すっかりテレビを見なくなった、なんて話はネットであろうがリアルであろうが「さいきんまた寒くなりましたね」くらいのレベルの話にすらなってるような気がします。
つかアタシも昨年末のエントリで「高校時代を100だとするなら今は20も見てない」とか書いてんだけど、これは言えるんじゃないかということがあって、何となく、暇だから、みたいな感じでテレビのスイッチをオンにしてるってことは相当減ったんじゃないかと。
これはウチの母親でさえそうで、前は実家に帰ると文字通り朝から晩までテレビがついていたのに、今はそうじゃなくなってる。母親は70歳を過ぎているわけで、それくらいの年齢の「テレビをつけているのが当たり前」だった年代の人までそうなっているのは、そういうことじゃないかとね。
むろんアタシの母親だけのサンプルでそう言い切るのは無理がある。でもこれが今から20年ほど前までは(現注・ま、二十世紀までは、という感じでしょうか)、わりとどこの家でも、家って書くとアレだけど、家庭とかじゃなくてもひとり暮らしの部屋でさえ、部屋にいる限りテレビのスイッチはつけておくものだった。
もちろん音楽とかを聴く時だったり仕事や勉強、あと集中して読書したい時は別だけど、とくに理由もなくテレビを消した状態の方が変だったと思うんです。
そんな感じだから、とくに見たいわけじゃないし、まるで熱心には見てないんだけど、何となく毎週見ている番組も結構あった。
それこそ前に書いた朝の情報番組なんかはそうなんだけど、他にも今思い返せば「たいして面白くなかったのに、あれ、なんでずっと見てたんだろ」みたいなのはいろいろあって。
たとえば「ヒントでピント」。ま、クイズ番組というか、今で言えば脳トレに近いかもしれない。とにかく知識量を競う類いのクイズではなく、番組タイトル通り、ヒントから答えを導き出す、みたいな番組でした。
司会は土居まさる。もうちょっと上の世代の人には「若者の代弁者」みたいなイメージがあるみたいだけど、アタシの世代だとほぼ「ヒントでピント」のイメージしかない。
この番組でやたら印象深いのは、毎週ゲストが男女ひとりずつ来るんだけど、レギュラー解答者にまるで太刀打ち出来ないんです。完全に「コツ」みたいなものがあり、コツがわかっていないゲストは本当に答えられない。
だからゲストの発言は最初の挨拶と、途中のゲスト対決くらいしかなく、あとはひたすら置物状態。
とにかくまったく見せ場がない。こんなゲストの意味がない番組もなかったと思います。
さてさて、そこはどうでもいい。
アタシの場合は「面白がってないけど毎週見てた」番組が「ヒントでピント」だったけど、これは人によって違うはずです。
ただ、誰しもそういう番組があったはずで、でも今の時代、何となくテレビをつけてる人が減少してるんだから、その手の番組は難しいよね、みたいな話を書こうと思いまして。
しかし本当にその手の「何となく見る類いの番組」(以下、長ったらしいので「何となく番組」とする)が不必要なのかとなると、これが結構わからない。
テレビの総視聴時間が減ってるんだから、その短い時間を確実に獲得するために、製作者側は集中出来る番組を作るべく頑張る。まァ、たしかにそれは一理あります。
けど、もうそうなったら別にテレビじゃなくてもいいじゃん、と思ってしまう。この場合のテレビとはブロードキャスト、つまり放送のことで、別にテレビではなくてもYouTubeでもいいし、レンタルDVDでもネットストリーミングサービスでもゲームでもいい。広義にはテレビに含まれるのかもしれないけど、それこそ録画した番組でも良いわけです。
つまり「今やってる、リアルタイムである必要がない」ということになる。リアルタイムで見ないと意味がないのはスポーツ中継でしょうが、それだってDAZNなんかがあるわけで、放送である必要性は限りなく薄いんじゃないかと。
テレビ番組は「集中させて番組を見させよう」となると一気にライバルが増える。しかも作り込まれた映画や、まるで先の読めないスポーツ中継と渡りあわなきゃいけない。これは昨今番組制作能力が落ちてるとまで言われる中でかなりしんどいことだと思うんです。
ところが「何となく番組」であればほとんどライバルはいない。せいぜいラジオくらい。
ネットやゲームはある程度集中力がいるのは当然ですが、スポーツ中継や作り込まれた映画もそれなりの集中力が必要です。
そうなってくると、ライバルひしめく集中チームではなく、何となくチームにいる方が結果的に独占出来て良いようなね。
というか、それなら画面にもっといろんな情報を表示させておいた方がいいんでない?とも思う。
出演者が喋るたびにひと言ひと言テロップが出ることに「音を聴いてなくても内容がわかるから便利」とか「ウザいだけ」と意見が分かれますが、テロップだけじゃなくてもね、それこそ朝の情報番組みたいに常時、時刻とか天気予想とかニュースとかスポーツの経過結果とか表示させておいたらどうですかね。
アタシはテレビ放送が行き着く最終形態は「サブポジション」だと思っている。
極端に言えば通常放送の時は音声すらいらない。いやあってもいいけど音声がある前提では番組を作らないってことです。
番組として必要なことはもちろん、生活の上で必要なことや便利なことは全部画面に出しておく、と。
メインはネットだったり音楽だったり仕事だったりでいいんです。そこと戦おうとしても絶対に太刀打ち出来ないんだから、あくまでサブの位置で戦う。
いわばはじめから「テレビってのは集中して見るもんじゃない、あくまで「ながら見」専用ですよ」という立ち位置をはっきりさせるっつーか。これならどことも競合しない。
問題は製作者側がそこまで割り切れるかですね。
テレビマンとか人一倍プライドが高そうだし「は?何でオレたちがサブなわけ?」となるのは目に見えている。
ま、あくまでメインの座にしがみついて、極めて勝算が低い「集中チーム」で戦うのか、それとも唯一無二の「映像系何となくチーム」で戦うのか、それはアタシが決めることじゃないけどね。