昔見た「♪ボインは~」で知られる月亭可朝の漫談は驚愕ものでした。
「いや~ホンマにね、ホンマに。いやホンマ。ホンマでっせ!」
ずっとこんな感じで、ホンマしかいってない。
しかしホンマというのはまさに万能な言葉です。何なら標準語の「本当」に置き換えてもいい。何を聞かれても「本当にね・・・」といっていればさも意味ありげに聞こえてしまうから不思議です。
可朝の弟子である八方も万能言を持っています。
「さあ、そこやがな」
これまた非常に便利な言葉で、嫌なことを突っ込まれたり、返答に苦しむようなことをいわれた時など特に活用しやすい。
いかにも「じゃあ今からそのことについて詳しく説明しますよ」的な物言いなんだけど、実は会話の内容を他へ逸らすためのブリッジであり、はっきりいえば「煙に巻く」ために使うわけですな。
この万能言の後は何をいってもいい。まったく相手の質問と関係ない話をするのも当然アリです。
要は相手に、どんな質問をしたか自体を忘れさせればいいわけで、コツはなるべく長めに話をし、その中に相手が引っかかってくる言葉を挟み込めればベスト、できなくても頃合いを見計らって、適当にその場から立ち去ればいいわけだから。
可朝→八方、はあまり芸風につながりがなさそうに見えますが、確実に共通しているのは、ともに相手を「煙に巻く」ことに長けていることです。
それが月亭の芸風だとしたら、そりゃ米朝一門を距離を置かざるをえないのも当然という気がするわけで。