TOHO大作戦
FirstUPDATE2015.7.1
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今から15年ほど前(現注・つまり2000年頃)、「TOHO大作戦」という映画を夢想したことがありました。

東宝は戦前からオールスター映画を作っており、だったら過去のヒット作のオマージュをふんだんに入れた大オールスター映画を作れば面白い、いやたぶんつまんないもんになるに決まってるけど、少なくともファンは喜ぶんじゃないかと。
その時考えたプロットでも書いてみます。

最初はサラリーマン喜劇風に始まります。舞台はもちろん呉服町交差点の大和証券ビル。
そこの社長が加山雄三、秘書が谷啓。そして社員として主役のふたり、高嶋政伸と、当時タレントに転向したばかりだった松岡修造。東宝の記念映画なんだから松岡修造が主役をつとめるのは当然です。
ライバル会社は、主人公がつとめる会社の社長が加山雄三なんだから、当然ライバル会社は田中邦衛が社長です。田中邦衛を蹴落として次期社長を狙っているのが宝田明と三橋達也と夏木陽介。

しばらくは暢気な雰囲気で、宝塚歌劇を観劇に行くシーンがあったりね、ヒロインの沢口靖子をめぐる恋のさや当てとか、ライバル会社との抜きつ抜かれつの攻防がメインになるのですが、やがて「東京に大怪獣が攻めてくる」という噂でもちきりになります。
この大怪獣ってのはもちろゴジラでして、んでゴジラが街を破壊していく。
さて、主人公の会社には正体不明の謎の老社員がおり、これが植木等。ゴジラが暴れ回るようになると「もしかしてウルトラマンに変身するんじゃないか」といわれ出しますが、当然変身しない。つか変身しそうで変身しない。(本当にウルトラマン出すわけにいかないしね。あれ、東宝のもんじゃないし)

このピンチを救うのが、ゴジラ撃退の最終兵器が作れる町工場の社長の小林桂樹とその妻中村メイコ。さらにこれを実際に武器として装備する、地球防衛隊が登場するのですが、何故か松岡修造と高嶋政伸も参加する。(ただのサラリーマンのはずなのに)
んで地球防衛隊の隊長が、アッと驚く森繁久彌、てな具合です。(アクションや特撮のイメージの強い夏木陽介や宝田明を隊員役にせずに、サラリーマン喜劇の森繁久彌を隊長にするっていうね、逆転させているのがミソ)
最後は無事ゴジラを撃退、というか敵対関係を止め、主人公の会社とライバル会社が合併、「どういうわけか」謎の老社員、植木等がこの新会社の社長になる。んで松岡修造と沢口靖子が結ばれてハッピーエンド。そして出演者全員(当然後ろにゴジラやモスラもいる)と宝塚歌劇団員総出の大フィナーレ。
このいい加減なハッピーエンドこそ東宝カラーなので、これでいいのです。小難しいオチとか「辻褄」とか、いらない。

何しろ今から15年前ですから、エノケンはもちろん三木のり平も伴淳三郎もいない。黒澤明組でいっても三船敏郎も志村喬もいない。製作陣を見て黒澤明も円谷英二もいないしね。松林<和尚>宗恵はまだ存命でしたが、年齢を考えても「総監督」くらいしか無理でしょう。
だから完全なオールスターは無理ですが、それでも特撮スペクタクルだったり音楽喜劇だったりのエッセンスが表現できる役者さんやスタッフは存命でした。
特撮スペクタクルはゴジラ組に存分に力を振るってもらって、音楽喜劇としては主役のふたりと沢口靖子が歌う。この辺は「君も出世が出来る」風に。当然加山雄三や植木等にも歌ってもらう。

どうです?もし作ってたら100%、何の取り留めもない無茶苦茶な映画になったと思う。しかも特別東宝ファンではない、普通の観客のウケも悪かったと思うし。
でも意味があるかないかでいえば、大いにあったんじゃないかと思うのです。
ひとつは東宝という会社のカラーの再確認。もうひとつは技術の継承です。往年のスタッフと若いスタッフが一緒になって映画を作ることで技術が継承できる。役に立たない技術も、そりゃあるだろうけど、残していった方が良い技術だっていっぱいあったはずだから。

役者だってそうです。音楽喜劇ったって、もう立ち振る舞いがわからないはずで、その辺のことも植木等や加山雄三と現場をともにすることで勉強できるのです。
もう東宝は特撮スペクタクルというか、ゴジラ映画しか作れない会社になってしまった。たとえ優秀なコメディアンが現れて、東宝で音楽喜劇映画を作りたいと思っても、作り方がわかるスタッフがいない。

もったいないよね。せっかくの財産だったのに。いやマジで人材こそ最大の財産、ですよ。







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