グループサウンズ、といえば、ちょうどアタシが生まれた頃に起こったブームなんだけど、これほど瞬間最大風速が強く、あっという間に萎んだブームも他にないでしょう。
過去、いろんなブームがありましたが、ほとんどのブームは発信する側はひとりとか一社、多くても10以下でした。
その数少ない発信者を多数の人たちが何らかの形で受け取る。これがブームの基本であり、昨今のハンドスピナー然り、ちょっと前のポケモンGO然り、女性アイドルグループ然り、であったわけです。
たしかに女性アイドルグループの時はAKB48やモー娘。あたりが一応先頭グループだったんでしょうが、まったくの無名の地下アイドルグループまで含めると到底10では効かない。おそらく数十はあったと思います。
しかしグループサウンズの場合、人気面でトップだったタイガースやテンプターズ、続くスパイダーズ、ワイルドワンズ、オックス、ブルーコメッツ以外にもレコードデビューしたグループだけで100を超える。おそらくアマチュアやセミプロはその10倍はいたことは間違いない。
そしてブームの期間。アイドルグループブームだって何のかんので10年くらいは保ったし、今なお本当の意味で人気が萎んだとは言えないグループも結構あります。
ところがグループサウンズにかんしては、かなり長く見積もっても1966~1969年、つまり4年。辛く見積もるなら1967年と1968年の、たった2年しかない、ということになってしまいます。
このグループサウンズブームは、たしかに極めて短期間で花咲き散りました。その一方優秀な人材、とくにコンポーザーを多数残したことで後世に評価されることになるのですが、当然ながら芸能界を去った人の方が圧倒的に多い。
たった2年の間に100以上のグループが「グループサウンズ」としてデビューした、そのうち生き残れたのは30人いるかどうか。つまりは9割以上の人は自分の名前(能力ではない)を押し出した活動が出来なかったということになるわけで。
と考えれば、このブームの特異性がわかっていただけるのではないかと。(しいて類似したブームを挙げるならイカ天時のバンドブームだけど、それでも生存率はまだだいぶマシです)
んでね、いつも思うんですよ。グループサウンズ全盛期に彼らのサウンドに影響を受けた当時中学生とか小学生とか、いったいどこに向かったんだろ、と。
自分もグループサウンズをやりたい!となったところで、その人が大人になった頃にはフォークやニューミュージックが全盛で、グループサウンズっぽいサウンドはすべてロックになっていた。つまり世の中からグループサウンズなんてもんは影も形もなくなっていたわけで。
いや本当はロックっぽいのがグループサウンズなんだけど、それでも、上手く言えないけど、ロックとグループサウンズはまるで違う。似てるようでっつーか出発点は同じかもしれないけど、グループサウンズは独自の存在であり過ぎたというか。
さて、アタシの行きつけ、と書くと大袈裟だな、ま、何度か訪れたことがある東京の某街にある某食べ物屋の大将の話を書きます。
この大将、若い頃に某グループサウンズの一員として活躍していました。はっきり言って無名のグループですが、ちゃんとメジャーデビューも果たしています。
当時のバンドの演奏能力はまさにピンキリで、酷いのになると楽器持って立ってるだけレベルですが、この大将のいたバンドは当時としては相当高い演奏能力を誇っていたといいます。
だけれども売れなかった。要因はいろいろあるんだろうけど、やっぱ、今考えて決定的だと思えるのはデビューが遅かったのです。
大将のバンドのデビューは1969年。さっき書いた通り、甘めで言ってもグループサウンズブーム最終年にあたる年です。
1969年になるとグループサウンズは世間では「終わった」と目されるようになっていた。そして翌1970年には先頭を走っていたグループを含めてほぼ解散している。つまり大将のグループが如何に演奏能力があろうと、もし仮に楽曲に恵まれようと、もうどうすることも出来ない時期に、よりによって終焉間近の「グループサウンズ」としてデビューしてしまった、という。
この辺は運としか言いようがない。あと一年デビューが遅ければグループサウンズではなく「ロックバンド」として売り出されていたはずで、演奏能力の高かった大将のバンドも売れた可能性は皆無ではない。もちろん逆に、グループサウンズだからメジャーデビュー出来たって可能性もあるけど。
この辺のことを一度大将に聞いてみたいんだけど、正直どうも聞く勇気がない。いや、もし「ロックをやりたかったんじゃない、グループサウンズをやりたかったんだ」ってな話なら、アタシが何も言うことはないわけで。
しかし同時に聞きたいこともある。それは「今、グループサウンズというジャンルがなくなったことをどう思うか」ということです。
やはり寂しいと思うのか、それともなくなってくれたから未練もなくなったのか。
ちなみに大将は今でもたまに小さいライブハウスでバンド活動をしている。だから音楽そのものに未練がないわけじゃないとは思う。
だけれども、未練は音楽そのものにたいしてなのか、ほんの少しでもグループサウンズという花火のようなブームにもかかっているのか。
その辺の気持ちは知りたいけど、知らない方が良いような気もするんですよねぇ。