鎌倉のロードプライシングは難しすぎるんじゃね?
FirstUPDATE2014.5.4
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えと、鎌倉市がロードプライシングを検討しているみたいで、んでね、こんな記事を見て、つい発語衝動にかられたわけでして。



うーん、これはいろいろ難しいなぁ。
個人的には最後の人の意見、郊外に無料駐車場を設置して無料送迎バスを、ってのが一番しっくり来たんだけど、これはこれで結構問題が多いと思うのです。
鎌倉市といえば言わずとしれた観光地です。しかし他の観光地と決定的に違う点があります。
それは昔からの資産家が多く、観光収入が市の財政を支えているわけではない、というところです。
ですから「観光客なんかいらない」という声すらあるほどで、たしかに観光客のマナーの悪さは鎌倉に限らずどこの観光地でも問題になってますし、まあもちろん観光客相手に商売をしている人もいっぱいいるのも事実ですが。
まあその話はややこしいので置いておいて。

たいして財政面で困ってない鎌倉市がロードプライシングを導入しようってくらいだから、一番の理由は渋滞でしょう。実際海沿いの国道134号線の渋滞は完全に慢性化しています。
ではロードプライシングを導入して、本当に渋滞が緩和されるかといえば、これが疑問なんですよ。
まず観光客の問題です。
まあだいたいどこもそうですが、観光地ってのは観光地値段がまかり通るわけで、そりゃ缶コーヒーが150円とかなら「え?」と思うと思うんだけど、「焼きたて煎餅、一枚150円」なら、そんなもんかと思ってしまう。

「宮津節」で「縞の財布が空になる」と歌われている通り、昔から旅行、特に観光地に行くと、ついつい財布の紐が緩くなるものです。
いったいロードプライシングがいくらになるかわかりませんが、たとえば1000円とかは絶対とれないでしょう。せいぜい500円が関の山です。でも観光地に出向いているのに、500円をケチるか?といえば、まずケチらない。
「500円か、まあ市外に停めて、そっから家族分の電車賃使うくらいなら、それくらい払うか」となるに決まってる。

渋滞のもうひとつの原因として、純粋な通り道として流通や営業車が通るってのもありますが、何故混むとわかっている134号線を使うのかというと、まったく迂回路がないのですよ。
そもそも何故源頼朝が鎌倉に幕府を構えたかといえば、海と山に挟まれた土地で攻め込まれにくいからです。つまり非常に狭い土地に観光名所がひしめいていると。
土地がないわけだから当然道路も狭い。つかいわゆる幹線道路も二車線の箇所がほとんどない。

たとえば134号線を使わず、逗子や葉山の方から藤沢平塚方面に抜けようと思ったら、鶴岡八幡宮から北鎌倉方面(現注・横浜鎌倉線)に抜けるか、大仏の方から(現注・藤沢鎌倉線)抜けるかしかないのですが、どちらも遠回りな上、134号線と大差がないくらい混んでる。ましてや横浜横須賀道路から横浜新道に入って、となると金はかかるわ、大周りすぎるわ、時間的にも、どれだけ混んでても134号線を使う方が圧倒的に速いんです。
だからといって、土地がない以上、134号線の拡幅は不可能です。
っても近隣の方以外はイメージが湧かないかもしれませんが、黒澤明の「天国と地獄」をご覧いただければよくわかるはずです。
途中、江ノ電を越えていきなり急坂を登るシーンがありますが、江ノ電(腰越~極楽寺区間)の北側は断崖か山が基本で、とてもじゃないけど道路を広げられる余地はないのです。かといって南は海岸だしね。

最初に書いた、郊外に無料駐車場を設置して無料送迎バスってのも、じゃあ江ノ電はどうなるんだってことになる。
江ノ電は1970年代に廃線の危機を迎え、それが「俺たちの朝」というテレビドラマの舞台が江ノ電極楽寺駅近辺だったことで一気に観光客が増え、なんとか廃線を免れたという歴史があります。
そして今(現注・2014年)また「最後から二番目の恋」の影響で観光客が増えている。いわば「テレビドラマによって経営が成り立っている」路線だといっても過言ではない。
もし無料送迎バスなんかができたら、誰も江ノ電なんか乗らないだろうし、仮に鎌倉駅止まりだったとしても、だったら余計「結局電車賃かかるじゃん。ならやっぱりクルマで行こう」となるに決まってる。

つかね、クルマで出掛けたら、目的地近辺までクルマで行こうとするのは、どうしようもないのです。途中までクルマ、そこから後は電車、なんて普通の人は選択しないですよ。
もっと具体的にいえば、もし無料駐車場が大船近辺だったとします。そこから大仏のある長谷駅まで行こうとすれば、大船駅から鎌倉駅までがJRで154円(Suica使用の場合)、鎌倉駅から長谷駅までが江ノ電で190円。ひとり往復688円かかる計算になる。これが家族4人なら2752円、もし鎌倉駅まで無料送迎バスがあったとしても1520円。(現注・金額はすべて2014年当時)
観光地ってことで多少駐車場代が高いとしても、そしてロードプライシング代を含んでも、余裕で相殺される額ですよ。
めんどくさい上に金まで余計にかかるんじゃ、いったい誰が利用するんだって話でね。

他に方法がないのはわかるけど、あんまり意味のないことは止めた方がいいんじゃないかなぁ。リンク先にあるような「静けさ」とか到底無理だと思うし。つかあんまりロードプライシングに過大な期待しない方がいいと思いますけどね。

2023年現在、9年経ったってことになるわけですが、ぜんぜん進展がないようですな、いやロードプライシングがね。
そもそも、2014年時点でどれほど現実味があったのか、というと、実は「そうなったらいいな」レベルだったような気がするんですよね。




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