前に「山本正之ほどの才人でもアニメの主題歌という枠内でしか断続的にコミックソングを発表していくのは難しい」みたいなことを書いたことがあります。
アニメソングではなく「まんがの歌」ですね。今でも年配の人には「アニメ」を「まんが」という人がいますが、「宇宙戦艦ヤマト」ブームの頃から「アニメーション=アニメ」という概念が定着しましたが、それ以前は「動くまんが」扱いでした。
まんがの歌→アニメソングはもうちょっと後ですが、「まんがの歌」も絶滅したわけではなく、低年齢層向けアニメの主題歌として残り続けました。
まだアニメがテレビまんがだった時代、特にギャグもののまんがの歌は、いわゆるコミックソングとの差が微細で、いやコミックソングそのものといえるものもいっぱいある。
ずっと後になって、さくらももこが「青島幸男になりきって植木等の歌を書く」夢を結実させたのが「針切りじいさんのロケンロール」ですが、自作のギャグ漫画がテレビまんが化されるのを「コミックソングを作るチャンス」と捉えていた漫画家がいても不思議じゃない。
藤子不二雄Aがどう考えていたのかはわかりませんが、藤子不二雄Aが作詞した一連のまんがの歌は、完全にコミックソングとして成立しています。
クレージーキャッツの「スーダラ節」や「ホンダラ行進曲」は、オリジナルスキャットといえるものを全面に押し出した曲ですが、藤子不二雄Aもまたオリジナルスキャットを異様なくらい盛り込んでいる。そもそもAは独特の擬音を使う人ですが、擬音を発展させてスキャットにまで昇華してるのが凄い。
歌詞もコミックソングのルールに則っているものが多く、特に「怪物くんの子守唄」など曲のコンセプトからして画期的で、いやこの「画期的」ってのも、コミックソングでは重要な要素ですからね。
コミックソングばかりじゃなくて、真面目な、真面目はおかしいけどコミックの要素がない歌詞もまた上手い。「プロゴルファー猿」の「夢を勝ちとろう」なんか状況説明の歌詞なんだけど、十分に聴いてる側を熱くさせる詩といえるし。
とにかくいろんな面で非常にレベルが高い。プロの専業作詞家やシンガーソングライターの中でも見劣りしない仕事をしている。
いや、Aって人は擬音だけじゃなくて元々言語感覚に優れた人なんだからね。
これからは藤子不二雄Aという人を評価するに当たって、漫画家という枠だけじゃなく「漫画家+作詞家」で評価しなきゃいけないんじゃないかと思ったり。
何となーくですが、「作詞 藤子不二雄」とクレジットされているものでも、これは藤本先生が、これは安孫子先生が作ったなってわかるんですよ。 もちろん漫画のように絵柄で判断出来ないので、あくまで傾向で見ていくしかないのですが、個人的には漫画は一切タッチしてない「ウメ星デンカ」は安孫子先生の作詞じゃないかという気がしている。ああいう状況説明の歌詞って安孫子先生なんですよ。「オバQ音頭」とか「夢を勝ちとろう」とかね。 逆に藤本先生はあんまり状況説明の歌詞は作らない。いやあんまりどころか、思いつくのは日テレ版のドラえもんくらいじゃないか。というか日テレ版ドラえもんさえ安孫子先生が作った可能性が捨て切れない。だって藤本先生が「ドタドタあんよは扁平足だよ」って書くか?どう考えてもドラえもんは扁平足じゃないし(つかそもそも足が丸いし)、この時点でその設定があったかわからんけど「わずかに宙に浮いてる」って設定なのに。 |
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