ゲバゲバ90分のサントラこそ
FirstUPDATE2017.6.27
@Scribble #Scribble2017 #音楽 #テレビ 単ページ サウンドトラック たかしまあきひこ 宮川彬良 ゲバゲバ90分!

アタシは基本、映画は音楽で見る、という人間です。音楽、つまり映画のサウンド責任者が誰なのか、それを基準にしてっつーか、クレジットで一番気になるのは「音楽」だと。

これは映画だけに限らずテレビ番組でも一緒で、ま、映画みたいに誰が音楽担当かで見る見ないを決めることはないけど、一応は気にはします。
ドラマならドラマオリジナルのサウンドトラックが作られて、んで劇中で使われる。これは現在でも、過去に遡っても一緒です。
ところがバラエティになると、オリジナルサウンドトラックが作られるなんて稀で、せいぜいテーマ曲が作られれば良い方です。
が、留意したいのは、バラエティでオリジナルサウンドトラックが作られなくなったのはここ30年ほどの傾向なんですよね。つまりそれ以前はバラエティであろうが番組専属みたいな感じでコンポーザーがついて、オリジナルサウンドトラックを作っていたのです。

今でも回顧されることが多いバラエティ番組でいえば「8時だョ!全員集合」でしょう。
あれもちゃんも「音楽 たかしまあきひこ」とクレジットされている。たかしまあきひこはドリフターズの座付きコンポーザーみたいな立場だったので「8時だョ!全員集合」以外のドリフ番組、たとえば「ドリフ大爆笑」も「飛べ!孫悟空」も、志村けん単独番組の「志村けんのだいじょうぶだぁ」もたかしまあきひこが音楽としてクレジットされています。

「ドリフ大爆笑」はともかく「8時だョ!全員集合」なんかバックバンド(岡本章生とゲイスターズ)の生演奏が入るんだから、譜面が書けるちゃんとした人がいないと番組が成り立たない。というかバラエティ番組=ギャグ&音楽の時代は必ずコンポーザーがついており、その流れからたいして音楽が重要視されていないような番組でもコンポーザーが番組オリジナルのサウンドトラックを作っていたんですね。

最近は小康状態ですが、えと1990年代後半くらいからかな。昔のテレビ番組のサントラ(音楽テープ)を掘り起こしてCD化する、なんてことが続いたことがありました。
CD化された大半はドラマです。バラエティは、というとほんの一部しかない。たとえば「シャボン玉ホリデー」あたりすらCD化されていない。
ま、「シャボン玉ホリデー」にかんしては録音が残ってないのは確実なんだけど、他のバラエティ番組も音源がないのか、商売にならないと判断されたのか、ほとんどCD化されなかったのです。

そんな中、バッチリ音源が現存し、無事にCD化されたのが「ゲバゲバ90分!!・ミュージックファイル」です。
ゲバゲバ、といえば、あの特徴的なテーマ曲でしょう。実に軽快なマーチで、にもかかわらず宮川泰特有の「遊び」も内包されており、もう幾多の番組で流用されたかわからない。番組だけでなくCMでも何度も使われたし、微妙にメロディは異なりますが、ダイコクドラックの店頭でもしつこく流れていました。

コンポーザーは「編曲もできる作曲家」と「作曲もやる編曲家」に分かれると思っているのですが、宮川泰は完全に後者であり、アレンジャーとしての姿こそが本当の姿だと思っています。
だから他人が作曲した楽曲をインストにアレンジする、なんてのはお手の物で、この辺は息子の宮川彬良が見事に受け継いでますね。
ゲバゲバのサントラは基本的に宮川泰自らが作曲したはずです。一応「音楽」としては前田憲男もクレジットされていますが、テーマ曲にかんしては宮川泰が作曲もしている。

CDにはテーマ曲をさらにアレンジしたものがいっぱい入っていて、もしかしたら宮川泰のヨサと凄さを一番味わえるのはこのCDではないか、という気がする。
紛れもなく同じメロディなのに、全部ぜんぜん違う曲に聴こえる。とくにワルツふうのヤツなんか「別れのワルツ」(「蛍の光」のワルツアレンジ版)を彷彿とさせる仕上げをしており、あの軽快なマーチと同一メロディとはとても思えないんですよ。

今のバラエティ番組は「アリモノ」のサントラを使うのが常套化しすぎていて、もちろんそういう番組があるのは構わないけど、だったら逆に「全部オリジナルサントラ」のバラエティ番組もあってもいいんでない?宮川彬良もいるし、「あまちゃん」で音楽担当だった大友良英なんか「いつか「シャボン玉ホリデー」みたいな番組を手がけてみたい」と言ってるそうじゃないですか。

人材がいないのならしょうがない。けど人材はいるんですよ。あとはもう、やるかやらないか、だけだと思うんだけどね。







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