中には本当に「今の方が良い」こともある
FirstUPDATE2018.4.22
@Scribble #Scribble2018 #食べ物 #1980年代 単ページ 技術革新 冷凍食品 タイムスリップ

最近、カルビーがかつて販売していたスナック菓子を期間限定で復活させましたが、その中に「エスニカン」ってのがあってね。元ネタの販売開始が1986年、アタシが高3の時です。

いやぁ、これは死ぬほど懐かしい。というのも当時、このエスニカンってヤツに激ハマりしちゃって、毎日2袋食ってたんですよ。マジでこの世で一番美味いポテトチップスだと思っていたからね。
そんな郷愁に誘われて、復刻されたエスニカンを買ってみた。んで食べた。
うん、これこれ。見事に当時の味を復刻している。懐かしいなぁ。たしかにこれを毎日むさぼり食っていたんだなぁ。
ただ・・・、何か違う。味はまったく一緒のはずなのに、舌の反応は同じはずなのに、その信号を受け取った脳の反応が違うっつーか。
はっきり言えば、まるで美味くない。ひと口ふた口は郷愁で食えるけど、それ以降は袋に手が伸びない。
ま、もったいないので、最後は無理矢理食べましたけどね。

これと似たような体験は何回かあって、そういえばロッテがV.I.P.チョコレートを復刻させたことがあったけど、昔食った時は「おいおい、チョコレートもここまで来たのかよ」と思ったはずなのに、復刻版を食ってみると「・・・え?こんなもん?今これより美味しいチョコレートとかいくらでもあるよね」みたいに感じてしまった。
とにかくこの手の復刻版を食べて「やっぱり美味いなぁ!」みたいな感想を持ったためしがない。
記憶は美化される、なんて言うけど、このギャップは酷い。あの美味いって感想は何だったんだ、当時のアタシはこの程度で感動していたのかよ、と。

つらつら考えてみるに、こと食べ物にかんしてはここ30年くらいの間に劇的に美味くなった気がする。
もちろん全部が全部じゃないよ。でも昔は低レベルな味で当たり前だったスナック菓子とかインスタント食品とか冷凍食品にかんしては、もうとんでもない進化をしたと思うわけで。
ちょうどアタシが大学生の頃に電子レンジ専用のインスタント食品なんてのが出回りだしました。
中でも印象深いのがカゴメの「レンジランチョン」とハウスの「レンジグルメ」。とにかくレンジでチンするだけ、という手軽さはモノグサな大学生にとっては非常にありがたいモノだったんだけど、当時から別に美味くはなかった。ということはたぶん、もし今、同じものがあったとしたらマズくて食えないと思うんですね。
ただね、当時はそれで良かったんですよ。だって他も似たり寄ったりだったから。

今なんか冷凍食品とかすごいもんねぇ。もう美味いマズいを通り越して好き嫌いレベルの話になってる。まるで「駅前の中華料理屋より駅裏の中華料理屋の方が美味い」みたいな感じで、ニッスイ派、テーブルマーク派、味の素派、てなふうになってるもんね。
今や200円以上する冷凍食品はどれもそれなりに美味しい。それも「冷凍食品のわりには」ではなく、普通の手作り料理と比べても美味しいくらいです。
こんなことは30年前ではあり得なかった。冷凍食品なんてしょうがないから食うもんだったんです。それが「手作り?それなら冷凍食品の方が美味いんだけど、手作りの方が安上がりかなぁ」みたいになっちゃってるわけで。

もし今の記憶を持ったままタイムスリップしたら、みたいなネタは散々書いてるけど、一番困るのはやっぱ食べ物関係だと思う。
もちろん贅沢三昧が出来るなら今と変わらぬレベルの食事が出来るんだろうけど、スナック菓子やインスタント食品を食う生活を迫られたら耐えられないはずです。
もしね、30年前にタイムトラベルではなくタイムリープしてね、つまりアタシは大学生ってことになるんだけど、結構苦しいことのような気がする。
友人なんかが美味い美味いって食ってるものを見ても、アタシにとっては美味しくないんですよ。当たり前です。もっと美味いものを食ってた記憶があるんだから。

となるとどうしても醒めた顔になると思う。そしていつしか「アイツ、何食ってもマズそうな顔してるよな」みたいなイメージがつくはずです。
いやむしろ、そういうことを回避するために、なかば無理矢理「これ、メチャクチャ美味ぇ!!」みたいな「演技」をするかもしれない。
しかしこんな悲しい演技もないですよ。他のことならともかく、メシを食う時まで演技しなきゃならんってのはあまりにも悲しすぎる。
ま、実際タイムリープなんかしたら演技の連続になるのは確実でしょうね。
ファッションなんかもそうだし、科学の最先端!なんて言われても面白いわけがない。ビルのワンフロアまるまる使ったコンピュータとか見せられても「こんなもん2018年のスマホの足下にも及ばないじゃん」って思っちゃいそうだし。

ま、タイムリープにはタイムリープなりの楽しみはありそうだけど、こと「生活」ってことだけは苦しい思いの連続になるのは、もうしょうがないんでしょうなぁ。







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