野球の話っちゃ話なんだけど、映画の話でもあるわけで。
某掲示板で「なんで野球映画は少ないのか」みたいなのがあって、でも実際は結構あるよ、みたいな話になってたけど、題材をプロ野球に絞ると、やっぱりあんまりないと思うんです。
理由は落合博満が書いた「戦士の休日」っていう映画にかんする本にあったことに尽きる。つまりプロから見てると野球映画の野球シーンが不自然すぎて正視に堪えない、と。
別にプロ目線じゃなくてもね、素人目線でも野球映画の野球シーンのそのほとんどは酷いものです。そういや真田広之が主演の「ヒーローインタビュー」なんていう、トレンディドラマの残骸のような酷い映画があったけど、あれだけ身体能力が高く、ガタイのいい真田広之でさえ、野球選手としては不自然、もっとはっきりいえば不恰好すぎた。正直真田広之レベルで無理なら、普通の俳優では絶対不可能レベルです。
長嶋一茂が主演した「ミスター・ルーキー」は阪神ファンから見ても厳しい出来だけど、あれは東大野球部出身の井坂聡監督が「野球シーンがちゃんとした野球映画が作りたい」という発想で作られた映画だからね。というか井坂聡自体、別に阪神ファンじゃないというし。
だから元プロ、ノンプロ選手を使って、ほとんど違和感のない野球シーンになってる。長嶋一茂は長嶋茂雄に「投手の投げ方じゃない」とダメ出しされたそうだけど。
それでも「野球シーンがちゃんとした野球映画」ということだけは認めてもいいと思っています。
その代わり、今度はドラマ部が稚拙になってしまってたのは代償といえるのかどうか。とくに駒田のセリフなんか酷いもんだったしね。
正直現代を舞台にしたプロ野球映画はちょっとしんどいと思う。
「メジャーリーグ」は奇跡的にチャーリー・シーンが野球が出来る人だったので、それなりに見えましたが、まァ、例外でしょう。
ところが時代を昔にすると、わりと成立する。
「フィールド・オブ・ドリームス」とか、これは作られた時代自体が昔だけど「男ありて」とか。
どっちも個人的には感心しない出来だけど、野球シーン自体に不自然さはないんです。
たぶん「昔の選手なんて、この程度の動き」みたいな刷り込みがあるからなんでしょうね。
そういや、ひとつ、どうしても観たい映画があって。「栄光への道」(松竹)っていう鶴田浩二主演の映画なんだけど、これ、阪神が舞台になってる。んで藤村富美男や金田正泰が出てくるらしい。
どっかで上映しないものかしらん。というかフィルムが現存してるんだろうか。
というのも詳細を書いてもしょうがないけど、ちょうどこの後すぐに松竹の下加茂撮影所が火災にあって、かなりの数のネガが焼けちゃったんだよね。このせいで焼失した松竹映画が結構あるんですよ。
話が逸れたので戻します。
ベイスターズのドキュメンタリーを「FOR REAL」というタイトルで劇場公開したようです。
DeNAになってから「ダグアウトの向こう」というタイトルで、普段カメラが入れないところまで撮影したドキュメンタリーをずっと作ってましたが、とうとうこれを劇場公開したと。
いやぁ、これはかなりいいんじゃないかと思いますね。もちろんアタシは観に行かなかったけど、現代のプロ野球で映画を作るとなると、この形式しかないような気がする。つかどうもドキュメンタリー映画って最近作られなくなってるけど、もっとやればいいと思う。
これ、舞台裏だけじゃなくて、実際の試合を編集したものでも成立すると思うんです。
2003年の日本シリーズは、阪神ファンのみならずダイエーファンにも強烈な印象を与えた、歴史に残るシリーズでした。
アタシもすっかり忘れてたんだけど、当時の日記を読むと、星野仙一の勇退が決まっていた阪神はもちろんなんだけど、ダイエーも絶対勝たなきゃいけないシリーズだったということがわかります。
結局は翌シーズン限りでダイエーはソフトバンクに身売りするのですが、2003年頃からファンの間で「ホークスが消滅するんじゃないか」という危機感があったみたいなんですね。
ライオンズのトラウマがある人からすれば「また福岡から球団がなくなるかもしれない」というね、もしかしたらこれが最後の日本シリーズかも、みたいな感じがあったみたいで。そりゃ勝ちたいよなぁ。
とにかく、両チームのファンの思い入れも強く、これだけの「事情」があれば、もう名勝負にならないわけがない、というか。
この日本シリーズをね、アタシの友人の阪神ファンが録画していたのです。あ、ちなみに時代はVHSの時代でもHDDの時代でもなく、DVDに直接焼く時代です。
何しろ野球の試合は長いからね、長時間モードで録画してたんだけど、見せてもらってビックリしたんですよ。というのも、もしかしたら友人の持ってた機種の特性かもしれないけど、とにかくものすごくフィルムライクな映像だったんです。
それを見てね、アタシは「これを編集して劇場で上映すればいいのに」と思った。当然結末はわかっているんだけど、ダイエーファンにとってはハッピーエンドの映画として、阪神ファンにとってもアンハッピーエンドの映画として、それなりに受け入れられたんじゃないか。
全国でやる必要はないとは思う。関西と福岡と、ごく一部の東京の劇場(ミニシアターで構わない)だけで十分なんだけど、それなりに動員できたんじゃないかなぁ。
もし本当にやってたら、アタシなら観に行ったもん。負けるのはわかってるけど、最後のシーンで号泣した自信がある。何の自信かわからんけど。
そういうことだと思うんだけどね。2003年の日本シリーズ以外でも、楽天が日本一になった日本シリーズでも商売になったと思う。
いや、去年(現注・2016年)だってそうですよ。北海道と広島に絞れば、十分ペイできたはずなんですよ。
何というかさ、発想の転換ですよね。無理矢理役者に野球シーンをやらせても、少なくとも野球ファンは観に行かないですよ。それよりもっと単純にドキュメンタリーにしておけばいいだけなんじゃないかと。