研ナオコの「あばよ」はほぼ麦茶
FirstUPDATE2017.4.18
@Scribble #Scribble2017 #音楽 単ページ 研ナオコ あばよ 桑田佳祐 中島みゆき かもめはかもめ 音域 上手い下手 麦茶

本当なのか単なる噂か知らないのですが、また本で読んだのかテレビで見たのかも憶えてないんだけど「研ナオコの歌を作るのは大変」なんて話を耳にしたことがあって。

とにかく研ナオコは音域が狭いらしい。狭い音域の中で「研ナオコらしい」楽曲っつーかメロディラインですね、をこしらえるのが難しいのだとか。
この話がホントかどうかはさておき、実際研ナオコの歌は歌いやすい。
「あばよ」なんかはとくにそうなんですが、「かもめはかもめ」でも「夏をあきらめて」でもいいんですよ。いや、わざわざカラオケに行くまでもない。というか、研ナオコの楽曲ほど鼻唄で歌いやすいものもないんです。

♪ なにンも あッのひとッだけが せかッいで一番~

力みがまったくいらない。軽く、軽~く、歌える。しかも女性ヴォーカリストの曲でありながら基本的にキーが低いってのもオッサンにはありがたい。
ただね、ひとつだけ注意が必要なのは、モノホンはなるべく聴かないこと。モノホンってのは楽曲を提供した中島みゆきなり桑田佳祐なりがセルフカバーしたものですが、中島みゆきや桑田佳祐が歌ってるのを聴くと、まったく同じ曲なのに突然難易度が上がる気がするんです。それだけテクニックを使って歌ってるってことなんだろうけど。
そこへいくと研ナオコバージョンは「棒歌い」(っていうのかね。セリフが棒読みなら歌なら棒歌いかなと)であればあるほど奇妙な味がでる。抑揚なんかまるでなしで、感情も込めない。さも今楽譜を渡されました、みたいな感じで歌えばね、余計ニュアンスが出るんですよ。(ま、アタシは楽譜だけ渡されても歌えないけど)

それにしても研ナオコが歌う「あばよ」を聴いて、いや聴かなくてもいいや、鼻唄で「あばよ」を歌ってみたりなんかすると、水野晴郎じゃないけどつくづく思うんです。

いやぁ、音楽って本当に不思議なもんだな、と。

そもそもアタシはメチャクチャ歌謡曲が好きな人間ではありません。というか音楽にかんして雑食といえば雑食なんだけど、ほとんど興味のないジャンルも多い。
たぶんアタシら世代なら一番影響力が強いと思われるロックなんてジャンルとか、もう、見事に興味がない。

そういえば今から4年前にロンドンに滞在していた時、ロック好きの友人に「せっかくロンドンにいるのに、何でロックに興味を持たないのか」と言われたことがあります。
ま、ブリティッシュロック、なんて言葉は如何にアタシがロックに興味はなくても知ってるし、イギリスのロックバンドをいくつか挙げろ、と言われたら挙げられる。それくらいロックに疎い人間にさえ知れ渡っているほどの知名度のあるバンドがいっぱいある。
でもダメなんですな。何つーか、音的に興味を持てない。もっといえば肌に合わない。無理矢理理由を書くなら、たぶん、かきむしるようなギター音が苦手なんじゃないかと。
結局アタシが好きな「音」はスイングジャズやレゲエみたいなアナログ感バリバリの音。もっといえば管楽器が鳴り響くようなものなら、わりと何でもイケる。

誰だってそうでしょ。どうしても好きな音、嫌いな音ってのがある。音楽じゃなくて「音」です。
極端な話、黒板にチョークでキーッとやるような音ですら、まァ好きな人はいないだろうけど、そこまで嫌じゃない人と、教室から飛び出したくなるほど嫌な人に分かれると思う。
これは匂いとか味とかとほとんど一緒ですよ。苦手っぽい食材や調味料が入ってる料理は食べようと思わないのと同様、苦手っぽい音が入ってそうな音楽はやっぱ聴かないんです。おそらく生理的なことなので、こればっかりはどうしようもない。たとえロンドンに住んでようが苦手っぽい音が入ってそうなブリティッシュロックが好きになる道理はないわなぁ。

歌謡曲ってのは、たぶんもっと最大公約数で、誰が聴いても苦手に感じるような音が入ってないはずなんです。
でも逆にいえば、音楽そのものとしてのクセがないから、音楽としてハマるようなことは難しい。歌謡曲の入り口は常に歌手であり、音楽としては歌手の良さを引き出して、尚且つ大多数の人が聴いても不快に思われないことが重要なはずです。
なのに鼻唄になった途端、歌謡曲は突然飛躍する。
ハマるほど好きなわけじゃない。でも何度も何度も鼻唄で歌ってるうちに、それこそアタシでいえばスイングジャズやレゲエなんかと同じくらい重要な曲になったりする。

「あばよ」という楽曲自体には、どう考えてもアタシが淫する要素はない。たしかに中島みゆきも研ナオコも好きだけど、絶対に淫するまではいかない「音」です。
ましてや歌詞なんか、男性には一切関係ない内容で、歌詞に共感する、なんてこともあるはずがない。
だけれども、ただ、ひたすら「異様なくらい鼻唄として歌いやすい」、この一点突破で、個人的に欠かせない一曲にまでせり上がる。

さっき音を食べ物に例えたけど、食べ物でいえば「あばよ」に相当する食べ物ってなんだろうね。
特別好きな食材でも味付けでもない、でも異様に食べやすい、そんなもんってあるかな。
あ、厳密には食べ物じゃないけど、ひとつだけ思い当たる。
それは麦茶。別に麦茶の味がどうこうって飲み物じゃないけど、とにかく飲みやすいから一年中飲んでる。自慢じゃないけどここ10年以上、冷蔵庫から麦茶を欠かしたことがない。

「あばよ」は麦茶レベルまではいってないかな。いや、それでもやっぱ、ウマいマズいを超えた存在って意味では「ほぼ麦茶」でいいような。







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