テレビ番組ってやつは「積極的に見ようと思って熱心に視聴する」番組と「何となく見ている」番組に分けられると思います。
この「何となく」ってのはテレビやラジオといったメディアの最大の特徴で、たとえば音楽なんかも無意識で聴くというか聴かされる音楽ってのがあります。たとえば店内で流れてる有線とか。
店内の有線は完璧に受動的です。基本的に拒否することが出来ない。聴きたくなければ店の外に出るしかない。
テレビやラジオみたいな放送はね、少なくとも自宅で見ている限りチャンネルを変えることは出来るんですよ。もちろん消すことも出来るし。
つまり能動的か受動的かといえば能動的に分類されると思う。一応スイッチを入れて、チャンネルを合わせている。だけれども熱心に見ているかといえば、まったく熱心に見ていない。音声を聴いているのかどうかさえ怪しい。
でもそんなスタイルが成立してしまうのが放送の良い所じゃないかと。
「何となく」という視聴スタイルでもっともよくあるのが朝の番組でしょう。
かつてNHKの朝ドラは時計代わりなんて陰口を叩かれたといいますが、実際朝の時間帯のテレビは必ず時刻テロップが表示されており、天気や交通情報も随時伝えてくれる。
つまりチャンネルを合わせておくだけで、通勤通学に必要な最低限の情報を伝えてくれるんだから、これはありがたい存在です。
ただ内容は何もおぼえていない。所詮「何となく」「ただチャンネルを合わせている」だけだから、こんなコーナーがあってこんな内容だった、なんておぼえてないのが普通です。
アタシが実家暮らしの頃は朝は6チャンネルがついていた。関西で6チャンネルといえば朝日放送。んでやってる番組は「おはよう朝日です」。
ところが見事に内容をおぼえていない。当時司会だった林伸一郎がドライバーの人を対象に「スピードは早めに、ブレーキは控えめに」と言ってて、んなアホな、と思ったんだけど、よく考えるまでもなく「スピードは控えめに、ブレーキは早めに」ですよね。
つまりそんな聞き間違いをしでかす程度しか見てないし聴いてないってことです。
そんな中、唯一「ああ、たしかにそんなコーナーがあった!!」と思えるのが「突撃バーゲンダー」のコーナーです。
いやぁこれ、ちゃんと見てなかった分、んで思い出すこともなかった分、本当に懐かしい。
初期は桂べかこ(現・桂南光)がやってたらしいけど記憶にあるのはタージンで、どんな内容かというと関西の商店街の一軒に目をつけて(たぶん事前に決まってんだろうけど)、とにかくタージンが値切り倒す。その結果、本日30名様までコロッケ一個5円、なんて成果をひねり出してくるわけです。
(値切るシーンこそないけど「出没!アド街ック天国」で「明日アド街を見た、といえば先着○名様まで・・・」なんてコーナーがありましたよね。最近やってないけど)
なんか去年も「マツコの知らない世界」に出たりして、注目されそうでされないタージンですが、この人の芸風は後継者を作ることが不可能なほど独特で、何者なのか「いまだに」知らない。芸人風だけど大手事務所に所属してないこともあって舞台でネタをやった経験があるのかどうかすらわからない。
アクは強く、それこそ朝の番組みたいな見ても見なくてもいい番組でも、タージンの声が聴こえると思わず画面を見てしまう。
だけれども、後年になって「そうそう、突撃バーゲンダー!あれ、面白かったよな」みたいに話題になるようなことはない。インパクトはあるけど印象には残らないからです。
それってつまりエンターテイメントになり切れていたってことじゃね?
すごいなぁタージン。
これで綺麗に終わろうと思うんだけど、そうですよね。タイトルですよね。そこ無視しちゃマズいか。
「いってらっしゃい!」ってのは、まァ朝の番組だから、そういう声が番組から聴こえてくるのは理解してもらえるだろうけど、何だよ耳ピーン!って。
これね、「おはよう朝日です」のもっとも特徴的なところで、「おはよう朝日です。ただいま○時○分です。いってらっしゃい!」ってアナウンスの前にエレクトーンのジングルが入るんです。
んでそのエレクトーンを弾いてるお姉さんと並んで登場するのが番組のキャラクターである「おき太くん」。Wikipediaによれば、うさぎとヘリコプターをマッシュアップしたものらしいけど、「いってらっしゃい!」の声と同時に頭を下げるのですが、その時横に倒れている耳を上にピーンと立てるのです。
どうも耳がお姉さんにぶつからないように立ててたらしいけど、何つーか、突然コーフンしたおき太くん、にしか見えない。
しつこいけど、ピーンと立てるのは耳だから。でもさ、耳とはいえピーンと立てるってのが、ただユルいだけじゃない、独特の毒気になってたとも思うわけで。
でも最近、アタシは関東に越してきて長いから「おはよう朝日です」は見れてないんだけど、どうも耳ピーンは止めたみたいですね。
あ、今思い出したけど、一度ゲストにデビュー間もない頃の杉本彩が出たことがあって、なんかホットパンツっつーかギリギリまで裾を切ったジーパンみたいな格好で出てきたんだけど、たぶんテレビ史上でも有数の「やらしい」映像だった。
だってカメラが下から煽りまくって、ホットパンツの隙間からパンティが見えてるんですよ。スカートのパンチラより100倍くらいやらしい。何しろ朝だからどうすることも出来ず、鼻血が出そうなまま学校に行きましたよ、ええ。
さすがに杉本彩ほど直接的ではないにしろ、おき太くんの耳も超軽度に「徹底的にさわやかな番組に相応しくない」やらしさが内包されてたと思う。止めちゃダメだよ。そーゆーのは予想外の効果があるんだからちゃんと継承していかないと。