平野ノラと能力と努力
FirstUPDATE2017.1.23
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最初ね、平野ノラって人を見た時、本当に年齢がわかんなかったんですよ。

もちろんネタ的にああいうメイク、つまり年齢がわかりづらいメイクですが、それでもたぶん、素顔はかなり地味な顔立ちなんだろうな、くらいは想像できます。ま、後になって素顔が公開されたりしたけど、たしかにこりゃ、どっちかっていうとバブルというよりは戦前顔ですな。
それはいい。つまりはね、バブルネタをやってるくらいだから、アタシと同年齢か、やや上くらいかな、みたいに思ってたんです。遅くして売れた、もしくは転身組、いわばエド・はるみのパターンかなと。
そしたら違った。もっと若かった。アタシより10歳も年下でした。

バブルは1980年代後半、広義でも1990年代の初めくらいまでなので、平野ノラの年齢だとバブルは子供の頃ってことになる。つまり彼女はバブルを「勉強」してネタを作っていた、ということなんですよね。
でもそこがこの人のエラいというか良いところで、「実は陰で努力してます」みたいなのを一切見せない。
本当はかなり調べてネタを作ってるはずなんです。大枠じゃ<笑い>までいかないから、小さいところをすくい上げてネタにしないと笑いにならないからです。
でも、平野ノラってさも「当時と今で感覚のズレがあるものを、さも今思いつきました」みたいな感じでやってる。それは立派な芸ですよ。

努力は陰でするものだ、みたいな風潮はどうでもいいんだけど、単純に損得だけでいっても努力って見せない方が得だと思うんです。
平野ノラの例でいっても、頑張って調べてネタをこさえました、みたいな空気が出ちゃうと、やっぱ笑えないと思うんです。
と書くと努力なんて意味がないという話みたいですが違うんです。努力はしてもいい。つかしなきゃダメです。でも努力が見えてしまうと肝心の能力が隠れてしまう。
努力に拍手する人って、能力は見てないんですよ。努力量だけを見てる。しかも一回しか通用しない。
アタシはね、仕事は能力を見てもらうもんだと思ってる。以前芸能や芸術方面で努力量を見てもらいたいなんて人はプロじゃない、と書きましたが、別に芸能芸術に限らず、努力を売りにするってのは能力がないと公言してるも同然じゃないかと。

というか努力自体が微妙なもんなんです。受取手側からしたらね。
努力して身につけたもの=頑張れば誰でも手に入れられる、ともいえるわけで、だったらこの人に仕事を頼もうって意味が薄くなる。
逆に何の努力もしてないけど、この人にしかできない、となったら、これはこの人に頼むしかないわけで、仮に裏で血の滲む努力をしていたとしても、そういのを一切見せない方が「いや、この人にしかできないんだから」と思わせやすいんじゃないかと。

それに、やっぱ、何というか、秀才より天才の方がありがたがられるんですよ。
イチローだって天才だからあんな存在になれた。でもイチローが一切努力してないかといえば、もちろんそんなことはありません。
だけれども、「天才でも努力する」ってのと「努力したから天才になれた」のではぜんぜん違う。
色川武大はもっとはっきりその辺のことを書いてて「努力して成し遂げたなんて羨ましくない」としていますが、色川武大に限らず人々が憧れるのは秀才ではなく天才です。

しかし成功した人は、能力面では天才に劣ったかもしれないけど、彼らもまた「努力することができる天才」なのです。
並の努力なら、よほどナメた奴以外は誰でもします。怠け者のアタシでさえも「成功のため」と思えば、やる。でも「努力の天才」の努力ぶりは常人レベルじゃない。つか常人が限界まで頑張ったとしても「努力の天才」の努力にははるかに及ばない。
これは間違いなく才能なんです。実際努力にも才能がいる。才能がないと努力さえままならない、というのが本当のところです。

つまり、もう身も蓋もないことをいうけど、能力的なことであれ、努力的なことであれ、結局成功した人は例外なく皆天才だった、ということになってしまうわけで。
でもそう言い切っちゃうと、あまりも悲しすぎる。凡人は所詮凡人レベルの努力しかできないんだから、凡人レベルの成果しか挙げられない。もし子供の頃に真顔でそんなことを言われたら死にたくなります。そこまでいかなくても「やってもやらなくても、どうせ凡人なんだから、努力なんかするだけ無駄」という考えにはなると思うし。

ま、大人になったら食っていかなきゃいけなくなるから、たとえ凡人でも努力しなきゃな、となるんですけど、子供でいえば限界まで頑張って70点、頑張らないと30点、さあ努力しましょう、といって納得するかというと、まァ、しないですわな。
そこで嘘が必要になってくる。頑張れば100点取れますよ、という嘘。100点取れる、なんてニンジンもいいとこかもしれないけど「大成功までは望まないけど、せめて人並みにはなって欲しい」という希望がつまった嘘です。
ただね、やっぱ嘘だとバレた時はややこしいし、「お前のためを思った嘘だった」と強弁したところで、そこまで子供に慮れ、というのは酷です。
かといって最初から「お前には才能がない」という現実を突きつけるなんて、もっと残酷なことだし。

ただこれだけはいえる。
天才じゃないかもしれないけど、人並みになることは子供が考えるよりはるかに大変なことです。人並みなんて誰でもなれる、なんてそんな甘いもんじゃない。もし誰でもなれるなら、アタシだって人並みになりたかったよ。
中学生くらいまではわからないかもしれないけど、テレビに出てる綺麗な女優さんレベルと結婚するなんてまず無理、それどころか相手の容姿問わず結婚できるか否かすら、実際は大変なんだから。
だから「努力なんか意味ないよね、むしろマイナスだよね」と聞かれたら、こう答えるしかないと思う。

努力なんかしたくなければしなくていい
今の時点でお前が天才か凡人かなんかわからないし
もし仮にお前が天才なら努力なんか一切しなくても
それでもある程度望む通りに出来るだろう
けど天才であっても「ある程度」で終わる
もし凡人なら最低ランクの人間になる
だから努力が得になるかどうかは責任は持てないけど
少なくとも損にはならないと思うがね







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