動かない、は嫌い
FirstUPDATE2017.6.21
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一応欠かさず「ひよっこ」をね、あ「ひよっこ」ってのはもちろん今やってる朝ドラなんだけど、完全に習慣化するほどキチンと見ています。

ところが以前書いた通りっつーか、その頃と変わらず視聴率が良くない。低視聴率になるような出来の悪さではないにもかかわらず、あんまり上がらない。朝ドラの最低基準といわれる20%にも届かない日の方が圧倒的に多いわけで。
視聴率が上がらない理由について、以前アタシなりの考えはある、と書いたんだけど、それを書こうかなと。
「ひよっこ」の前に前作の「べっぴんさん」のことから始めます。
「べっぴんさん」は途中まではそこまで視聴率が悪いわけではなかったのですが、終盤に入った頃から上がるどころか逆に視聴率を落としてしまいました。

これは展開に理由があります。
どうしてもTwitterなんかでは「ムカつくキャラがいる。そいつが許せないから視聴を止める」なんてのに目が行きがちですが、実はそこはあんまり関係ないんです。つかそういう理由で視聴を止める人は結局最後まで見なかったと思うし。
そうじゃなくて「べっぴんさん」の場合、終盤になった途端に展開がユルくなったんです。つまりドラマが動かなくなった。主要登場人物が晩年に差し掛かっているんだからドラマチックな展開にならないのは、まァ当然なんですが、たぶん「あ、もう大きな動きはないな、だったら見逃しても大丈夫」みたいな感じになったはずなんです。

アタシは「べっぴんさん」にかんして基本的にホメたけど、終盤の展開は失敗したと思う。途中で映画を製作するという展開があったけど、どうせならそれをクライマックスに持ってくるべきだった。たしかに「あざとく」はなるんだけど、朝ドラなんて多少あざとい方が良いんですよ。
もうこれ以上商売の話や家族の話は広げられないんだから、トラブルを起こしやすい、なおかつ元サヤに収まりやすい映画製作を最終週に、というのは視聴者の気を引っ張る意味でもやるべきだったんじゃないかと。

「ひよっこ」がイマイチ視聴率が上がらないのは、視聴が習慣化し始める時期にユルい展開をしたことだと思うんですね。
脚本の岡田惠和はおそらく同氏作の「最後から二番目の恋」同様、会話劇にしようとしているのでしょう。
それは実によくわかるし、実際会話劇としてよく出来ている。ギャグ、というよりは「くすぐり」なのですが、随所に笑いを散りばめて、展開の少ないドラマを面白く見せることには成功していると思います。
ただ、本当に視聴者が、正確には朝ドラの視聴者が「会話劇=展開の少ないドラマ」を求めているのかというと、少し疑問符がつきます。

岡田惠和は過去にも朝ドラを手がけているし、朝ドラも手練れているとは思うんです。しかし氏が以前手がけた朝ドラ「おひさま」はもう6年も前になる。これは結構重要です。
結局ね、朝ドラは「あまちゃん」以前と「あまちゃん」以降に分かれると思う。
「あまちゃん」以降、普通の人の朝ドラ感が変わった、は言い過ぎにしても、視聴層は変わった気がする。

アタシは「あまちゃん」以前に見ていた朝ドラは「ちりとてちん」と「カーネーション」くらいですが、この辺まではわりと「何も起こらない週」が結構あったというか許されていたような気がするんです。両方とも若者も見る人は見てるけど、あくまで対象は中年以降だったから、「何も起こらない」ことより「展開が早くてついていけない」ことの方が問題だった。
ところが「あまちゃん」以降、それが変わった。
とにかくどんどん話が進む。何もなさそうにみえても裏で展開している、というのが普通になった。

前作の「べっぴんさん」も、とくに序盤は恐ろしいほど展開が早く、「あまちゃん」以前の朝ドラならネチネチダラダラやりそうな「細うで繁盛記」的な虐め展開も一週もかけずにあっさり終わってしまった。
「ひよっこ」の場合、主人公がやっとラジオ工場で働くのに慣れて、次の展開を視聴者が期待している段階で、海に行ったり、といったマッタリ展開にしてしまった。
また、主人公たちの母親の会話劇でほぼ15分まるまる使って、みたいなこともやった。
どちらも面白い展開だったし、アタシは楽しめたんだけど、では話が動いたかというと動いていない。

たぶん、それこそ岡田惠和としては、そういった会話劇が延々続く「最後から二番目の恋」や「ど根性ガエル」で「動かない物語」を成功させていたからイケると踏んだんでしょうが、「あまちゃん」以降の朝ドラとしては想像以上にリスクが高いことだったんじゃないかと。
朝ドラに限ってなのかもしれないけど、今の視聴者は想像よりもずっと「動かない展開」が嫌いなんだと思う。
次から次へと、もう詰め込みすぎなくらい詰め込んだ展開が好きなんじゃないか。「ひよっこ」も一応目配せはやってるんだけど、たとえば父親の失踪の話もあまりにも動かなさすぎて、もう視聴者を引っ張りきれなくなっている。

アタシはね、そもそも「ひよっこ」は話の展開の面白さをやろうとはしてないと思うし、あくまで会話劇の面白さで魅せていこうとしているってのは、それはそれでぜんぜん良いと思ってるんだけど、微妙に朝ドラのニーズと合致していない。だから「面白いけど視聴率はイマイチ」って感じが続いてると思うんだけどね。







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