクセントカラーに使ったりはしたし、X1はレッドモデルもあったけど、それはほんの一部の製品だけです。

「yabuniramiJAPANレジューム・1983年の『POPEYE』と1984年の『monoマガジン』」(2018年3月7日更新)でも書いたけど、この頃はパステル推しの時代でね、モノトーンはあんまりウケない時代だったってのはたしかにあります。実はビデオデッキやテレビだってこの頃は「ニューメディア時代に相応しい近未来的な」シルバーの方が強かった。
それがMSXになって「シックなモノトーンこそ、一般家庭に入っていくための最適解だ」という見解をもったメーカーが結構いたことが面白いんですよ。
正直今となってはどれが正解だったかなんてわからない。別に今だって「パソコンと言えば普通はこの色」みたいなのはないんだし。
けど、そーゆー試行錯誤が今の時代はなさすぎるんじゃないの?と思う。つかチャレンジ精神が見えない分、どうもお座なりに見えてつまらなくなってるとも言える。

Appleがゴミ箱と言われたPower Macを出したりしたけど、たしかにあの形はあんまり良くはないと思うんです。でも「もしかしたらこれが最適解かも」とチャレンジしたことは褒めたい。ま、一石を投じたくらいは言えるんだし。
今は基板も小さいし、デザインの自由度は上がったと思う。だからこそ「こんな形のパソコン!?」みたいなのがもっと出てきて欲しいんですよ。もしかしたら、それが後々デファクトスタンダードになるかもしれないんだから。
ま、そーゆー意見もアタシが業界を知らないからこそ言えるんだろうけどね。







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