鼻の出る幕
FirstUPDATE2018.1.20
@Scribble #Scribble2018 #からだ #老いらく 単ページ 嗅覚 衰え #みうらじゅん

別に鼻の穴からオカシナモノがニュルニュル出てくる、みたいな、そんな気持ち悪い話ではありません。当たり前ですが。

前に、どうも昨今プチ潔癖みたいな人が増えてるんじゃないかというような話を書きました。
まァ、潔癖自体は一種の神経症なのですが、接触があるなしに関係なく「ニオイ」にたしいても、かなりうるさい世の中になってはきてるんじゃないかと。
でも冷静になって、本当にそんな世の中になってるのかと考えてみると、実際はそんな変わらない気もする。たしかにタバコや酒のニオイが、みたいなことで激昂したり上から目線になる人もいるんだろうけど、少なくともアタシはネット上でしか知らない。つまりリアルでそんな人に会ったことがないわけで。
もちろん口に出してないだけの可能性もあるんだけど、本当に強い嫌悪感があれば、もっと態度に出ると思うんですよねぇ。

さてさて、アタシの好きなみうらじゅんの話ですが、ニオイにかんして面白いことを言ってて。
世の中がオシャレな方向に流れすぎて、良い悪い関係なくニオイがあるものが敬遠されるようになったんじゃないか、みたいな話なんですが。
しかし、どうも、オシャレ云々にかんしては引っかかる。つかオシャレとかじゃなくて、これはもしかしたら年齢とも関係があるんじゃないかとね。

わかりやすい例で言えば「屁」のニオイです。
たしかに臭い屁は本当に臭い。しかし顔をしかめるほど不快かというと、少なくとも今は「あ、屁のニオイ」くらいにしか思わない。つか仲の良い友人なんかの屁だと、臭すぎると逆に笑えたりします。
しかし昔からそうだったかというと、そんなことはない。うちの祖父の家は汲み取り式の便所だったんだけど、とにかく臭い。いや便所の臭さは我慢出来てもバキュームカーのニオイは強烈で、うわっバキュームカーが来た!となったら逃げたものです。

アタシが今まで味わったなかで、もっとも耐えられないニオイと言えばゴム処理場のニオイです。
昔付き合っていたカノジョの実家の近くにゴム処理場があったんだけど、もうマジで耐えられなかった。よくこんなところに住んでいるな、いやもっといえばよくこんなところに家を建てたな、とすら思ったものです。

あとこれは今でも正確には何のニオイかわからないんだけど、昔付き合っていたカノジョ(上記とは別人)の住むアパートに行ったら、果てしなくゴム処理場に近いニオイがする。
カノジョに、これ、何なの?と聞いてもわからないという。もうカノジョの部屋にいるだけで頭が痛くなってくる。それくらい臭い。
どうも他の部屋の住人(たぶん女性)が何かを煮込んでいたみたいなんですが、ある時、例の部屋に友人が遊びに来たみたいで、その友人の声が漏れ聞こえてきたんだけど、これが驚愕モノだったんです。

「うわーっ、何この良いニオイ!メチャクチャ美味しそう!!」

・・・おい、顔もわかんないけどお前。マジで鼻の手術しろよと本気で思いましたもんね、ええ。

ところが今はといえば、臭くて耐えられない、みたいな場面にとんと縁がない。
いやもちろん、くせーな、と思うことはありますよ。そういや前に冷蔵庫の裏にタマネギが落ち込んでるのに気づかなくて、んでタマネギが腐って強烈なニオイを放ってたこともあったな。
しかし顔が歪むほどの思いをしたタマネギ事件が10年前(現注・たしか2008年だったと思う)。それ以降はない。ただ、あ、これは下水のニオイだな、臭いな、と思うくらいで、顔を歪めることもないし頭が痛くなることもない。

でもこれって逆に言えば、本当に良い香りにたいしても鈍感になってるのかもしれないな、と。
アタシは植物をこよなく愛する仮面ノリダーのような人間ではないので、花の香りがどーとかはどうでもいいんだけど、食にかんしてもニオイで味わうことが出来なくなってるのかもと思うと、ちょっと悲しい。
松茸なんか最たるものだけど、ぶっちゃけ味なんかどうでもいい、香りがすべて、と言うような食べ物は結構ありますからね。そっちが鈍感になると食べる楽しみまで減っちゃうわけで、それはちょっと。

どうもこれは慣れの問題ではない気がする。いやはっきり言えば嗅覚の衰えなんじゃないか。同じニオイでも立ち去りたくなるほどにならないってのは、アタシの鼻には響いていないんじゃないか、と。
視力をはじめ他のパーツは衰えがどーのこーのと言われているのにたいし、嗅覚はあまり言われない。けどよくよく考えれば当たり前の話ですが、嗅覚だって衰えないわけがないと思うんですよね。

もちろん衰え方は千差万別だとは思う。視力みたいに暗いところで本を読んでると眼が悪くなるぞ、に類似した「◯◯してると鼻が悪くなるぞ」みたいなのもきっとあると思う。
もう仮定も仮定の話だけど、もしかしたら引きこもりは嗅覚の衰えが遅いのかもしれない。何故と言われてもわからないけど、特定のニオイしか嗅いでない環境の方が何となく遅い気がする。
そう考えるとネットで異様なニオイ叩きはわかるんですよ。たぶん彼らは嗅覚が鋭いんですよ。鋭い分、アタシらの年代なら些細と思えるようなニオイでさえ顔を歪めたり頭が痛くなったりするっつー。

たぶんどっかの大学かなんかでこの辺の研究もおこなわれているんだろうけど、もうちょいはっきりしないかなぁ。だって嗅覚って視力に負けないくらい大事なものですから。嗅覚があればこそわかることもあるんだからね。







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