見るだけ聞くだけの街・巣鴨/駒込/田端
FirstUPDATE2017.11.9
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 いちいち巣鴨、駒込、田端、と書くのは面倒なので、まとめて巣駒田(←テキトーに考えた造語)ってことにしますが、巣駒田といえば「年寄りくさい街」ってイメージになるのは間違いないでしょう。

 巣鴨は言うまでもなく「おばあちゃんの原宿」だし、駒込も、田端も、少なくとも現今はまるで若々しいイメージがない。良くいえば枯れた味わいのある、悪くいえばまったくハツラツとしていない、そんな感じです。
 だから一定以下の年齢の人には極端に興味を持たれない。もし<巣駒田>(巣鴨・駒込・田端の総称。アタシが勝手に付けた)で食いつく若者がいれば、確実に鉄道オタク、つまり鉄ちゃんです。
 というのもこの3つの街、線路がだいぶ面積をとっている。数えたことないから全部で何路線なのか知らないけど、これだけ線路が横並びになってる場所はそうそうありません。
 だから、ま、鉄ちゃんには面白いんだろうなあというのはわかるのですが、鉄道に興味のないアタシからしたら妙にイライラする。こんだけ電車が走ってるのに、何でもっと都合の良い場所で乗り降りできないんだ!みたいな。

 年寄りくさいか否かはともかく、たしかに<巣駒田>は古い。古いといってもアタシが興味を持つ近代史以降なのですが、名所めいたところがいくつかあります。
 たとえば巣鴨と聞いて、アタシがパッと思いつくのは巣鴨プリズンです。ま、刑務所ですわな。A級戦犯が収容されたっていう、あの巣鴨プリズン。
 しかし巣鴨プリズンは巣鴨にはない。禅問答みたいなことをいうようですが、巣鴨プリズンは今でいうところの池袋にありました。んでその跡地に出来たのがサンシャイン60です。
 つまり昔は巣鴨の範囲が広かった。巣鴨と池袋の間には大塚もありますが、そこまで含めて全部巣鴨扱いだったわけです。
 もうひとつ、戦前に大都映画という映画会社がありましたが、ここの撮影所が巣鴨にあり巣鴨撮影所と呼ばれていました。
 しかしこれまた現今の巣鴨とはかなり離れた場所で、三田線の西巣鴨駅の近く、JRでいえば巣鴨駅よりも板橋駅の方が近いくらいです。

 今度は駒込を飛ばして田端の話ですが、田端といえば田端文士村です。
 明治中期から大正期にかけて数多くの芸術家や文人が田端に居を構え、協力し合いながら文化的な生活を営んでいました。
 中でももっともビッグネームといえるのが芥川龍之介で、昭和に入り、芥川龍之介が自殺したこともあって文士村は消滅してしまいます。が、今なおそういった文化的な営みがあったことをかすかに漂わせており、大正期ごろのモダンな日本を感じることが出来るわけですが、まァ、その辺の話に興味がない人には、そーゆーところも「年寄りくさ」く感じるんだろうけど。

 アタシは何の偶然か、田端に在住する芸術家の人と懇意にさせてもらっているので、この界隈にはよく足を運ぶのですが、その方は別に田端文士村を再生させるためにそこに住んでいるわけじゃない。たまたま田端で生まれ育って、たまたま芸術方面に進んだだけです。
 この人のことを、アタシは勝手に友人だと思っているんだけど、年齢もアタシより20歳も上だし、その世界ではかなり有名な人なので、本当は友人なんてとてもおこがましいんです。しかし喋っててこんなに面白い人もいない。最後は必ずその人が酔っ払ってヘベレケになって家に帰っていくんだけど、その間ひたすらくだらないことばっかり喋ってる。つかアタシは聞き役。聞き役といっても向こうが一方的に喋ってるというより、アタシがその人を一方的に無理矢理喋らせている。
 つまりどんどん質問だけする、みたいな感じなのです。質問たってマジメな話じゃなくてくだらないことだったり懐かしいことだけど。

 どうもね、アタシは聞き役ってのが好きなんですよ。
 もちろん興味のないことなら一秒とて聞きたくないけど、興味のある話なら延々聞いていられる。んでそれが実に楽しい。だからどんどん話題を振って、こっちが聞きたいことだけを聞くんです。
 この芸術家の人以外にもこの界隈(<巣駒田>)にはアタシが興味がある、そしてその辺のことに知識がある人が何人かいて、誰と会おうがアタシは聞き役。こっちからは何も発信しない。
 鉄道オタクにとっては<巣駒田>は鉄道を「見るだけ」の場所だけど、アタシにとっては「聞くだけ」の街です。ひたすら受動的。こっちからは何も出来ない。こーゆーこと書くと怒られるんだろうけど、ま、巣鴨プリズンのA級戦犯と同じです。

 もちろん巣鴨(とは言えない地域だけど)には撮影所があったり、田端には文士村があったりしたわけで、これらは確実に発信する側です。
 発信基地みたいな土地でひたすら受け身になる。何だかフシギだけど、それが何とも心地良いんだからしょうがないでしょーが。

実はこの<巣駒田>にはまだまだ「文化の香り」みたいなのが残ってて、アタシは今でも電気要素のない工作をやるとなったらまず巣鴨に行く。んで懇意にさせてもらってる模型屋さんに相談させてもらう。そういうことが出来る街なんですよ。で、たぶんそういうカラーは変えようがないんだろうな。




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