最初にいっておきますが、アタシはプログラマーでもなんでもない。遊びでスクリプトを書くのは好きだけど、本格的なプログラムなんて到底書けないし、本当の意味でパソコンやゲーム機の性能(≠スペック)もわかってないと思う。
マイコンといわれていた頃からPCは大好きだけど、実はアレ、どうなっていたんだ、と思うこともしばしばでして。
「魔法使いの森」という個人サイトがあって、ここはアタシのような「まったく詳しくない元マイコン少年」からすれば非常に面白い。筆者の方は、アタシと同じく元マイコン少年で、後にセガに入社した生粋のプログラマーの方ですが、専門的なことをわかりやすく記述してくれてます。
ここを読んでると、プログラマーとは如何にハードウェアとの戦いであるかが痛いほどわかる。アタシのように詳しくない人間からすれば、あのパソコン(もしくはゲーム機)、こういう機能があるんだから、この程度は実現できたんじゃない?みたいなことも、逆に簡単に実装してそうな機能も、裏にプログラマーの方々の血の滲むような努力があったと痛感せざるをえません。
1980年代前半、当時のマイコンの性能は今と比べるまでもなく圧倒的に低かった。それでもみな必死でゲームなんかを作っていたのです。
当時プログラムを投稿できる雑誌がいくつかあって、中でもゲームの投稿が活況だったのは「ゲームこそプログラマーの実力を示せる」ものだったことに他ありません。
ゲームを作るとなると、面白さもさることながら、如何にスピードを保持できるか、またなるべく美しいグラフィックで表現できるか、この辺と戦わなきゃいけない。
もちろんグラフィックなぞなしにしてしまえば、当時の低い性能のマイコンとはいえスピードを保つことは出来ました。でもそれじゃ面白そうに見えない。だから無理して、スピード感とグラフィックのせめぎ合いをしていたのです。
1980年代前半といえば、「ゼビウス」をはじめとする縦スクロールのシューティングゲームが流行りだした頃です。ところがゼビウスを、いやゼビウス風でさえ当時のマイコンで実現するのは並大抵ではなかった。
これを実現しようと思ったら、まず広大なマップデータが必要で、当然メモリを食う。
さらにスクロール自体も、何しろ当時のマイコンにはハードウェアスクロール機能は搭載されていませんでしたからね。これも1キャラクター単位(8ドット単位)のスクロールではガタガタして見えるから、なるべく細かくスムーズに見えるようにしなきゃいけない。
さらにはキャラクターと背景の重ね合わせの問題もある。X1のようにカラーPCG機能があって、さらにテキストプレーンとグラフィックプレーンが独立していて重ね合わせ表示ができる、なんてマシンだとまだマシだけど、それ以外の機種はカラーパレット機能を使った擬似重ね合わせが関の山でした。
たとえばFM-7版ゼビウスは背景2色キャラ4色(透明を含むので実質3色)、PC-8801版は背景4色キャラ1色、という見た目もかなり違うものにならざるを得なかったわけで。
だから、もうこれはリアルタイムで体験してないと理解できないでしょうが、10万円をラクに越えるマイコンで上手く作れなかった「ゼビウス」が、1万円台半ばのファミコンでやすやすと作られた時の、あの脱力感は半端じゃなかった。
たしかに画面は横長だし、アンドアジェネシスは動かないし、ナスカの地上絵もない。でもそんなの些細なことで、ちゃんと1ドット単位でスクロールするし、全16面入っている(X1版は地上データをオンメモリに出来ず、面クリアする毎に地上データを読み出しにいってた)。
ファミコン版ゼビウスは、タイニーでもなんでもない、まさしくゼビウスそのもの、だったんです。
あのゼビウスショックがあったから、マイコン少年はファミコンに飛びついた。
だからアタシはファミコン最大の貢献ソフトは「スーパーマリオブラザーズ」ではなく「ゼビウス」と思ってるんだけどね。
話が逸れましたが、もし、もしね、グラフィック性能がファミコンや当時のマイコンレベルだったとしても(といっても解像度や色数が昔並みなだけで、VDPのスピードはCPUの足を引っ張らない程度では動く)、他の性能、CPUだったりメモリだったりが今の、たとえばAndroidなんかで使われているARMなんかだったら、一見昔風だけど、今でなければ作れないゲームが作れると思うんです。つまり当時プログラマーがやらざるを得なかった部分をハードウェアパワーで回避してやる。
さっき書いたスクロールとか重ね合わせの問題なんかも、マシンパワーで余裕で回避できるだろうし。
もちろんポリゴンなんかは使えない。いやそれさえもマシンパワーでなんとかなるかもしれないけど、ま、当時出てたようなグラフィックのゲームね、これなら日曜プログラマーでもちょっとした努力で作れるようになると思う。
ホントは任天堂にはそういうゲーム機を作ってほしい。さすがにファミコンレベルのグラフィックじゃ厳しいかもしれないけど、スーパーファミコンレベルならわりといいものが作れると思うし。
名称はかつてボツになった「ウルトラファミコン」で。正直Wii Uの後継機なんか出すよりよっぽどいいと思うんだけど。