二人だけの海とぼんちおさむ
FirstUPDATE2018.5.5
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新聞の縮刷版でもあたらない限り、いつぐらいに放送されていたのかさえわからない、なんて番組がたまにありますが、「夢々夢中組」なんて番組もそれにあたるわけで。

「夢々夢中組」は毎日放送で放送された関西ローカルのテレビ番組です。これ、類似する番組が他にないので説明が難しいんだけど、番組の中心にいたのは島田紳助。でもトーク番組でもクイズ番組でもない、ドキュメントバラエティ番組、とでも言えばいいのか。
とにかく島田紳助が中心になって山の中にロッジを建てるんです。もちろん紳助だけじゃ無理なので、土建屋よしゆきとかのレギュラーも手伝う。しかしそれでも人手が足りないので、一般参加者も手伝うというね。
もちろん一般参加者と紳助が喋ったりはするんだけど、紳助のトーク力を活かさないというのは画期的で、かなり面白い番組になってました。

人気もあったようで、続編というか別のシリーズも作られた。
そっちは紳助は参加せず、ぼんちおさむが中心になってクルーザーかなんかを作る、みたいな設定でした。つまり紳助編が「山」なら、おさむ編は「海」ということになりますか。
おさむ編は紳助編ほどの人気は得られなかったはずだけど、アタシはおさむ編の印象が強い。いや番組としては紳助編の方が憶えているんだけど、おさむ編はとにかくテーマ曲が脳裏にこべりついててね。
そのテーマ曲ってのが加山雄三の「二人だけの海」だったんです。

しかしそれ以上のことがわからない。Wikipediaにも項目がないし、正確にいつ頃放送されていたのかがまるでわからないんですよ。たぶん1990年代のはじめくらいだったと思うけど、あまり自信がない。
放送時期もわからないのにテーマ曲は憶えてるってのは、それほど「二人だけの海」が印象的だったんだろうね。
先ほど書いたように、おさむ編は海(海岸)が舞台なので、海がテーマのこの曲が選ばれるのは妥当なんだけど、おさむが加山雄三の大ファンだったってのも関係してると思う。

たぶんほとんど時期は同じなんだけど、ちょうどこの頃に「クレージー黄金作戦」という映画を初めて観た。もちろんクレージーキャッツ主演の、伝説となったラスベガスでの大ロケーションを敢行した作品として知られているはずです。
劇中、いろいろあった末にクレージーの面々はラスベガスにたどり着くのですが、途中ハワイを経由している。んでハワイの海岸で植木等演じる主人公がウクレレ片手に「二人だけの海」を歌うんです。

するとどこからともなく、多数の女性を引き連れた若大将、当然加山雄三です、が現れて「二人だけの海」を取っちゃう。取っちゃうってのも変だな。もともと加山雄三の歌なんだから。
でも植木等の存在に気づいた加山雄三が「お呼びでない?こりゃまた失礼しました!」とやるオチは完全に取っちゃうんだけどね。

♪ きィみのォ ためになぎィさで~
  ひとりかなァでるゥ こォこォろォのうゥた~

「クレージー黄金作戦」では最初は植木等のソロ、途中でユニゾンになって、加山雄三のソロになります。
植木等はこの手の歌は真面目に歌うのですが、これはもちろん上手い。ただ植木等って人は真面目に歌うとどうもディック・ミネふうになりすぎて辛気臭くなる傾向があるんだけど、「二人だけの海」は真面目なんだけど軽快さも残しており、良い歌唱です。
しかし、もともと自分の持ち歌だとはいえ、加山雄三がまったく負けてないのがすごい。単に歌唱の巧拙の話ではなく「華」という面で植木等にヒケを取っていないんですよ。だからこそ歌合戦が成立するわけでね。

アタシは何度もしつこく書いてるように、この年代の東宝映画が大好きなクセに「若大将」シリーズはあんまり好きではないんですね。
と言っても加山雄三や田中邦衛が嫌いってことでもなくて、何だかイマイチ、ハマれない。ま、嫌いなら理由を挙げられるかもしれないけど、ハマれないことに理由なんか何もないわけで。
とにもかくにもハマってはないんだから、当然加山雄三の楽曲にも思い入れがなくて、悪くはないんだけど、どれも何度も聴き返そうとは思えないんです。

ただし「二人だけの海」だけは別です。
「夢々夢中組」のテーマ曲だったとか「クレージー黄金作戦」で歌われたとか関係なく、これは本当に名曲だと思う。
演奏はワイルドワンズだけど、聴いてる者が不安になるようなストリングスから始まるオープニングからして出色で、それを打ち消すようなエレキサウンドで安心させて、歌になる、という構成も完璧です。
これもいわゆるサビがない曲なんですが、サビがないことをこれだけ上手く活かした曲もそうそうないと思う。

加山雄三と言えばアタシも縁が深い茅ヶ崎です。上原謙の負の遺産だったパシフィックパーク茅ヶ崎の前も(廃墟になってからだけど)クルマで何度も通り過ぎた。
でも何故か「二人だけの海」は茅ヶ崎の海って感じがしない。葉山とかあっちの感じがする。理由はわからないけど、なんとなく。
さっきから「なんとなくハマれなかった」とか「なんとなく茅ヶ崎じゃない」とか「なんとなく」ばっかりだけど、もしかしたら加山雄三自体が固定概念で語れないタイプなのかもね。そういやパシフィックパーク茅ヶ崎だって完全な廃墟なのに「なんとなく」コワいとか物悲しいって存在じゃなかったんですよ。純粋に夢の跡って感じで。

もちろん何で夢の跡に感じたのかも「なんとなく」なんだけど。







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