イントロで点を稼ぐ曲いろいろ
FirstUPDATE2017.7.26
@Scribble #Scribble2017 #音楽 #藤子不二雄 @クレージーキャッツ #ゲーム 単ページ ツカミ 運命 SHOWME おれたちゃ怪物3人組よ いろいろ節 スーパーマリオブラザース

たぶん元は芸人用語なのでしょうが「ツカミ」という言葉があります。舞台に出てきた芸人がまず最初にやるべきことは「客の関心を自分たちに向ける」ことであり、客の心を掴む、転じて「ツカミ」という用語になったのでしょう。

これは別に芸人に限った話じゃなく、たとえば営業マンなんかツカミの能力=営業能力といえるほど重要だし、いや、むしろね、たとえ媒体を介してでも初対面の人と接する仕事でツカミが不必要な仕事はないといって差し支えないとすら思うわけですよ。
もちろん音楽にもツカミがある。クラシック構成であろうが歌謡曲構成であろうが、出だしのインパクト最重視みたいな楽曲は数え切れないくらいあります。

死ぬほどわかりやすい例でいえば、ベートーベンの「運命」。あれ、あの出だしの「♪ ジャジャジャジャーン!」がなければ、これほど後世に、それもクラシックなんか何の興味もない人にまで広がったかといえば疑問です。
「男女7人秋物語」の主題歌だった「SHOW ME」なんか、出だしが楽曲のすべてといっても過言ではない。歌唱も歌詞も、メロディさえも「たいして重要ではない」と言い切れるのはこの曲くらいでしょう。
今回はそんな徹底的なイントロ重視の楽曲のことを書きたいと。

◇ おれたちゃ怪物三人組よ
カラーアニメ版「怪物くん」のエンディングテーマですが、実際はそこまでインパクト重視ではないのです。
だけれども、とにかく耳に残る。最後のフランケンの「♪ あーこーりゃこりゃ」を含めてすべてかき消すくらい、イントロの印象が強いのです。
作曲は耳に残りやすいメロディを作らせたら天下一品の小林亜星。なんだけど編曲は小林亜星とコンビを組むことが多かった筒井広志です。
作曲者と編曲者が別の楽曲の場合、どこまで作曲者がメロディを作ってるかはまちまちで、歌唱がある小節だけメロディをこしらえることもあるし、イントロからエンディングに至るまで、ほとんどメロディを作ってしまう人もいる。
だからこの徹底的に耳に残るイントロのメロディを作ったのは小林亜星なのか筒井広志なのかはわかりません。ま、両方の功績っつーことで。

話は逸れますが、最近カラーアニメ版「怪物くん」の一回目を見て、相当感心したんですよ。
Bパートの「怪物くん対押し売りくん」はかなり作画がマズいけど、Aパートの「怪物くん登場」は作画レベルも安定してるし、演出も構成も、どっちも実に良く出来ている。
この版のアニメはどうしても後半から怪物くん他のキャラクターデザインが悪い方向に変わったって印象が強かったんだけど、第一回目を見る限り、本当にちゃんと作ってるのがわかる。それだけでも見る価値がありました。


◇ いろいろ節
本当はなるべくクレージーキャッツネタはやりたくないんだけど、インパクトの強いイントロの話でこの楽曲を抜くわけにはいかない。
1990年に発売され大ヒットとなった植木等の「スーダラ伝説」以前にも様々なクレージーキャッツのベスト盤が発売されていましたが、何故かこの「いろいろ節」はどのベスト盤にも収録されてなかった。んでヒット曲メドレーである「スーダラ伝説」でもワンフレーズしか歌われておらず、映画の挿入歌としても「クレージー作戦・先手必勝」はまったく違うアレンジ、「日本一の色男」はイントロがカットされています。
だからアタシは長い間、レコードテイク(またはレコードテイクに準じたアレンジ)の「いろいろ節」をフルで聴いたことがなかった。

初めて聴いたのは1991年発売の「クレイジーキャッツシングルス」だったんだけど、本当にぶっ飛んだ。いや正確には「え?これ、いろいろ節だよね?」とパニックになったといった方がいい。
これ、いまだに元ネタがわからないんだけど、演歌調というか浪曲調のイントロから始まって、歌唱パートになると義太夫というか新内というか小唄というか、そういう感じからさらにいつもの植木節に転調するわけで。
それにしても二度も転調するのはすごい。有名な「ハイそれまでョ」だって「ムード歌謡(イントロ)→ムード歌謡(Aメロ)→ツイスト(サビ)」と一回しか転調してないのにさ。
たぶん植木等の歌の中でもイマイチマイナーな存在感なのは、ちょっと構成を凝りすぎてるのかもね。そーゆーのは、パッとウケるのは難しいし。
だからこそ思うんだけど、何でここまで異様なイントロも持ってきたんだろ。さすがにチャレンジしすぎのような。


◇ スーパーマリオブラザーズ地上BGM
ゲームのサウンドトラックが特殊なのは重々承知していますが、それでも「出だしのインパクト」として最高峰なのはコレだと思う。
スーパーマリオに限らず、ゲームの「音」を口三味線でやってみて、となったら、ほとんどの人は「♪ チャラッチャチャラッチャッ!」とやるんじゃないかな。あんまり知名度のないのをやったら場がシラけるから、どうしても定番っつーか昔のゲームからみたいになってしまうとは思うんだけど、「ドラゴンクエスト」や「ゼビウス」あたりと比べても、やはり圧倒的に知名度が高いんじゃないかと。

それに短くて一発で伝わるのがいい。これがドラクエになると「♪ チャーラチャーチャーチャーチャ チャチャチャーチャ チャチャチャチャーチャ」くらい長くなるし、そこまでやらないと伝わらないと思うからね。
それにスーパーマリオブラザーズ地上BGM、イントロに続くメロディは、実は弱いんですよ。つまり出だしがすべてだといえるわけで、そうなるとここに名前を挙げないわけにはいかないのです。


昔「ドレミファドン」っていうイントロクイズの番組があったけど、今回挙げた楽曲は、楽曲の知名度はさておき、イントロクイズとしてはあまりにもわかりやすい。しかしこれが中抜きでメロディを出されると、咄嗟にどの曲がわかりづらいものが多いんです。つまり本メロよりイントロに異様に注力されてるっていうね。そしてそれは正解だと思うわけで。
だからイントロにもっと神経を使うべき、というのは簡単なんだけど、インパクトのあるイントロってのは本当に難しいんだよね。単にガツーン!とした強い音を持ってくればインパクトが生まれるかというとそうじゃないし。実際、今回挙げた楽曲はどれもガツーン系のイントロじゃないですし。

今回名前は挙げなかったけど「愛は勝つ」とか、あのピアノソロが浮かんだ瞬間「これはイケる!」と思ったらしいし、もしかしたら本メロってのは頭の中で捏ねくり回して良いものが出来るのかもしれないけど、イントロこそ本当に「天から降りてくる」ものなのかね、と思ってみたり。







Copyright © 2003 yabunira. All rights reserved.