通し、で出発進行
FirstUPDATE2016.12.26
@クレージーキャッツ @植木等 @ハナ肇 @谷啓 @8時だョ!全員集合 単ページ @8時だョ!出発進行 下品 音楽性 痛々しい PostScript

 いやぁ、以前書いた通り、1970年代前半に放送された「8時だョ!全員集合」の音声が某YouTubeにアップされるとかね、まったくとんでもない時代ですね。
 しかも「8時だョ!出発進行」の音声までアップされてて。本当、嬉しい限りで。
 (Twitterでこの件を教えていただいた方、何故かコメントが消えてますが、ありがとうございました。正直いえば知ってたのですが、こういうことをタレコんでいただけるのはありがたい話です)

 「植木等ショー!クレージーTV大全」(洋泉社刊)をお持ちの方ならご存知でしょうが、「8時だョ!出発進行」で現存しているのは、わずか4回分。しかも番組全編、ではなく、最初のコントと、終盤のショートコントが断片的に残されているだけです。
 元はハナ肇が所有していたものですが、何故こんな編集した形で残したのか、少し理解に苦しみます。
 以前も書いたように、某所に番組まるまる残っている、みたいな噂もありますが、本当かどうかは定かじゃないし、アタシも見たことがありません。
 で、某YouTubeの音源です。
 アップされているのは

・第5回「クレイジーの強化合宿大脱線」(1971年5月1日放送)
・第16回「クレージーの海賊船出発進行!」(1971年7月17日放送)

 の2回分。何より貴重なのは、番組の頭から終わりまで「すべて」アップされていることです。(編集の問題か、一部音声が切れてはいるけど)
 このうち第16回の方は全部ではないけど映像が残されており、その一部が「植木等スーダラBOX」に収録されていますが、第5回の方はまったく内容がわからなかったものです。
 この第5回を聴いての、全体の感想をいうなら「感情がグチャグチャにかき乱された」ってことになってしまうのですが、少し詳しくみていきます。

 まずオープニング。童謡「汽車」の替詞ですが、ゲストに話を聞きながら、といった部分は初期の「全員集合」とまったく同じです。
 そしてコント。これまた「全員集合」と同じで、ハナ肇の「オーッス!」という挨拶から始まる(余談だけど、いかりや長介は「オーッス!」ではなく「オィスゥー!」)のですが、もうこのコントが耳を塞ぎたくなるような雰囲気なのです。
 もちろん「音」だけなので、かなり想像が入ってしまうのですが、音だけでも、あんまりウケてないのが、ありありとわかって、辛い。
 「全員集合」の場合、いかりや長介が振り役で、仲本工事、高木ブー、荒井注が流れを作って、加藤茶が落とす。非常にわかりやすい。
 ところがクレージーがやるとなると、それができないのです。

 当然ハナが振り役になるんだけど、他のハナ出演のコントを見る限り、この人はこういう役回りがあんまり向いてないんです。ボケかツッコミかでいえばボケの方で、裏方としてではなくコントの中で仕切ることは向いてなかったと思う。
 そして痛いのが、落とす人がないのです。
 クレージーで笑いを作るとなると、植木等か谷啓しかいないのですが、そして録音を聴く限り、強いて言えばレベルですが、谷啓が加藤茶のパートをやっています。が、前に出て行きたがる加藤茶と違い、谷啓は後ろに下がるタイプで、爆笑をさらうニンではない。
 植木等はというと引っ掻き回し役で、適任といえば適任だけど、構図としてはわかりづらすぎる。
 下品なネタも含めて、もう完全に「ドリフのネタを無理矢理クレージーがやってる」って感じなのです。

 「全員集合」の「盆回り」のようなオチの音もなく 、いきなりゲストの歌が始まる、という、なんともしまらない終わり方ですが、続いてのコーナーが「植木等のお作法入門」(植木等は「お作法講座」と言っている)。
 資料では「満員電車のお作法」となっていますが、実際は「痴漢のお作法」で、これまた下品極まる。
 音だけではわかりづらいですが、こんな内容を植木等が気持ちを入れてやっていたとはとても思えず、かなり辛い気持ちになりました。

 ところがこの後の歌のコーナーになって一変します。
 「さわやかな歌」をテーマにして、ゲストとクレージーで次々歌っていくのですが、植木等が「恋の季節」を歌ったりして、これは楽しい。
 何より凄いのはクレージーがバンド演奏をしているところで(コーナー司会の植木等が「今度はクレージーキャッツが伴奏するから、みんな歌ってね」といってるので間違いない。音も完全にクレージーの音だし)「茶摘み」を演奏、これに合わせて女性ゲスト陣が歌っています。
 クレージーの舞台を何度も生で観ておられる方のお話しですと、クレージーが伴奏(≠演奏)することはほぼ皆無だったそうなので、あまりにも貴重です。
 (余談ですが、現存する「シャボン玉ホリデー」で、「クレイジーリズム」をクレージーが伴奏してピーナッツが歌うシーンがありますが、完全なアテ振りです。つまり実際には弾いていません)
 これ、映像で見たかったなぁ。

 さらにゲストの歌を挟んで「クレージーのヒットパレード」のコーナー。
 これは歌のコーナーというよりは音楽を使ったコントで、この回はラテンをテーマにしています。
 とはいえ植木等も歌いますし、何度も「タブー」が流れるのが可笑しい。もちろん加藤茶の「ちょっとだけョ」より前です。(ハナが「キャバレーの曲はいいんだよ!」とツッコんでるのも面白い)

 この後エンディング。「ドンパン節」の替詞ですが、ちゃんとクレージーのコーラスで、ちょっと涙が出そうになりました。
 ちなみに加藤茶の「歯磨けよ!」といったセリフは、ハナ、谷、植木の3人が順番で言っています。

 最初のコントと「お作法入門」に関しては、酷さも酷しって感じなんだけど、後半からはクレージーらしさが前面に出てきて、非常に楽しい。感情がグチャグチャになったってのは、つまりはそういうことです。
 とにかくハナ肇が八面六臂の活躍で、植木等も向いてない(というか、はっきりいえば絶対にやりたくなさそうな)ことを懸命にやってる。
 唯一谷啓だけが、例えば痴漢の種類の説明なんかもサラッとやってて、つまりいつものペースでやってるので、それはそれで安心できます。

 ゲストのザ・ピーナッツが「なんの気なしに」をレコードテイクよりもジャジィなアレンジで歌っているのもいいし、音楽面は「全員集合」よりいいんじゃないかな?
 演奏は、資料がないのでわからないけど、たぶん「全員集合」と同じ森剛康とゲイスターズ(のちの岡本章生とゲイスターズ)だと思うけどね。第16回の方でゲストの舟木一夫が「森さんの指揮が~」といってるので、まず間違いないでしょう。

 でもさ、いくら百戦錬磨のクレージーでも、生の公開放送は、あんまり向いてないって思っちゃった。リハーサルもいっぱいしてるはずなのに、言い間違いも多いし、アドリブにも対応できていない。
 うーん、ホントに「クレージーは生の舞台が一番」だったんでしょうかねぇ。

「映画が一番つまらなく、テレビがまずまず、舞台が一番面白かった」ってのは何もクレージーだけに当てはまることではなく、もうすべてのコメディアン・ヴォードビリアンに当てはまることだと思っているわけで、この辺の考察はクレージーとは関係ない形でやるつもりです。




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