決まりきった街・中野
FirstUPDATE2017.5.26
@街 #東京 #オタク/マニア 単ページ 中野 ブロードウェイ 地下 戦利品 PostScript #1970年代 #本 tumblr

 近隣の人の事情は知りませんが、中野ほど訪れた人の向かう方向が決まってる街もないと思います。

 そりゃね、中野サンプラザに行く人もいるだろうし、北東方向の飲食店がひしめく場所も目標にする人はいるでしょう。
 南口でいえば、アタシなんかからすると、マルイを見ると「昔ここの床が抜けたんだ」と思うし(ま、とっくの昔に建て替えられてるけど)、どんどん南へ歩いて行って鍋屋横丁に近づくほどに「光クラブ事件」を思い出す。まだ街並みも昭和の香りが強く残ってるしね。
 中には外れといっていい場所にある島忠を目指している人もいるかもしれない。
 けど、ま、そういうブラブラ行為をするのはね、中野という街においては、邪道は言い過ぎにしても正道とはいえないような。

 中野の正道ルートはもう、中野サンモール商店街を通って中野ブロードウェイに行く、これしかない。友人が住んでる場合なんかを除いて「中野に遊びに行く」となればまず「中野ブロードウェイに行く」ということであり、「マニアックな趣味をお持ちなんですな」ってこととほぼイコールになるっつー。
 中野ブロードウェイへ行くとなると、最短ルートであり、北口を降りてまっすぐブロードウェイまで続いているサンモールを通るってことを意味するわけで。

 だから中野に遊びに行ってる人とは「新しいつけ麺屋が出来たよ」とか「あそこのロッテリア古いよな」みたいな会話が成り立つのです。
 と、さすがにここまで書いて不安になってきた。これ、一度も中野に行ったことがない人に通じる内容なんだろうかと。
 しかし、もう、中野という街の空気がマニアックなので、このエントリもマニアックにならざるを得ません。

 中野ブロードウェイ。まさにマニアの聖地です。マニアったっていろいろあるけど、インドア系のマニアなら、そして関東近郊にお住まいの方なら一度は足を踏み入れたことがあるんじゃないでしょうか。
 アタシも最初に行った時は嬉しかったね。でも嬉しがり方が変わってるっつーか、ああここに青島幸男が住んでるんだ、と。

 あそこ、上階はマンションになってて、そこに青島幸男の一家が住んでいました。あ、アタシが初めて行ったのは青島幸男がまだ都知事になるずっと前の話ね。
 ま、商業ゾーンでウロウロしてるわけがないんだけど、もしかしたら青島幸男と会えるかも、なんて都合の良いことを考えながら「まんだらけ」なんかを冷やかしたりしてたわけで。

 もちろん今ほど店舗はなかったけどね。今じゃまんだらけなんか中野ブロードウェイだけでいったい何店舗あるんだ、みたいな感じですが、せいぜい3とか4店舗くらいだったんじゃなかったっけ。それでも多く見積もりすぎかな。あんまり憶えてないなぁ。
 まんだらけ以外のマニアックな店も少なかった。あるにはあったけど、今ほどじゃない。確実にあったのは、まったくマニアックじゃない普通の本屋(これは今でもある)と、一階のやたら安い服屋。この辺はかなり古いですな。

 マニアックな店のことを書いてもしょうがないので、マニアックな存在の店について書きます。
 中野ブロードウェイでマニアックな店となると、何といっても地下の食料品売り場でしょう。1970年代っぽい古臭さがもうたまらない。ひしめき合ってるというか雑多というか、とりとめのないというか。戦後の闇市をそのまま地下に持ってきたような荻窪のタウンセブンとならんで、とにかく日本もアジアの一部なんだ、ということを強く実感できる場所です。
 余談ですが、モノホンのアジアを体験したければ、上野にあるアメ横センタービル(「あまちゃん」でアメ横女学園の劇場があるっつー設定だった場所)の地下に行くのがよろしい。ここはあまりにもナマのアジアすぎて、ゲテ系が苦手な人には危険なんですが。

 上階のマニアックな店を散々歩き回って疲れたら、サンモールにあるカフェやロッテリアまで行かなくても、地下にちゃんとコーヒーが飲める場所があります。スンゲェ狭いけど。
 だってそうでしょうが。せっかく中野にまできてね、何が悲しゅうてチェーン店のカフェやなんかに行かなきゃならんのだ?んなもんどこの街にもあるんだし、身も心も、そして抱えた戦利品を含めてね、ここでしか手に入らない感覚だったり品を手中に入れたのに、有り体の店に入ったりなんかしたら全部台無しです。

 そこまでしなきゃならんのが中野って街なんですよ。
 莫迦だねぇ、こんな、他人から見たらゴミでしかないモノに大金払ったりなんかしてさ、俺って奴は底なしの大莫迦だわ、と心の中でつぶやきながらコーヒーをすする、そんな街なんだから。
 自分が果てしなく莫迦な行動をしてるってのは、実は結構気持ちいいんです。お利口さんにはわからないかもしれないけど、莫迦も突き詰めると快感に変わる。
 そりゃ年がら年中莫迦ばかりしてニヤニヤしてたらモノホンだけど、いいじゃありませんか中野に来た時くらいは。莫迦になりきって莫迦な自分に酔いしれるのも悪くありませんよ。

 今回タイトルに「決まりきった」という言葉を使ったけど、決まりきってるのはサンモール→ブロードウェイというルートだけじゃなくてね、中野に足を踏み入れた瞬間「莫迦になるのが決まりきった」ってことでもあります。
 アタシだって思うもん。駅を降り立った瞬間、あ、もう、莫迦なモンが売ってる街に来ちゃったな、んで我慢できずに買っちゃうんだろうな。何しろ莫迦になるって決まってるんだから。

中野がフシギなのは、結局アタシにとって「お上りさん」的な街なんですよ。
あれだけ庶民的なムードを漂わせているのに、一回行ったらお腹いっぱいになっちゃって、しばらくはいいや、と思ってしまうというか。つまり住みたいと思ったことが一度もない。
さっぱり理由が思い浮かばないけど、それも含めてアタシは「年がら年中<莫迦>は嫌だ」と思ってるのかもしれないな、と。




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