ハナ肇といえば一発シリーズ!
FirstUPDATE2016.4.7
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 この「一発」シリーズもそうだし「馬鹿」シリーズもそうなんですが、シリーズといいながら話が続いているわけじゃないんで、別にシリーズでも何でもないんですよね。連作というか関連作というか。
 個人的に「一発」物は山田洋次ーハナ肇作品の中では非常に好きで、というのも非常に軽いからね。それにバラエティに飛んでいるというか、お決まりのパターンじゃないのも好ましい。

◇「喜劇 一発勝負」
 内容はラストのサゲまで完全に落語です。つかサゲのためにストーリーがあるといっても過言ではない。
 親不孝がテーマですが、ハナの父親を演じるのが加東大介で典型的な堅物親父。そしてラストでは狂気をはらんだ演技を見せるわけですが、わざわざ東宝から借りてきただけのことはあります(いうまでもありませんが、この作品は松竹、加東大介は東宝所属)。それくらいハマってるというか、この親父役は加東大介以外あり得ない。
 非常に単純な話です。しかし見ていて楽しいのは、植木等、安田伸、石橋エータローを除くクレージーの面々がなんとも仲睦まじく見えるのです。
 源泉を探り当てようとする場面もそうだし、毒キノコを食べて狂ったように笑い転げるところも、一緒に馬鹿やってきた連中だからこそ出せた雰囲気だと思うんですね。
 ハナも今回は粗暴さはあまりなく、山っ気が強いだけで、どちらかといえば頭が切れるタイプなのも面白い。

◇「ハナ肇の一発大冒険」
 何故か「喜劇」ではなく「ハナ肇の」と冠がつきます。よく考えたら植木等も谷啓も映画では「植木等の」とか「谷啓の」って冠がついた作品はないんですよね。(厳密にいえば「いいかげん馬鹿」もタイトルロールに従えば「ハナ肇・岩下志麻のいいかげん馬鹿」になるけど)
 この作品のハナは「一発勝負」よりさらに粗暴さがなく、とても善良な一般市民です。いや、いくらなんでも善良すぎるくらい「いい人」です。
 そこに倍賞千恵子演じる謎の女が絡んでくるのですが、チェイスあり、山岳アクションありの、スラップスティックになってるのが何とも。
 しかしやはり向き不向きがあるというかね。山田洋次にこの題材はどう考えても向いてない。自分でも脚本書いてるんだから向いてないも何もないんだけど。
 たとえば途中カーチェイスシーンがありますが、これほど迫力のないカーチェイスはちょっとお目にかかれない。山岳シーンもロケとセットを使い分けているんですが、なんだろ、異様にこじんまりしてしまってます。
 とはいえ山田洋次の数多いフィルモグラフィーの中でも最も気楽に肩の力を抜いて見れる作品なのは間違いなく、もう少しこの手の作品を(いやスラップスティックはいらないけど)撮ってほしかったなと思いますね。

◇「喜劇 一発大必勝」
 前二作のハナは完全に粗暴さがなくなり気の良さだけが前面に出てましたが、これは反対。「馬鹿」シリーズや「なつかしい風来坊」にあった気の良さをすべて消し去り、ひたすら粗暴なだけ、という極端なキャラクターになってます。
 主人公は悪魔的ではなく悪魔そのもので、暴れ方が半端じゃない。あまりの酷さに苦笑してしまうほどです。最後まで名前もわからず(劇中ずっと御大と呼ばれているのは「おんたい」と呼んだ時にたまたま振り向いただけだし。ま、途中から自分で「俺だよ、御大だよ」と名乗ってますが)、この正体不明感はちょっと「日本一の断絶男」を彷彿とさせます。

 植木主演の「日本一の断絶男」、谷啓主演の「奇々怪々・俺は誰だ?!」、グループ主演の「クレージーの大爆発」、そしてこの「一発大必勝」とすべて1969年公開なのです。そしてこれらの作品に共通しているのは、ある種のカルト感です。
 「一発大必勝」は村人を含めたキャラクター設定もそうですが、ギャグも下衆そのもので、歯磨きのギャグや、村人四人衆の姑息さ、夢とはいえ谷啓の首がちょん切れるところなんか引いてしまう人がいてもおかしくないレベルで、まったく山田洋次らしくない。誰かが書いてましたが森崎東(山田洋次と共同脚本)的です。

 ま、そういうのを承知して見れば面白いんですが、それでもラストは強引だなぁ。前二作の綺麗にまとまった感じからすると、最後に谷啓がフラれたと思い込んで旅立ち、乞食同然になるのはいくらなんでも解せないわ。本来山田洋次が最も得意とするところの行動原理が薄すぎる。
 最後にハナと谷をじゃれ合いさせたかったのはわかるんだけど、いくらなんでも、ね。

「一番好きな山田洋次映画は?」となって「一発」シリーズを挙げる人はそういないと思う。それはわかるんだけど、ただでさえ反芻気味の山田洋次にしては珍しく「雑多に撮った」って感じでアタシは一番好きなんです。
いや、山田洋次もさ、もっといろんなジャンルにチャレンジして欲しかったわ。ってまだご存命だけど。




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