名誉か罰ゲームか
FirstUPDATE2015.4.27
@Scribble #Scribble2015 #プロ野球2015年 単ページ クライマックスシリーズ 日本シリーズ アジアシリーズ 罰ゲーム

昨日「CSはCSとしてだけ成功したけど、ペナントレースや日本シリーズの価値を落とした分トータルではマイナスなんですよ」てなことを書いたけど、この話を広げます。

昨年(現注・2014年)阪神はファーストステージ、そしてファイナルステージともにクライマックスシリーズを勝ち抜き、日本シリーズに進出しました。
今まで「阪神はCSで勝てない」といわれており、それが1分けを挟んで5連勝したわけです。
だからこそ、今まで言えなかったことがいえるようになった。つか改めて思いました。
やっぱりCSはいらない
とね。

正直去年の日本シリーズほど「どうでもいい」ものはなかった。ボーナスステージを通り越して「余興」とすら感じてしまいました。
当然勝ち負けにも無頓着で、1勝4敗で敗退しても、まァそんなもんか、で終わってしまいました。
振り返ってみれば、日本シリーズ自体がボーナスステージに近いものなんですよ。
アタシが阪神に熱を入れ出してから阪神が日本シリーズに進出したのは計4回。一番最初は日本一になった1985年ですが、これは日本一になったことより「阪神が日本シリーズに出てる」感慨の方が大きかった。
2005年はいまだに「33-4」というネタで語られますが、いくら歴史的大敗といわれてもそこまでの悔しさはなかった。単純に悔しさでいえば、あと1歩でリーグ優勝を逃した1992年や2008年の方がはるかに強く、むしろ2005年はリーグ優勝の喜びの方が大きかったくらいです。

例外は2003年です。これはシリーズ直前に星野仙一監督勇退のニュースがあったからで、この時だけは何としても勝って終わりたかった。
実際ペナントレースの数十倍も力が入ったし、敗退が決まった時は泣けて泣けてしょうがなかった。と同時にこんな面白い日本シリーズもなかった。
たしかに日本シリーズにボーナスステージ感は拭えませんが、ちょっとしたことでペナントレースより熱が入ることだってある。
それに1985年も、2005年も、少なくともシリーズが始まる前にはそれなりの高揚感があったわけでね。
でも去年に限れば、それすらもなかった。あ、始まるのね、くらい。その高揚感たるや交流戦以下だったといっていい。負けたからつまらないんじゃない。まだ始まってない時点ですでに盛り上がらなかった。あくまでアタシの中の話ですが。

CSのせいでリーグ優勝の価値がなくなるとはずっといわれてきているし、それはアタシもそう思う。実際去年も2位でも、まだCSがあるしと思えばそこまで悔しくないし、巨人ファンだってまだCSがあるからと思えば喜びを爆発させることもできない。こんな「勝っても喜べない、負けても悔しくない」ペナントレースに意味があるのかと感じるのは当然です。
しかもCSに勝ち抜いて日本シリーズに進出しても、たいして嬉しくもない。それは去年で嫌というほどわかった。巨人にしたところでCSに勝ち抜いても、それは「当たり前」のことであり(そりゃそんだけのアドバンテージがあるんだもん)、嬉しいとは違う。負けたら負けたで、悔しいというより「何で?」という憤りの方が強いんじゃないかと。

たしかにCS自体は成功か失敗かでいえば成功でしょう。しかしCS「だけ」が成功したように見えてしまう。CSは成功したけど、ペナントレースも日本シリーズも極端に価値が落ちてしまった。
たとえば一品5000円前後の飲食店で、ひとつだけ1000円のメニューがあれば、当然1000円のものはバカ売れするでしょう。でもそんなことをしたら他のメニューが一切売れなくなる。
なんかCSに同じニオイを感じるのですよアタシは。
今はやってませんが、数年前までアジアシリーズってのがあって、日本一チームが参加していましたが、ファンからは罰ゲームといわれ、また選手もチームとしても、やる気があるようには見えなかった。主力が出てなかったりしたし、直前の日本シリーズで発散していた「気」が、アジアシリーズではまったくでてなかった。これでは罰ゲーム扱いも仕方がありません。

アタシが危惧するのはそこなんです。
いつの日か日本シリーズがアジアシリーズのように罰ゲーム扱いされる日が来るかもしれない。
アジアシリーズが罰ゲーム扱いだったのは、アジアシリーズに出場することが名誉でもなんでもないのが原因です。
日本代表だってそうでしょう。サッカーの日本代表に選ばれることを名誉だと感じない選手はおそらく皆無のはずです。しかし野球の日本代表はそこまでいっていない。いや数年前まではまだ名誉と感じる選手の方が多かったはずですが、国際大会の「立ち位置のあやふやさ」から、だんだんと価値が薄れてきてしまっている。

日本シリーズも日本代表もこと給与面だけでいえば恩恵は少ない。そんなことよりペナントレースで頑張ることの方が給与に大きく反映する。
でも「名誉」はカネには変えられない。だからカネ関係なく、プライドを持って戦う真剣勝負の場になりえたわけです。
もし、もしもですが、日本シリーズから名誉という価値がなくなった時、日本シリーズは罰ゲームの場に様変わりする。そして日本シリーズが罰ゲーム扱いされはじめたら、確実に日本のプロ野球は終わります。
CS存続の是非を語る時、CSが成功したかどうかはどうでもいいんです。そんなことよりCSによってペナントレースの価値がどうなったか、日本シリーズの価値がどうなったかを精査しなきゃ話にならない。

CSという「軒下」のために、ペナントレースや日本シリーズといった「母屋」を取られるわけにはいかないんです。







Copyright © 2003 yabunira. All rights reserved.