共通項のない街・ナンバ
FirstUPDATE2017.9.23
@街 #大阪 単ページ ナンバ 難波 道頓堀 戎橋 グリコ はり重 PostScript

 こないだ、といっても結構前だけど「ごぶごぶ」でね、ゲストのTKOが「吉本芸人と松竹芸人では同じミナミでも遊ぶエリアが違った」みたいな話をしててね。ああ、これは何となくわかるわぁと。

 「ミナミ」では若干広すぎる、「道頓堀」では今度は若干狭すぎる、ということでエントリタイトルは「ナンバ」としましたが、まァニュアンスの問題でね。ナンバだって広く見積もれば難波中(なんばパークスの近く)だってJR難波駅のあたりだってナンバには、なるんだけど。
 アタシはナンバほど共通のイメージや共通の体験がない街、つまり各人でバラバラなイメージの街はないと思っています。
 大阪以外の人、もっといえば近畿地方で暮らしたことがない人にとって、ナンバ、ではわかりづらいからあえて道頓堀と書くけど、道頓堀のイメージといえば、もう誰が何と言おうとグリコの看板でしょう。おそらく通天閣や大阪城と並んで観光地的観点という意味でのランドマークであり、「ナンバ?どこにあるの?」「ほら、あの、グリコの看板がある」「ああ~!あの!!」みたいな会話が成立してしまう場所、というか。

 だけれども、ナンバと縁がある暮らしをしていた人には、グリコの看板は逆にピンときづらい。
「ほんならグリコの看板のあたりで待ち合わせしよか」「グリコの看板?どこやったっけ」「何ゆーてるんや、ひっかけ橋のとこやん」「ああ~、あそこか」
 グリコの看板よりひっかけ橋といった方がわかりやすかったりする。
 けど、じゃあ大阪の人は「あの辺はひっかけ橋って印象」なのかといえば、違う。もう、人によって見事に違うといった方がいい。
「前に二丁目劇場があった」
「ツタヤのとこやん」
「橋のたもとに派出所があるやろ、あそこや」
「カーネルサンダースが飛び込んだ」
「ずーっと南に行って、アーケードが終わったところ」
 これで全部ではないと思う。まだまだ、無限にありそうな気がする。そして全部ピンとくるワードであり、全部ピンとこないワードでもあるといえると思うんですね。
 要はみんなそれぞれに自分だけのナンバ像みたいなものがあるって話です。

 ナンバ、というのは、さっき書いたように広げようと思えばどこまでもエリアを広げることは出来るのですが、一般的にナンバと言われるエリアはそこまで広いわけじゃありません。
 千日前は千日前だし、心斎橋は心斎橋。道具屋筋や日本橋まで行くともうナンバではない。
 アメ村を心斎橋にカテゴライズするかナンバにカテゴライズするかは微妙なところだけど(地理的には心斎橋の方が若干近い)、ま、アメ村を含めたとしてもそこまで広いエリアではないのです。
 なのに何故そこまで各人でイメージが変わるのかといえば、もう無意識の縄張りがあるとしか思えないんです。
 1990年代後半、アタシは毎晩のようにナンバにいました。
 もうなくなっちゃったけど御堂筋沿いにあったクラブで働いていた&歌っていたからで、そんな感じだったから当然ナンバには思い入れが強い。
 明け方になって、フラフラの状態で家路に向かう、ま、これはいろいろ失敗したケースです。成功した場合はしっぽりと、ナンバの外れにある・・・、ああこれはやめとく。
 ホント、悪いことばっかりしてたんだよなぁ。
 悪いことをしない場合でも友人と朝方のナンバの街をほっつき歩いた。ま、せいぜい飯を食うくらいなんだけど、誰もいない、ゴミが散乱した「夢の跡」の道頓堀は今でも鮮明に憶えています。

 しかしそこまで「いろんなところ」をほっつき歩いていたわけではない。今考えると非常に狭いエリアです。
 今では東京にも店舗がある「つるとんたん」ってうどん屋がね、道頓堀の外れにあったんですよ。朝方まで営業したから、たまに行ったりしてたんだけど、もうこの辺りまで来るとアウェイ感が凄いんです。
 距離にしたらほんとたいしたことないのですよ。余裕で徒歩圏内です。なのに完全に遠征気分。
 なんかね、テリトリーみたいなのがあって、それをはみ出すってのは異様に心理的な壁があった。「自分たちの庭からは、極力、出ては、いけないよ」みたいな。
 だから最初に書いたTKOの話はものすごくわかる。壁を超えたら縄張り争いになって大喧嘩が始まる、みたいな話じゃなくてね、ここは庭じゃないから遠慮しよう、もし通る時はよそ者の顔をしておこう、みたいな感じ、と言えばいいのかね。

 となると当然、各人庭が違う。庭が違えばひと口にナンバと言われてもイメージが異なるのも当然なのです。
 当時のアタシでいえば、御堂筋からひっかけ橋(さっきからひっかけ橋と書いてるけど、もちろん戎橋のことです)くらいまでが「本庭」、金龍ラーメン(道頓堀の店舗の方ね)くらいまでが「準庭」って感じで、ひっかけ橋を渡って心斎橋方面だったり、阪神高速より南になってしまうと「よその土地」って感じでした。
 そんなアタシにとってナンバのイメージは「はり重の辺りから道頓堀を望む」景色です。たぶんそんな人は少ないと思う。
 でもそれでいい。だって本当に、人によって違うんだから。ナンバって街はね。

「はり重からひっかけ橋」に限定しても、もうずいぶん変わっちゃって、松竹座の向かいには何故か伝説のすた丼屋があるし。アタシからしたら伝説のすた丼屋なんか関東の象徴のような店がよりによって<あそこ>にあるってのが、もう。




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