遊ばせるより作らせる
FirstUPDATE2016.7.23
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任天堂が、正確にはアメリカの任天堂ですが「Nintendo Classic Mini: NES」なるものを発売するそうで。

要はNES(アメリカ版ファミコン)の現代版で、カートリッジを刺して遊べる、内蔵ゲーム(30種類。わりといいラインナップ)で遊べる、HDMI接続できる、みたいなのが売りみたいですが、これ、意味あるのかなぁ。(現注・「カートリッジを刺して遊べる」というのは間違いだったんだけど、アタシの勘違いだったか、そういう誤報があったのかは不明)
そうはいってもね「今の時代エミュでいいじゃん」とか「中華製のファミコンコンパチ機がどこでも買えるのに」って話でもないんですよ。
意味って書くからややこしい。意義、ですね。それがどうも見えないっつーか。

諸外国では、いや日本でも社会現象になりつつある「Pokemon GO」で息を吹き返しつつある任天堂ですが、肝心のコンシューマ機は、どうもパッとしない。
IT部門のない任天堂が周回遅れのハード性能になるのは、もはや致し方ないことなのですが、ハード性能で勝負できないとなると、アイデアで勝負するしかないわけです。つまり「新しい遊び」を次から次へと提案していかなきゃいけない。
しかしこれはこれで難しすぎるんです。

新しい遊びを次々提案できる人材が必要になるからで、幸い任天堂には横井軍平や宮本茂といった「異能」がいた。だから任天堂はここまで大きな会社になったのです。
ところが「異能」なんて、そうそういない。宮本茂の次の人材、といっても「優秀な人材」は育てることが可能かもしれないけど、「異能」だけは育てようがない。
となると外から見つけてくるしかないのですが、どうもね、あんまりやってない気がするんですね、任天堂が。

アタシも「現代版ファミコン」は夢想したことがありました。しかし今回発表されたものとはまるで違う。アタシが夢想したのは、そりゃ「昔のゲームを遊ぶ」みたいな使い方はできなくはないけど、それはサブ。メインは「ファミコンソフトが開発できるファミコン」みたいなイメージだったんです。
何で今更ファミコンで作んなきゃなんないの?と思われるかもしれません。WindowsでもMacでもLinuxでも、今はいい開発環境がある。
でもアタシのイメージするゲームデザイナーはこれらの最新ハードじゃ育成できないと思ってるんです。

その、あんたのイメージするゲームデザイナーとはなんぞや、みたいなことは少し置いといて、そもそもゲームデザイナーは何をする仕事なのか、です。
世界観を作るとか、ゲームのルールを考えるとか、もちろんそれも仕事でしょう。たぶん「ゲームデザイナーになりたい」なんて子供は「そこ」がやりたいんだと思うし。
いやいや、「そこ」だけでいいのなら、アタシだってゲームのデザインとやらをやってみたいよ。でも仮に「そこ」だけができても、つまんないゲームにしかならないか、もっといえば完成すらしないと思う。
ゲームデザイナーってのは映画でいえば監督だと思うんですよ。実際に「監督」を名乗ったゲームデザイナーもいますが、正解だと思う。

映画監督の場合、面白い展開とか、役者を最大限に引き出す演出とかもありますが、それは先の「そこ」と一緒。でも「そこ」をやりたいのであれば、最低限できなきゃいけないことが山ほどあるんです。
最低限脚本を書けなきゃいけない、最低限カメラを回せなきゃいけない、最低限絵を書けなきゃいけない、最低限演技もできなきゃいけない、その他その他・・・。
しかも、思っているより「最低限」のレベルは高い。修練を積んだトップクラスよりは落ちるけど、あくまでプロレベルでなければならない。

ゲームデザイナーも一緒です。
最低限プログラムが書けなきゃいけない、最低限グラフィックデザインができなきゃいけない、最低限文章が書けなきゃいけない、最低限音楽(しかも作曲ではなく編曲)ができなきゃいけない。
そしてもうひとつ、最低限ハードウェアを理解してなきゃいけないと思うんです。
昔は、それこそファミコンが登場する前のマイコン時代は、これが当たり前だった。すべてを一人でやっていた。そのせいで肝心のゲーム性がおろそかになる場合もありましたが、それでも「全部ひとりで」やった経験は、それこそとんでもない財産になったはずなんです。

翻って、今です。
今のゲーム作りは分業制が普通ですが、分業制なのは、さらにクオリティを高めるためであり、できないからやってもらう、じゃないはずです。
本来ならひとりでも作れるけど、それじゃ時間もかかりすぎるし、スケールも小さくせざるを得ない。だからこその分業制、だと思うわけで。
しかも分業制なのは、プロの世界です。素人まで分業でやる必要はどこにもない。
全部ひとりでとなると、今のWindowsなんかだと、高性能すぎて、ハードウェア全体を把握できない。
そこへいくと、ファミコンは、もう本当に、ちょうどいい。あれだけ爆発的に売れたハードだから、サンプルというかお手本も山のようにある。
「ココを叩くと、こう動く」というのが把握しやすいのです。

もし任天堂がこういうハードをやるなら、昔のゲームに関しては、著作権はある程度放棄しなきゃいけない。つまりハックロム(既存のゲームを改造すること)をある程度容認してやる必要がある。
任天堂自身がある意味ハックロム的な「スーパーマリオメーカー」なんてものを出したり、実際ハックロムにはスーパーマリオのマップをすべて書き換えたものが、それこそ相当昔からあります。
「スーパーマリオメーカー」のようなツールを使ったものじゃなくて、ハックロムのようにプログラムでやらせた方がいい。難しいけど、一からプログラムを組むよりはよほど簡単。入り口としてはかなりいいんです。

ハックロムを入り口として、そこからは一から全部を作ったゲームが出てくるはずです。
あとは任天堂がそれらの人材の中から「異能」を拾いあげられるシステムを構築したらいいだけです。
つまりアタシの提案する現代版ファミコンは、ゲーム人口の裾野を広げるためのものではなく、ゲームデザイナーの裾野を広げるためのもの、というイメージなのです。
数が増えれば増えるほど、異能も出てくる。「第二の横井軍平」や「第二の宮本茂」が見つかる可能性も、ゼロではなくなると思う。

痛みもゼロではないけど、んなもん異能を見つけ出す手間を考えれば、過去のファミコンソフトの著作権なんて、屁でもないと思うんだけどね。







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