カタギではない世界を認めるべきなのか
FirstUPDATE2018.4.21
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もうここ数年、ずっと相撲界は荒れに荒れています。いや相撲界が荒れてるというよりは相撲界に向けられた世間の眼差しが荒れている、というか。

この際、もう誰が<正義>で誰が<悪>かなど、どうでもいいんです。全員が<自分の正義>で動いているのは明白だし、結果としては<悪に類似する行動を取ってしまっている>ことも否定出来ない。
みんな正しいし、みんな間違っている。だから処分云々ではなく、もちろん襟を正すというような話でもなく、本当は相撲界の内紛ではなく相撲界vs世論ということをはっきりさせないといけないはずなわけで。
相撲界が戦うべき相手は世論なのです。しかし興行である限り世論を敵には出来ないというジレンマから「内部の誰某が悪い」みたいな話にもっていくしかなくなってるわけで。

ズバッというなら、相撲界もまた「カタギではない」世界なのです。
カタギでない世界をカタギの理屈で片付けようとすることほど滑稽なものはない。プロ野球の技術理論を少年野球に適用しようとするのに似ている。もちろん参考になることはあるとはいえ、全部を適用しようなんて無茶苦茶な話です。
相撲にしたところで芸能界と同じく「特殊すぎるカタギではない世界」として何十年、いや何百年続いてきたのです。それを今更コンプライアンスなんて言葉で取り繕おうなんて不可能です。
もし今のモラルに合致した芸能界なり相撲界にしようと思うなら、一度完全に解体してイチから構築する以外の手立てはない。
けど、そんなことするわけないよねって話で。

何度も言うように、芸能界にしろ相撲界にしろ、昔は今よりさらに「カタギでない度」が高かった。それこそリンチ紛いの行為など日常的に行われていただろうし、カネの流れもまったくクリーンなものでなかったに違いない。
それが当たり前だった。誰も咎める者はいなかった。もし軽く、ほんのジョーク交じりでもチャチャを入れようものなら、おいおい、この世界を何だと思ってるんだ、と逆に注意されたはずです。
そのことにたいして世間っつーかカタギの世界の人はどういうふうに思っていたのか、です。
たぶんそこについて、今の若い人は決定的な誤解をしていると思う。

「そんなことは周知されておらず、誰も知らなかった」

「<そんなダークなことなんてない>と無邪気に信じて無邪気に楽しんでいた」

今のようにインターネットなんかない時代ですから、そりゃ確実に今より情報の量も少なかったし、伝達速度も遅かった。それは否定しません。
でも「誰も何も知らなかった」ってのは間違いです。それこそ美空ひばりと田岡一雄の繋がりなんて誰でも、かはわからないけど、とくに芸能好きではないウチの母親やその兄弟でさえ知ってた。もちろん1950年代、つまりリアルタイムで得た知識としてね。

しかしそんなことは誰も問題にしてなかったってのも間違いない話で、カタギの世界の人間側にさえも「だって特殊な世界の話じゃん。自分たちの物差しで測ること自体が間違ってる」みたいな感覚があったはずなんです。
相撲で言えば、裏で「かわいがり」があってこそ、八百長紛いのことがあってこそ、それらすべて含めて相撲が好きなんだ、みたいな人ばかりだったと思う。
プロレスなんかでもそうでしょ。プロレスのことを八百長だなんだと言い出すのはきまってプロレスに興味のない連中です。プロレス好きの人はブックの存在をなかば認めながらもプロレスを愛しているわけで。

今の相撲界にたいして「現在のモラルと合致しない」と叩いてる連中は、相撲に興味がないんですよ。芸能界だって不倫で騒ぐ連中は芸能界に興味がない。
つまり騒ぎ立てる人はもはや「客」ですらないし、将来的に「客」になる可能性も極めて低い。
世論とは言うけど、そんな客ではない連中に振り回されていることを、はたして今の相撲界の人たちは理解してるんだろうか。
アタシはね、モラルとかコンプライアンスとか、そういうことではないと思うんです。ただ興行の基本である「客であればある程度は意見に耳を傾ける必要はあるけど、客でも何でもない人間の話なんかガン無視しなければならない」という当たり前のことを蔑ろにしてるだけなんじゃないかと。

相撲好きはどんなことがあろうが相撲が好きなんです。それはアタシの野球好きと一緒で、でもけして「相撲界は清廉潔白」と信じてるわけではなくて、「所詮相撲界なんてそんな程度。何しろカタギじゃないんだから」ということを了承した上で相撲を愛してる。
アタシはそのことにたいして何の疑問も感じない。相撲界が薄汚れているからといって相撲好きが薄汚れているわけじゃない。つかそういうレッテルを貼りたがるのはいつの世もいる。戦争映画が好き=そういう奴は将来戦争を引き起こす、とか、ヤ◯ザ映画が好き=ヤ◯ザと同じ思考の持ち主、とか。
これで今の時代はモラルが向上したとか聞いて呆れる。ただ特殊な世界を認めない、偏狭な時代になっただけじゃねーかと思う。

アタシから言えることは、相撲界は即刻くだらない内紛を止めて「客とはまったく関係のない、世論という名の偏狭な価値観」とどう対峙していくか本気で検討すべきだと思う。
もし勝てないと思うなら素直に解体して、綺麗にパッケージングされた作り物の「相撲っぽい<何か>」を新しく始めれば良い。
でも、そんなもの、もう相撲でも何でもない、と思うなら、いくら叩かれようが「これが相撲の世界なんだ。何しろ「カタギじゃない世界」なんだから、カタギの世界の人にわかるわけがない」と全部封じ込めればいい。
つまり潰すか今のままいくか、二択しかない。改革なんか絶対にやっちゃダメですよ。そもそも改革なんて100%出来るわけがないんだから。

どっちが正しいじゃなくね、態度をあきらかにする。それが今一番求められていることじゃないんですかねぇ。







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