「ドリフターズですよ!前進前進また前進」の骨格の良さ
FirstUPDATE2012.1.27
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 ドリフ映画に関しては以前総まとめで一回書いて、「誰かさんと誰かさんが全員集合!!」は単独で取り上げたことがあります。(現注・ドリフ映画総まとめのエントリはScribbleではオミット)

 総まとめで書いた通り、ドリフ映画は松竹と東宝で作られ、メジャーで安定した出来なのが松竹、マイナーで不安定なのが東宝、とこれはまあその通りなんです。
 松竹ドリフ映画はDVDにこそなってないものの一応ビデオ化はされているので今回は割愛して、東宝ドリフ映画についてやや詳しく書きます。
 東宝ドリフ映画は計5本。うち2本は松竹でメイン監督だった渡邊祐介があたっているので、この2本は、まあ松竹ドリフ映画との差異も少ない。出来も安定しています。
 問題は残り3本、和田嘉訓監督分です。
 この3本、相当毛色が違う。渡邊祐介監督作品と、というよりドリフターズぽくないとでもいうか。とにかく和田嘉訓という監督の色が濃厚で、同じく色が濃厚な渡邊祐介作品とは対を成しているといっていい。

 第一作の「ドリフターズですよ!前進前進また前進」(以下「ドリフターズですよ!」は割愛)は後で詳しく述べるとして、第三作「冒険冒険また冒険」と第五作「全員突撃」ははっきりいってバラバラな映画になっています。
 特に「冒険冒険また冒険」はいかりや長介入院中ということもあり、ドタバタシーンはすべていかりや長介抜きであり、以前高木ブー氏から聞いた話では、途中の渋谷の西武百貨店屋上からのロケはいかりやが退院した当日に撮られたらしいです。
 こんな状況でまとまりのある映画が撮れるわけもなく、コント55号の摩訶不思議なコントが見れたり、前作「前進前進また前進」と同じ役で登場する藤田まことの活躍、またボーヤになりたてだった志村けんがワンシーンだけ登場するなど非常に見所が多いにも関わらず、かなり厳しい出来です。

 さて第一作の「前進前進また前進」です。
ひとことでいえば新鋭コメディアンの主演第一作のお手本のような、非常に手堅い展開を見せます。
 松竹ドリフ映画の場合、テレビでおなじみのキャラクターをうまく活かしているのですが、やはり映画とテレビは違うものですから、うまくアダプテーションしてやらないといけない。
 「前進前進また前進」は実質主演第一作ですから(公開は松竹の「なにはなくとも全員集合」の方が早いけど、あれはドリフ主演映画とはいえない)、手探り感が非常に強い。つまり各人のキャラクターを映画でどう活かすか、まだ掴めてないのです。
 キャラを全面に押し出すことができないのならストーリーで魅せるしかないわけで、話が転がりやすい、いわゆる「巻き込まれ型」の展開にしてあるのが巧い。巻き込まれ型の話は二転三転して話が進みやすいのですが、意外と面白くならないものでして、この手の話はアイデアが相当いるのです。それによって出来が左右される。

 「前進前進また前進」はよく見るとイタダキも結構あるんですが、まあ上出来といえるのではないでしょうか。
 もうひとつ、脇役にいい人材を配置しているのも特徴で、貫禄たっぷりに親分を演じるスマイリー小原をはじめ、イカれたフーテン娘の大原麗子、そして天本英世が圧巻です。わざわざ東映から大原麗子を借りてきたのも、興行的に未知数のドリフの補填の意味合いもあったのでしょうが成功しています。

 こうしてストーリーと脇役に気をつかうことで成功した「前進前進また前進」ですが、ドリフがやる意味が薄いといえば薄い。つまり誰がやってもそこそこ上手くいくように作っているからで、だからこそコメディアンというかコメディグループ主演第一作に相応しい内容といえるのです。
 上手くリメイクすれば、今でも通用しそうです。5人もグループじゃなくて寄せ集めでも何とかなるし。

 というか話の骨格は既存のものを使って、そこに上手く盛り込んでいった方が安全かつぶっ飛んだ作品が作れると思うのですがね。

ま、ドリフターズ映画云々ではなく、結局言いたいのは「ルーティーンを上手く活用しろ」ってことなんですがね。




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