さらば天敵!
FirstUPDATE2015.10.26
@Scribble #Scribble2015 #プロ野球2015年 単ページ 引退 山本昌 天敵 阪神タイガース 中日ドラゴンズ

もしかしたらプロ野球選手にとって、他チームのファンから「あんな憎たらしい選手はいない」と言われるのが一番の本望なのかな、とか思ったりするわけで。

阪神タイガースのファンにとって、ここ30年くらいで一番憎たらしかったのは、間違いなく中日ドラゴンズの山本昌でしょう。
そりゃね、斎藤雅樹も打てなかったし、三浦大輔も打てなかった。でも斎藤はどこのチームも打てなかったし、当時の阪神は斎藤に限らず誰も打てなかったから、天敵とはちょっと違う。
三浦は、たしかに苦手というか、文句なしの阪神キラーでしたが、終盤に大逆転を食らわしたこともあるし、ここ数年はむしろ阪神を苦手としているので、だんだんキラーという感覚が薄れてきたってのもあります。

が、山本昌は違った。暗黒時代はもちろん、2003年以降、チーム力が強化された後も打てなかった。さらに山本昌が40代後半になってね、他のチームには通用しなくなってきたのに、阪神だけはヒネられる。
2006年にはノーヒットノーランを食らったし、プロ生活最後の勝利投手となった試合も昨年の阪神戦だったわけで。
つまり徹頭徹尾「中日の山本昌は阪神キラー」だったのです。

山本昌は1965年生まれです。アタシより3歳年上ってことになる。これはすごいことですよ。
よく「いつの間にかプロ野球選手が全員自分より年下になっていた」なんて話を聞きますが、47歳になる(なるんだよね。書いてて自分でも嫌になるけど)アタシは、それを体験しないままだった。
だって、山本昌がいるから。
山本昌の引退=年上のプロ野球選手がいなくなるってことになるんだから「いつの間にか」ってことはあり得なかったんです。
しかし、山本昌は、なかなか辞めなかった。
辞めないだけじゃない。お情けで席を置いてもらってる感じがぜんぜんなかった。実際問題、阪神を応援する身としては「もし次の中日戦で山本昌が出てきたらどうしよう」と怯えていた。

こういっちゃナンですが、昨年今年の中日は与し易い相手でした。さすがに大野に出てこられるとなかなか打てないけど、リリーフを引っ張りだせば何とかなる。特に又吉にかんしては「もう阪神戦で投げさせるのは可哀想だろ」とすら思っていた。
だからこそ、必要以上に山本昌を恐れた。
山本昌も、いまだに打てない。しかしそれ以上に、山本昌が投げた試合はリリーフすら打てなくなる。何故だかわからないけど、山本昌が投げる試合だけは「強かった頃のドラゴンズ」が甦ったような感じになるのです。

山本昌の引退試合となった、今季最終戦となる広島戦のことは以前書きました。(現注・当該エントリはオミット)
あの試合もね、たしかに広島側にいろいろマズいところがあった。それは否定しません。
それでもあの試合の試合運びは完全に「強かった頃のドラゴンズ」で、とにかく「マサさんの引退試合で負けるわけにはいかないんだ」という気迫が中日の選手からみなぎっていた。
これだけとっても、末席に置かせてもらってる選手じゃないってのがわかります。

山本昌は輝かしい実績を誇りながら、エースと呼ばれることが極端になかった。
若い頃は今中がいたし、その後は川上がいた。そして川上が去ってからは、さすがにエースと呼ばれる年齢でもなかった。
でも「この人が投げるだけで、チームが強くなる」のがエースだとするなら、こんなにエースに相応しい人もいなかったと思う。
「山本昌が先発の試合のドラゴンズ」と「山本昌以外が先発のドラゴンズ」は、少なくとも昨年今年にかんしては別のチームだったといっていい。
でも来年からは、先発どころじゃない。もう山本昌はチームにいない。
だからこそ、来年の中日ドラゴンズは、本当の正念場になる気がするのです。

山本昌選手、あなたは本当に、本当に本当に、憎たらしい選手でした。しかも30年に渡ってね。
たぶんこんな憎たらしい選手はもう出てこないと思う。
本当に憎たらしい山本昌選手、本当に本当にお疲れ様でした!







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